21…変わらず友として傍に

基本的に日曜日は休みなのだが我々は違う。
候補生(エクスワイア)となった私達には任務が課せられるのだ。
今回は初の合同任務らしく、現場の【メッフィーランド】に塾生全員が集まる事になっている。
しかし……

「ご、これで良いのかな?」

『全然OKです!メラ可愛いですよ!!』

「なに興奮してんのよ……」

現在、私としえみ、神木さん、朴さんの4名はまだ校内に居たりする。
しえみが任務でも動きやすい様にと制服をメフィさんが用意してくれたのだが、今まで和服しか着たことのない彼女は制服の着方が分からず私達に聞きに来たのだ。

照れながらも初の制服に胸踊らせる姿がなんとも愛らしい。
私が男なら確実にハートを射抜かれているだろう。
………いや、性別関係なく射抜かれてるね。興奮しっぱなしだもの!キュンキュンしてるもの!

そんな私の隣では朴さんが微笑ましそうにしえみと話している。

「いつも和服だからかな?制服着てるだけで身近に感じるね」

「そ、そうかな?」

『………ふむ。流石メフィさんですね。スカートの短さが絶妙な…あいた!?』

「バカなこと言ってないで早く集合場所に行くわよ!」

時間が迫っている為に朴さんと別れた私達は走って集合場所に向かった。
神木さんに本の角で叩かれた所が地味に痛い。

【メッフィーランド】の入口前には男子全員と雪を含めた二人の先生が待っていた。
走ってくる私達……というよりも制服姿のしえみに全員が驚き目を見開いている。
事情を説明したあと、しえみは照れながらも似合うか男子達にも聞く。
志摩君と私はハートを飛ばしながら親指を立て褒めた。

「えーよ、えーよ!杜山さんかわえーよ!」

『そうですよ。可愛さが際立ってますよ!』

「あ、ありがとう!」

そんな私達の横で燐は顔を赤らめながらスカートの長さについて雪に同意を求めていた。
やはり、気になるよね。短いものね?
戦闘には不向きだが、目の保養には良い長さなのだよ。
動いても見えるようで見えない……絶妙な長さ、流石はメフィさん!

「な……なんつーか、スカート短すぎんじゃねーの?なあ、雪男」

「何故、僕に振るんですか?」

「何だよ、お前だっておっぱい見…いってえなッッツツメガネ!!」

スカートから何故か胸に話題を変えた燐に、雪のファイルが顔面に叩きつけられる。
そして、私も本人がいる場での発言に笑顔を消す。

『……次は腹パンでもいかがですか?』

「なんでだよ!?つか怖いからその目ヤメろ!」

叫ぶ燐を無視し雪は今回の組分けを発表しだした。
どうやら二人一組で行動するらしい。
試験の時もそうだが、私はこういう機会には不参加だったので楽しみで仕方がなく、やる気は満々だ。

「三輪、宝……山田、勝呂……奥村、杜山……神木、志摩……そして、水野は我々と待機です」

『何故に!?私も任務に参加したいです!』

私は塾生であり、候補生ではないのか!?
驚きを隠せないのは私だけではなく、皆がどういう事かと疑問を口にしている。

雪は特に気にすることもなく、平然といつも通りに返してきた。

「貴女の能力だとすぐに終わってしまうから駄目です。今回は皆のために大人しくしていて下さい」

『………うっ……また…ぼっちなんて……メガネのアホー!割れてしまえーーっ!!』

「あ!コラ!戻って来なさい!」

まさかの2度目となる仲間外れに私は嫌がらせも含めてその場を走り去る。
こういう大きなイベントを二度も外されるなんて思いもしなかった。
……参加できないならなぜ呼んだんだ!メガネ!!




しばらく走り続け、近くのベンチに座り空を眺めていたら雪が走ってこちらに向かっているのが分かった。
ベンチの横まで来た彼に、私は視線を空に向けたまま軽く謝る。

『………大丈夫ですよ。ちゃんと戻りますから……ちょっと嫌がらせが過ぎましたね。スミマセン』

「……そういう事はちゃんと顔見て言って欲しいね。まったく……」

息を整えるためか隣に座った雪はしばらくの間は無言で、正直気まずい。
やり過ぎたか?流石に子供過ぎたか?だってまだ高校生だ!良いじゃないか!
そんな事を考えていると雪がゆっくりと話しだした。

「今回、ソラを外したのにはもう一つ理由があるんだ……中々ゆっくりと二人で話す機会が無かったから丁度いいと思ってね」

『……恋愛相談ですか?』

「違う」

真面目に聞いたら、真面目に否定された。
ため息を吐いた雪は気を取り直して話を進めだす。
まあ、大体の予想はついているが……

「………ソラの技の一つの【円】だけど、悪魔か人間か判別できて、知っている人物であれば特定も出来るんだよね?」

『はい。範囲も前に話した通り半径500m内であれば関知可能です』

本当は1qなのだが嘘をついている。
能力について話しはしたが、細かいところまで正しく教えていないのは敵に知られ対処されては困るからだ。

「試験の時も使ってたんでしょ?皆の事が心配で……」

『よく分かりますね。エスパーですか?』

「まあ、長い付き合いだからね………ソラ、君は何処まで知っているんだ?」

やはりバレてた。
能力の説明をしていたから気付かれるのは当然だが、こんなに早くに話してくるとは思わなかった。
彼の事だから確証を得てから聞いてくるだろうと思っていたからだ。
真剣な表情の雪に私はまっすぐに目を見て話す。

『燐が人間と悪魔のハーフで、父親がサタンである事……能力が目覚めたのが入学前であること等ですかね』

(……っ!やはり知っていたのか)

私が燐について知っている事と情報源を雪に話していくと彼の顔はどんどん険しくなっていった。
燐の正体については一部の者しか知らない極秘情報だからね。
でも、情報源がメフィさんだから……いや、彼にとってはそれが問題だったりするのかもしれない。

『獅朗さんについては……いつか二人に話して欲しくて聞いていません。まあ、なんとなくは察していますが』

「……どうして黙ってたの?いつもならお構いなしに聞いてくるのに」

『失礼な!私だって気遣いぐらいしますよ……燐にも秘密を話してくれるまで待つと言ってしまいましたし』

(兄さん…聞いてないぞ)

黙ってしまったと思ったらため息を吐いて口を開いた。
最近の雪はため息の数が増えたと思う。
若いのに心身共に苦労しているとは……その中に私もいるのだろうな。ゴメンよ。

「……悪魔だと知って何も思わなかったの?」

『驚きましたが……燐の馬鹿力や回復力を考えたら不思議ではないですし………何より悪魔だと知ったからといって燐の心まで変わるわけではありませんし…』

「……そうだけど」

何か言いたげにするも、困ったように口を閉じた彼に私は再び空を眺めながら話す。
この方が表情にまで気を付けようとする雪には聞きやすいだろう。

『私は人間だから燐や雪が好きなわけではありませんよ。それに、貴方達と過ごした日々が消えることもありません』

『……私は奥村燐と奥村雪男の友としてパートナーとして共に歩んでいく気満々ですので覚悟していて下さい』

ゆっくりと顔を雪に向け、私は渾身の……ドヤ顔を放つ。
すると、予想外な台詞に驚き目を見開いていた雪の顔は一気に冷めていき、呆れ顔にかわった。

「……台無しだよ。そのドヤ顔はやめた方がいいって言ってるじゃないか」

『………………………』

そんなに私のドヤ顔は酷いのか?
誉められたことが一度も無いのだが……でも癖になってるし……
自分の癖について考えていると雪が苦笑しながら私の頭に手を置いて礼を言った。

「でも、ありがとう。怖がられるんじゃないかって……いつも通りに過ごせない気がしてちょっと不安だったんだけど……話せて良かった」

『私も、話してくれてありがとう。燐には話すまで待つって言ってしまったのもあってこう、ウズウズしてたんですよ……暴露したくて』

「話して本当に良かったよ。心の底から……」

そのあとは雑談をしながら入り口まで歩いて行った。
雪と二人で話す機会なんて久し振りだったのもあり話が弾んだ。
あと待つ間が暇なので皆の様子を見てきても良いか聞いたら……

「絶対に余計なことはしない!手助けなんて駄目!むしろ近づくのも禁止!……約束出来るなら行っても良いですよ」

『………了解』

彼のなかの私は一体どんな人間として思われてるのか気になる。







雪と別れた私は建物の上を移動しながら捜索対象の【霊(ゴースト)】を探した。
しかし、そのすぐあとに悪魔の恐ろしさを知ることになる。




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