31…ありがとう

「ソラ!!」

一気に疲労が込み上げてきたソラはその場に倒れてしまった。
倒れる寸前に支えた燐は彼女の荒い息遣いや止まらない汗、体中にある火傷を見て顔を歪める。
まだムラなく維持し続けるのは難しく、サタンの炎を防ぐだけのオーラを放つには体力をかなり消費されるのだ。
駆け寄ってきた雪男とシュラは治療を始めようとするが…

「雪男!シュラ…ソラが…!」
「分かってるからお前は落ち着け。……見たところ軽い火傷ですんでるな。」
「…そのようですね。あれだけの青い炎に触れながらこの程度ですむなんて…」
「それは彼女の努力の賜物ですよ。」
「「!」」

空からフワフワと降りてきたのはメフィストだ。
同じく飛び降りてきたのは現聖騎士(パラディン)の【アーサー・オーギュスト・エンジェル】。
白の団服にサラサラのロングヘアーを上に縛っている彼は軽く眉間にシワを寄せている。

「いやぁ〜素晴らしい活躍でしたね!青い炎の対策だけでなく、まさか暴走まで止めるとは驚きましたよ。」
「その対策とやら…後で詳しく説明してもらうぞ。」
「もちろん。」
『「……誰?」』

知らない二人にエンジェルは自己紹介をしてある事を告げる。

「君がその悪魔を抑えている間に事情が変わってね。…それを排除するのではなくフェレス卿の懲戒尋問の証拠物件として連れて行く事になったんだ。」
「『!?』」
「シュラ。お前も参考人として加わってもらうぞ。」
「………。」

エンジェルはすぐに部下に指示を出し燐の服の襟を掴み連れて行く。
無理に体を起こそうとするソラを雪男は止め、シュラはメフィストと共に後を追った。
燐は反対側に立っている仲間達に気づき声をかけていく。
しかし、誰一人笑顔で返してくれるわけもなく…

「みんな無事か!?」
「『!』」
「な゛んで…サタンの子供がッ!ここ(祓魔塾)に在るんや!!」

叫んだ勝呂は喉をやられており咳き込んでしまい先生に連れられてその場を後にした。
まだ残り困惑しているしえみにも声をかける燐。

「し、しえみ…体…平気か?…な、なんだよ…どっか痛いのか!?」
『……っ…燐…』
「あいつ(勝呂)…大げさなんだよ。おれ別にこう見えてフツーの人間と大して変わんねー……て…せっ説得力ねーか!ワハハ!!」
「どうして、わ…笑うの…」
「え?」
「なんにもおかしくなんかない!!」

涙を流し叫ぶように彼女は言った。
それを聞いて見て何も思わないわけがない。
燐はそれ以上は何も言えずに連れて行かれた。

(………しえみ……)

ソラは雪男に背負われ連れてこられた部屋で治療を開始…その間に隣の部屋では塾生達に雪男から燐の事を教えられている。
ソラの事も少しだけ…










治療を終えたソラは意識を手放すことなく隣の部屋に向かう。
フラつきながらも部屋にやって来た彼女を雪男は慌てて部屋にある大きめのベッドに座らせた。
しえみ達も痛々しい姿に顔を歪ませている。

「なんて無茶を…早く横になるんだ。軽いとは言っても火傷の数が多い上に体力の消費が激しいんだ…話なら回復した後に聞くから…」
『………眠りたく……ないんです。せめて…安否が分かるまでは…』
「「!」」

誰の事なのかは聞くまでもない。
虚ろな目で部屋を見渡す彼女が見つけたのは腹部に包帯を巻き眠っているピカの姿だ。

『ピカ…』
「大丈夫。切れてはいるけど深くはないから…今は薬で眠ってるだけだよ。」
『……そうですか。……良かった…』

安堵したソラは雪男に支えられながら振り向き皆に頭を下げた。

『事情はどうあれ重要な事実を黙っていたこと…申し訳ありませんでした。』
「「!」」
「勝呂君達の事情を知っておきながら…すみません。」

暫く沈黙が流れるが、それを破ったのは勝呂だ。
彼は頭を上げさせ彼女の目を真っ直ぐに見る。

「その事については今はなんとも言えん。……まだ頭ん中ごちゃごちゃしとるけど…これだけは言える。」
『………。』
「俺らを助けてくれてありがとう。」
『「!」』

次は勝呂が頭を下げた。
それを驚き見ていた子猫や志摩、しえみの三人も礼を伝える。
その言葉を聞き終えたソラは心の中で何度も感謝していた。

『……ありがとうございます。』
「何度も言わなくていいのよ。あんたが反省してるのは見ればわかるし……それより、まだ起きてるなら話してよ。さっきの…」
『さっきの………ああ…あの演技ですか?アレはですね…「違う。」…あれ?』
「サタンの炎を浴びながら生きてる理由だよ。」

神木と雪男に言われて気づいたソラはゆっくりと説明していった。
皆はその内容に驚きながらも質問をしなかったのは彼女が限界だと悟ったからだ。
案の定、最後まで話し終えると同時に意識を手放した。

杜「ソラちゃん…ボロボロだ。」
志「よう考えたら…アマイモンと戦ってサタンの炎にも堪えてって凄ない?」
猫「……ボクには……絶対に無理や。見てるだけで震えが止まらんかった。」
雪「…それが普通の反応ですよ。ただ…彼女にとって友人や家族を…大切な人を失う事がそれ以上の恐怖だったというだけです。」
「「…………。」」

雪男は彼女をベッドに寝かせると部屋を後にした。
それを見届けた神木はタオルを冷たい水で濡らして絞り、寝ているソラの汗を拭う。

(……大切なものを守る為か。……いったいどれだけ苦しめばこんなに強くなれるのかしら。)











それから2日間ソラは眠り続けた。
その間に事が一気に進み…休む間もなく次の戦いが始まろうとしている。





〜続く〜

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