16…合格と初めての体験

しえみが出ていってからすぐあとにメフィさんがやって来た。
……獅朗さんのお墓の前で会った時の服装で。

「お久しぶりです。思ったよりも元気そうで何よりです♪」
『雪が治療してくれましたからね。それよりも……メフィさんはそれが私服なのですか?』

気になって仕方がないので聞いてみたら、ウィンクしポーズを決めながら答えてくれた。
オジサンのウィンク……何も心に感じる事はないが、やり慣れているのが少し気になったくらい。

「もちろん!上から下まで全てが私の趣味ですヨ♪」
『HAHAHAHA!』
「ハーハッハッハッ!」

ウケ狙いかと思いきや、アレが私服だというのだから笑うしかない。
二人とも一通り笑い終わってから本題に入った。
メフィさんは近くの椅子に腰を下ろし足を組み、私を真っ直ぐに見て質問を始める。

「貴女にはいくつか聞きたいことがあります……まずは、昨夜の事件で離れているにも関わらず悪魔の存在をどうやって知ったのか」

本来は話すべきではないのだが、燐や雪には既に話してあるのとこの先、祓魔師として生きていくのなら【念】も【錬金術】も多用することになる。

隠しても意味がないので【念】について簡単に説明をした。
【錬金術】は燐達にも話してないので言わない。

『(何故なら彼らの驚く顔が見たいから!)……では、簡単に説明します』

軽い実演も混ぜての説明中、メフィさんはそれはもう愉しげに聞いていた。
だが、ジーッと見られ続けるのは落ち着かない。

「クックックッ……誰かに教わるでもなくそのような術を編み出すとは……本当に面白い人ですね。他にも何かありそうですが、時間もないのでまた今度の機会にしましょう」
(……何で分かるんでしょう?)
「次は貴女の使い魔を見せて下さい。ネイガウス先生の話では見たこともないキュートな悪魔だとか……」

何かと思えばピカの事だった。
確かに悪魔について詳しいネイガウス先生も知らないとなれば学園長としては気になるだろう。
……あと、本当にネイガウス先生が「キュートな悪魔」と言ったのか気になるが、メフィさんが目をキラキラさせながら待っているのでピカを呼んだ。

『ピカ!居ますか?』
「!……もしや召喚したままなのですか?」
『はい。ずっと一緒に暮らしてますよ』
「召喚してからずっと?」
『はい。散歩が好きみたいでよく出掛けてますね』
「……ほう」

メフィさんがニヤついていたので茶菓子を出そうかと思っていたがやめた。
……なんかそんな気分になったから。

「……ピィ〜?……チャァ〜ッ」
『寝てたんですね……すみません。少しだけ我慢してください』
「お〜!本当に愛らしいですね♪」

部屋の奥からやって来たピカは明らかに寝起きで欠伸をしていた。
シッポを引きずりながら来たので深い眠りについていたようだ。
私の上に座りまだ眠いのか目を擦りながら「なに?」と目で訴えている。

『すぐに終わりますから……こちらは前に話したメフィさんです。ピカに会いたかったそうですよ』
「初めまして。眠りを妨げて申し訳ないのですが、ちょっとだけ失礼しますよ」
「…ピッ!?」

メフィさんの姿を見たピカは目が飛び出るのではないかと思うほど驚いていた。
うんうん。気持ちは分かるよ。
そんなピカを気にすることもなく抱き上げ観察するメフィさん。

(ふむ………確かに見たことのない悪魔ですね。この私にも知らない者がいるとは……興味深いですネ♪)
「ピギャッ!?」
『……メフィさん、ニヤつかないで下さい。ピカが怖がってます』

ピカのモフモフ具合を気に入ったらしく、そのまま抱き抱えて最後の話に入った。
嫌だと露骨に態度に出しているピカの顔には影が見える。

「最後に、今夜この寮で【候補生(エクスワイア)認定試験】を行いますので、貴女は大人しく部屋にいて下さい」
『……おぅふ』

まさかの試験不参加に固まる私にメフィさんは愉快そうに説明を始めた。
何がそんなに楽しいのか分からないが、私にとっては真逆の気分だ。

「今回の試験は主に祓魔師として適正か否かをみます。つまり実戦下での協調性……チームワークです。ちなみに貴女は実力もありますし、昨夜の事もふまえて合格としましたので安心して下さい♪」
『なんと!?』

地獄から天国とはこういう事なのかと思った。
まさかの合格に喜んでいる私をメフィさんはピカの頭を撫でながら見て説明を続ける。

「他の生徒達には内緒で悪魔を使った実戦形式の試験ですから、何があっても部屋から出ないで下さいね?」
『……もちろん監視役の人はいますよね?』
「当然♪彼らに命の危険があれば、あちこちに配置している先生達が黙っていませんよ」

寮全体に先生が配置されるようなので大丈夫そうだが……不安は残る。
しえみから聞いた話を思い出した私は様子を見るくらいなら……等と考えてしまう。

(……怪我は……するでしょうね)
「……もし、抜け出したりしたら合格は無かった事に……そして、丸一日私の【萌え】への愛を聞いてもらいます♪」
『大人しくしてます』

この人ならやりかねないので即答させてもらった。
ここは先生方や皆を信じて待つしかないようだ。

その後、メフィさんは試験の為に部屋を出ていき、私が暇をしないようにと携帯ゲームを渡してくれたが……

『……まさかのギャルゲー』
「ピッ?」














「おお"お"ぉあぁ!!」

部屋の明かりを消され、悪魔の雄叫びや破壊音といったものが聞こえるが気にしてはいけない。
円で確認したらかなりの先生達が隠れていたので大丈夫だろう。
そう自分に言い聞かせてメフィさんに借りたギャルゲーを進めていく。
ゲーム自体あまりしないので未知の領域だ。
ちなみにピカは私の横で再び眠りについている。

『………ツンデレ……奥が深いですね』
「ピ〜……カ〜…♪」



途中で衝撃的なアクシデントがあったりしたが、危険ではなくなったと安心してゲームを続けていた。

そして、約1時間後に試験は終わったのだ。






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