窓から温かい陽気が挿す資料室、沢山の棚の影にある小さなソファで、1人の少女が横になっていた。
粗末なソファに横たわる少女……露樹は白い制服が皺になり、短いスカートが捲れるのも気にせずごろりと寝返りをうつ。
『……眠い』
そして欠伸を1つした。
窓の近くに設置されたソファは陽が当たり温かい。
その温かさにうとうとし始めたとき、資料室の扉が開いた。
「何してんの?露樹」
『……藤原』
資料室に入ってきたのは、オベリスク・ブルー特待生の1人、藤原優介だった。
『何って、見ての通り。あ、亮達は?』
「もうすぐ来るよ。……それよりさ」
『なに?』
藤原が何やら言いにくそうに視線を泳がせる。そんな彼を露樹が急かした。
『何なの、言ってよ!』
「……パンツ、見えてる」
『……え』
バッと視線をスカートに落とすと、寝返りをうったせいで見事に捲れ返っていた。慌てて元に戻す。
『ふ、藤原!見たなこんの変態!』
スカートを手で押さえながら、真っ赤な顔で露樹が言った。
それに対して藤原も負けじと言い返す。
「だ、誰が好き好んでお前のパンツなんか見るかっ!
ていうか何とも思わないから安心しろっ」
『な、何よ!私だってあんたに見せたって平気だもん!藤原なんか男として意識してない!』
ぎゃあぎゃあと言い争いをしている間に、再び資料室の扉が開いた。
「藤原、露樹……いったい何を喧嘩しているんだ」
「外まで聴こえてきたよ」
『亮!吹雪!』
丸藤亮と天上院吹雪だ。白い制服に身を包んだ彼等も、藤原と同じ特待生だ。
『聞いてよ!藤原が私のパンツ見た!』
「見たけどわざとじゃない!」
2人の言い分を聞いた吹雪が聞き返した。
「で?何色だったの?」
「水色」
『コラァ!藤原ああ!!』
さらりと答えた藤原の頭を、ソファから飛び降りた露樹が引っ叩いた。
ベチン!と小気味良い音が資料室に響く。
「あー、水色かあ。まあ、悪くは無いかな」
『吹雪も何言ってるの!』
「赤とか黒よりは良いって言ってるんだよ」
藤原が言った。
吹雪が頷きながら、ソファに座る。
「流石にね、15歳の……それもホントなら中学生の女の子が赤や黒の下着を付けるのは、僕的には好みじゃないな」
「うんうん、スタイル抜群だったとしてもな」
藤原も、吹雪の隣に座って頷いている。
『な、なんでそういう話に……。』
赤い頬をそのままに、露樹が居心地が悪そうに言った。
「いいや、これは大事な話だよ露樹!」
『……何で』
「君のような子こそ!下着には気を使うべきだ!
いいかい露樹、確かに君はスタイルも良いし顔も美人だ!」
ズビシィ!と、吹雪が指をさす。
『え、あ……ありがと……?』
「だからこそ!」
吹雪が真剣な顔で露樹を見つめる。
まっすぐな目で見つめられ、露樹は目を逸らすことが出来なかった。
「だからこそ、清楚な感じの下着を付けるべきだと僕は思う!
そう、よく育った子ほど清楚な下着が似合う子は居ない!!」
ピシャアアッ……と、吹雪の背景に稲光を見たような気がして、露樹はフラりと体の力が抜けるのを感じた。
「その通り!!」
藤原が追い討ちを掛ける。
ペシン!と頭を叩かれたような気がした。
『……亮、お願い、この変態達に何とか言ってよ……吹雪も藤原もイメージ壊れすぎて私ツラい……。』
「……俺は」
ずっと黙って3人の話を聞いていた亮に、すがるような気持で露樹が言った。
突然話を振られた亮は、じっと露樹を見つめて口を開いた。
「俺は、下着は白が好きだ」
ガン!!!……ガランガラン……
今度こそ露樹は頭にタライが直撃したような気がして、床に崩れ落ちた。