29…大ピンチ!

『しえみを返しなさい!』
「イヤだなぁ…返して欲しければ力ずくで奪えばいいじゃないですか。」

先程から殴る蹴るの攻防が続いている。
私の回し蹴りを避けるためにアマイモンは高く跳び、後を追うように私も跳んで拳をぶつけ合った。
その時、アマイモンの背後に燐が現れ剣を振り下ろそうとしている。
私は瞬時に拳を放し奴の左腕を掴み、引き寄せ固定…その直後に燐の馬鹿力で降魔剣が振り下ろされた。
だが、アマイモンは気にすることなくこちらを見て…地に着く前に左腕を振り上げ私を岩に叩きつける。

『がっ!』
「ソラ!!」

すかさず踏み潰そうと脚を上げたアマイモンに燐は襲いに行くが首を掴まれてしまった。
【念】があるとはいえ【王の名を持つ悪魔】…力が半端ない。
ズキズキと痛む身体を起き上がらせ、大事な友を二人も奪い傷つけるトンガリ頭にオーラ込みの殺気を放った。
すると珍しくアマイモンは表情を変え口角も上がっている。

『二人を離しなさい……いい加減にしないと怒りますよ。』
「おお!素晴らしい殺気ですね……君を怒らせたほうが楽しそうだ。」
「ぁがっ!?」

アマイモンは燐の首を強く掴みだす。
私は両手を合わせ瞬時に目の前まで移動し左腕に当てようとしたが…奴は燐を放しその場を離れた。
燐は四つん這いになりながら咳き込み、睨む私を無表情で見るアマイモン…

「…今すごく嫌な感じがしましたが……何をしようとした?」
『腕の一本でも貰おうかと思いまして…』
「答えになっていなぎぃあ゛あ゛!?」
「な、なんだ!?」

突如としてアマイモンを襲ったのは電気だ。
彼の右脚にはピカがくっついて傷口から電気を送っている。
しえみには極力ダメージがいかないようにと配慮してくれたピカには感謝だ。
ショックで動けない間にしえみを取り返した私は燐に預けピカと共に戦闘態勢に入る。
目の前には瞬きをする事なくこちらを凝視しながら殺気を放つアマイモンが立っているからだ。

「ビリビリしました…なんですかそのネズミは…」
『相棒のピカですよ。…頑丈な悪魔といえど傷口から直接電気を送られればダメージはありますからね。結界の外に出て最初の一撃の時にしえみの後ろに忍ばせていたんですよ。』
「そ、そういや…なんか黄色いのがくっついてた気がする。アレはお前だったのか…」
「ピッ!」

燐の方に振り向き胸を張りピースをしながら返事を返したピカ。
そんな時にアマイモンに向かって1つの花火が飛んできた。
飛んできた方向を見ると何故か勝呂君に子猫君、志摩君が結界から出て花火片手にこの場所に来ている。
私も燐もビックリだ。
最初に口を開いたのは、汗を流し眉間にシワを寄せている勝呂君だ。

勝「俺らは蚊帳の外かい!まぜろや!」
燐「よせ…バカ!!」
『いけません!すぐに結界の中に戻って下さい!』
ア「……………。」

しかし、3人は戻る気はないようで怯えながらも志摩君や子猫君の二人も花火片手に立っている。
私達と彼らの間にはアマイモンがいるため迂闊に動けない…余計に焦りが増していく。

志「俺はあくまで杜山さんを救うためやからね…!」
猫「奥村くん!水野さん!もしスキが出来たら逃げるんや!」
『っ!』
燐『なにを…いいから逃げろ!』


志摩君の花火は当たることなく飛んでいき、最後の子猫君の花火はアマイモンのトンガリに直撃した。
焦る子猫君達だったがアマイモンのトンガリが綿飴のようにふんわりと変わったのを志摩君が笑った事により状況が悪化する。

(まずい!)
猫「……はっ!」

アマイモンが瞬時に志摩君の方へと飛んでいき蹴りを入れようとしたのを私がギリギリで防ぐ事に成功した。
少し後退った為に志摩君にぶつかり彼は尻餅をつき私の名を叫んだ。

「ソラちゃん!?」
「邪魔をしないでくださいよ。」
『その頭は申し訳ないのですが…彼らに危害を加えるのはやめて欲しいですね。』
「断る。」
『!』

そう言ってアマイモンは次に勝呂君を狙い首を掴もうとするのをピカの電光石火の体当たりで阻止された。
威嚇するピカの声が響くなか私はアマイモンが動きを再開させるまでの一瞬のうちに勝呂君を子猫君の方へと投げ飛ばし叫ぶ。

『ここは私とピカが引き受けます!皆は燐とともにしえみを結界の中へ!急いでください!!』
燐「なっ!?何言ってんだ!俺も『人質救出が最優先です!貴方は彼女を守りなさい!!』…っ!」
「させない…」

アマイモンと再び戦闘になり攻防が続くが燐や皆はまだ私やピカを残して行く事に迷っているようだ。
そして彼は苛立ちが増しているのか今までにないくらいに力を込めて殴りに来た。
避けることはできたが風圧だけで岩が砕け、その後も繰り出される一撃一撃が重い。
体制を崩したところを飛び蹴りされ両腕で防御したが体は浮き…何度も地面にぶつかりながら飛ばされた。
体制を整えた時には燐達から離されており、ピカの電気による発光が見えたので彼が戦っているようだ。
もちろん全速力で応戦しに行く。

「ピガァッ!!」
志「す、すご!何あの子電気流してるで!?」
猫「言うてる暇やないですよ!今のうちに杜山さん連れて逃げな!」
勝「奥村!はよ杜山さん連れてこっちに来い!!」
燐「っおう!」

勝呂達に近づいた燐を見たアマイモンはすぐに襲いに行くがピカのアイアンテール(尻尾)が直撃し木々の中へと飛ばされる。
すかさずピカは10万ボルトを放ち燐に向けて「早くいけ!」と言わんばかりに叫んだ。

「ピカッ!ピカピッ!!」
燐「す、スゲー…ありがとうピ…!あぶねー!!」
「ビガッ!?」
猫「ピカ君!!」

大きめの木が勢い良く飛んできてピカに直撃し倒れた彼の体からは血が流れている。
投げた張本人は怒りで瞳孔が開き殺気を放った。

「ムカムカする……殺してしまいたい…」
「「ッ!!」」

ソラもいない、ピカも動けない…燐達は嫌な汗が止まらない。







〜続く〜



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