23…痛みにも負けず

皆さんこんにちは。
前回、燐と一緒にお姉さんの巨乳に反応してしまったソラだよ。
……穴があったらダイブしたいよ。
ちなみにお姉さんは雪と椿先生に事情説明をしている。

そして、私は冷静になった事で深く反省中だ。
両手で顔を覆い、俯きながら隣で心配してくれている燐に謝った。

『燐、ごめんなさい……私には貴方を責める資格なんてありませんでした』

「な、なんだよ急に……謝るなら俺の方が…『まさか一緒になってセクハラをしてしまうなんて!』…はあっ!?してねーよ!!人聞き悪いこと言うな!」

二人で騒いでいるとお姉さん……霧隠さんがこちらにやって来て燐を左腕で締め上げ連れていこうとした。
心なしか雪と椿先生の視線が冷たい。

「オラ立て!お前にも話を聞くぞ」

「!!…う?うも"ぉおお!!」

『……先程の失言による罰ですか?』

左腕を首に絡めて持ち上げた為、燐の顔は彼女の左胸に押し付けられている。
……息がしづらそうだ。
そのまま行くのかと思ったら燐を連れていく前に私の方を振り向き、深刻そうに彼女は言う。

「お前はすぐに病院に行け。本来なら奴のあの攻撃を生身で受けて生きてられる訳がないんだからな」

「うも"ぉ!?」

「……前に話してた【念】…だっけか?後でもっと詳しく教えてもうからな」

『それは置いといて……私も色々と知りたいのでギリギリまで一緒に付いていっても良いい"っ!?……たぃです……ユキサンヤ…』

全てを言い終わる前に雪が私の腹を軽くではあるが叩いた。
あまりの痛さに私はお腹を押さえながらコンクリートとこんにちはをしている。
それを眉間にシワを寄せ見下ろすメガネと、まさかのダイレクトアタックに驚くその他一同………何この状況……泣いていい?

「……まったく。少し【触れた】だけで動けなくなってるじゃないか。兄さんには僕がついてるからソラはバカなことを言わずに病院に行く!いいね!?」

『……ィ…イエス…ボス……』

「…いや触れたっつーか……叩いてなかったか?」

私が一番指摘して欲しい事を霧隠さんが言ってくれたが、見事にスルーの雪は椿先生に私を連れていって欲しいと頼んでいた。
椿先生やめて。そのかわいそうな子を見るような目で見ないで!

その後、私は椿先生に支えられながら雪達の後ろを歩いて入口へと向かった。
すると集まっていた塾生全員がこちらへと走ってきたので、椿先生を陰にできるだけ身を隠しながら進む。

「先生!」

「皆さん。今日の任務はひとまず解散です。寮に戻って下さい……」

指示を出す雪の後ろを霧隠さんと燐が通り過ぎてしまい皆が騒ぎだした。
まあ、目立つ人間が二人歩いていれば視線は自ずと集まり、私としては有り難い。
勝呂君も状況が分からず困惑気味に皆と話しているのが聞こえる。

「どうしたん…あいつ…」

「なんあれ羨ましい!あのお姉様誰!?」

「……下、男子の制服やから…多分いつもフード被ってた山田くんかな」

「ええ〜!?」

「……つーか奥村は何かやらかしたんか?」

まさかの山田くんは巨乳美女という事実に驚く皆だが、しえみは別の人物を探しているようで辺りを不安げに見渡していた。
まずいと思い、すぐさま先生を盾にしたが……まあ、近くを通れば簡単に見つかるよね。

「っ!?…ソラちゃん!?どうしたの!?血が……っ!」

『落ち着いて下さい。これは私の血ではないし…傷も大したことはありませんから…』

「…でも……」

しえみが心配するのも無理はない。
私の見た目は燐の返り血がベッタリ付いてるし、腕は酷い痣になっている。
そして、お腹を押さえながら先生に支えられているのだから……
他の塾生も驚きをみせながら走り寄って来てくれた。
その中に神木さんもおり、私の傷を見て顔を歪め心配してくれた事が……場違いにも嬉しく感じたのは内緒だ。

「ちょっとあんた!何があったのよ!?……何よこれ…」

「そんなことはあとや!先に病院に行かんと……」

「落ち着きなさい!水野君は先生がちゃんと連れていきますから、君達は奥村先生の指示通り寮に戻りなさい」

椿先生に言われた皆は渋々ながらも返事をした。
去り際に私は泣きそうな顔でこちらを見るしえみに安心して欲しくて、腹に添えていた方の手を頭に乗せ笑顔で言う。

『大丈夫ですよ。治療が終わったらすぐに戻りますからピカと一緒に待っていて下さい』

「……うん」

そう言って離れていく私と椿先生の後ろ姿を塾生達は黙って見送ってれる。
そっと振り向けば、何があったのかも分からず知らされない彼等の表情はあまり宜しくなかった。
特にしえみの今にも泣きだしそうな顔が頭から離れない。








それから数時間後に私は寮に戻ってきた。
玄関口にはしえみとピカにクロ……そして、燐が座って待っている。
私の姿を見つけた瞬間、彼等は走ってやって来て心配をしてくれたが、私としては燐は心身ともに大丈夫か不安なのだが。

『ご心配をおかけしました。骨や臓器に異常はありませんでしたから安心して下さい。刺激さえしなければ問題ないみたいですし……』

「そ、そっか。でも安静にしてないと……そうだ!お腹すいてない?私、薬草たっぷりの雑炊作れるよ!」

「なら一緒に作ろうぜ!そろそろ雪男も帰ってくるだろうから皆で食べよう!」

「いいね!」

二人は楽しそうに話しているが足下の2匹は【薬草たっぷり雑炊】を聞いて落ち込んでいる。
部屋へ戻り、しえみに今回のことは口止めをされていて話せないと伝えた。
分かっていたのか、しえみは何故なのかと聞くことはしない。

「……そっか」

『すみません。話すと言っておきながら……』

「仕方ないよ。私達まだ候補生だもん……ソラちゃんが無事でよかったよ」

『しえみ……なんて優しい!まるで天「何してるの?」………えと……天使にハグを…「ふざけてるの?」……』

「……雪ちゃん?」

しえみに抱きつこうとしたら、見るからにお怒りの雪が部屋の中にやって来た。
背後からの圧に嫌な汗が流れる私と雪の様子に慌てるしえみ……そして、壊れた玩具の如く振り向くと、扉の前には同じく雪の怒りに焦る燐が立っているではないか。
メガネの位置を直しながらも、雪の冷ややかな視線は私から逸れることなく話は続く。

「病院から連絡があったよ。患者が病室から逃亡したって……」

「「 えっ!? 」」

『………………』

そう。実は私、念のために入院するように言われていたのだ。
しかし、【隠】を使えばすぐに治るし、先程も言ったが刺激さえしなければこのくらい我慢できる。
何よりしえみに戻ると約束した。
……だから、コッソリと窓から逃げてきたのだ。

『……大丈夫です。ちゃんと夜のうちに戻りますから』

「そういう問題じゃない!……余計な仕事を増やさないでくれ。あと、もう少し自分の体を大事にしなよ」

『…………はい』

いつの間にか私は正座をし、雪の説教を聞いていた。
それから数分後に私は雪に病院まで連行され、看護婦さんと医者の先生にきつく叱られてしまう。











その頃、理事長室には昼間のトンガリ頭の悪魔【アマイモン】がメフィストと話をしていた。

「……結局、奥村燐とはろくに遊べませんでした。邪魔が多くて……」

「やれやれ。何しに行ったんだお前は……ん?その腕の傷はどうした?」

優雅に紅茶を飲んでいたメフィストは、お菓子を頬張るアマイモンの左腕に気づき興味を持つ。
手首は腫れ上がり、左腕からは血の臭いがする。
アマイモンは頬張りながら袖をあげ、ソラにやられた腕を見せながら淡々と話す。

「これは白髪の女にやられました。奥村燐よりは楽しめましたよ」

「ほう!……クックックッ……詳しく話せ」

人間の子供が【王】の名を持つ悪魔に傷を負わせた。
メフィストは弟からの報告を楽しげに聞いている。


「……あと、触れた感じは普通の人間なのですが、攻撃を防ぐ時は異様に硬いというか……なんというか…………あ!最後にちょっと本気で蹴りました」

「しかし、彼女は生きているのだろう?」

「はい。苦しんではいましたが普通に生きてます。そのあとも殴ろうとしたのですが……」

その後も話続けるアマイモンは口元が笑っていた。
メフィストもまた新しい玩具を手に入れた子供のようにウキウキしている。
再び紅茶を口にしながら彼はソラの姿を思い浮かべ、小さく笑う。

(想像以上だ。しかも、私に話した内容は簡潔にまとめたもの……他にも秘密があるようでしたし………楽しみですねぇ)

「……兄上?聞いてます?」























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