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全部、教えて

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「は〜、美味しかった〜っ」

「ふふっ。そらさん、細いのにホントよく食べますよね」

「だって今日、昼も食べらんなかったし」

「そうなんですか?」

「うん。って、デザート、何にする?これもいいけど、こっちもいいなぁ…」

「そらさん、真剣に悩みすぎです」

「今日は食べるでしょ!」

「? 今日は…?」

「いやいや、こっちのハナシ」

真剣な表情でメニューを睨むそらさん。

そんなそらさんが連れてきてくれたのは、テレビや雑誌で人気のイタリアンのお店。

予約を取るのが困難なことは、流行に疎い私でも知っている。

その評判に違わず、料理はどれも華やかで美味しくて。

―――そらさんとなら、何を食べても幸せだけど。

そらさんと夕方からデートをするのは初めてで。

いつもは、そらさんの非番の日とか、私の大学が終わってからだとか、もっと早い時間から会うんだけど。

今日も、始めはお昼に待ち合わせしていたんだけど。

そらさんのシフトが変更になって、夕方から会うことになった。

私はまた別の機会でもいいって言ったんだけど。

『どーしても今日がいいの!ダメ?』

珍しく、そう無理を言ったそらさん。

それは、ここの予約が取れたからなのかな…

「決めた!これにする!**ちゃんは?」

「私はこれにします」

「それも美味しそう…」

「半分こ、しましょうか」

「いいの?ありがと!あ、すいませ〜ん!」

にっこり笑ったそらさんは、片手を上げて店員さんを呼び止める。

賑やかに幸せにデザートを食べて、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。





そらさんは本当にデートに慣れていると思う。

それは、そらさんの過去を振り返れば当然のことなんだけど。

「おかえりー。じゃ、行こっか」

食事を終えてメイクを直しに行っている間に、そらさんは会計を済ませてしまっていて。

「あの、」

「いいっていいって!オレが**ちゃんと来たかったんだし。ね?」

笑顔で柔らかく、流してしまう。

「ありがとうございます」

「ここ、料理も美味しかったし、構造的にも裏口もあってそこからも逃げられそうだし…。警護中でも来れるかも」

「…デートで来たいです」

「ハハッ。それもそっか」

普通の恋人達はしないだろう会話を交わしながら、私たちはお店の外に出る。

もうすっかり陽は落ちていて、昼間の熱を残すむわっとした空気が体にまとわりつくけれど。

ぎゅっと手を繋いで、街を歩く。

「時間、大丈夫?」

「はい」

「じゃ、ちょっとぶらぶらしよっか」

「はい」

ちょっとだけそらさんとの距離を縮めて、歩き出したけれど。



「あれ?そら?」



後ろから投げられた高い声に、二人の足は止まる。

「あ、久しぶりー!」

「そらってば、最近全然連絡くれないんだから」

「ごめんごめん、仕事が忙しくてさー」



たくさんの女の子と付き合っていたそらさんの過去を知っている、それでもそらさんを好きになった。

今は私だけを好きでいてくれている、そう信じているけれど。

顔の広いそらさんと街を歩けば、こうやって綺麗な女の人に声を掛けられるのはいつものことで。

そして人当たりの良いそらさんが誰とでも楽しそうに会話するのもいつものことで。

―――その度に私の胸が醜く濁って痛むのも、いつものことで。

そんな私に気付くことなく、二人は笑って会話を続ける。



「あ、そら。さっきメールしたんだけど、」

「うん、」

「でも折角会えたから直接言うね?お誕生日おめでと」











え…?













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