※注意
 妖怪パロです。烏天狗青峰×九尾妖狐黄瀬です。




朱色の鳥居に足を下ろせば、カラン、カランと一本歯下駄が音をたてた。漆黒の翼を折り、鳥居の後ろに連なる長い階段を見て青峰は大きな溜め息を吐く。
今日はどういう理由にしようか。丁度こっちの方に用があったから、ついでに寄っただけだ。…これは前に使ったな。テツに会いにきたついでだ。これだと、そうなんスか、じゃあ俺には用ないでしょ、とすぐ追い出されそうだ。何か土産物でも持ってくれば良かったなあ、と青峰は肩を落として後悔する。


ひゅうっと柔らかい夜風が吹く。すると吉野の山の頂上からひらりひらりと花弁が舞った。ああそうだ、吉野の桜を見にきた、という理由にすればいい。青峰はそう思い立って、折った羽を月夜に広げた。


頂上にもなると結界も強力で、青峰程の妖怪でも簡単には入れなくなる。ぬるぬるとした不快な結界や身体に傷を付ける程の強靭な結界、どれもこれもあいつらしい結界。
あと少し、というところで結界が青峰を弾く。今まで会いに来た時は何とかどんな結界でも潜り抜けてこれたのに、こんなことは初めてで青峰は瞼を何度も瞬かせた。


「…うそだろ」


どうやら相手は入れてくれないらしい。どうしたものかとうんうん唸って考えるが、短気な青峰には強行突破の文字しか浮かばない。艶やかな翼を左右に伸ばし大きく揺した。瞬間、嵐のような風が吹き、木々が倒れそうなくらいに靡く。
結界がびりびりと音をたてて割れた。その間をすり抜けて結界の内側に入るが鋭い痛みが身体を襲う。しかし今はそんなことを気にしている余裕はない。はやくあいつ会いたい、はやくあいつに触れたい、はやく、はやく、はやく。そんな気持ちが先走って痛みなんて感じていられなかった。


御簾を大袈裟に上げ、名前を叫ぶが畳の中央に敷かれた布団の上にうつ伏せに寝そべったあいつは無反応。ゆらゆらと妖艶に九の尾が揺れているだけ。


「黄瀬、てめえ!」


どかどかと歩み寄って触れようと手を伸ばせば、ぱしりと数本の尾がその手を叩き落とす。


「…何しに来たんスか?」


問い掛けには答えず、逆に問い掛けで返すところはいつものこと。俺の質問に答えろ、と言ったところで生意気、と機嫌を損ねて素っ気無くあしらわれることを学習済みの青峰は、はあ、と大きく溜め息を吐いて、桜見にきたんだよ、とだけ告げる。黄瀬は青峰っちが桜?と少し驚いた表情して、すぐけらけらとおかしそうに笑った。


「…だめかよ」
「ううん、だめじゃないっス。ただおかしいだけ」


相当面白かったのか目尻に涙を溜め、それを細い指が拭う。ああ、なんでそんな仕草すら美しいんだろう。


「なあに、どーしたんスか?」


黄瀬が横にしていた身体を起こす。
満月のようにまん丸で綺麗な瞳とか、金糸のような髪とか、色白さを強調するような紅色の着物を肩を晒すように着るところとか、ねえどうしたの、と下から見上げる顔の婀娜っぽさとか、青峰っち、と呼ぶ淫靡な声とか。何もかもが美しく、青峰の心を掴んで離さない。
欲しい、自分のものにしたい、と思ったものは何でも手にいれてきた青峰が唯一手に入らないもの。捕まえようと手を伸ばしてもするりとうまくかわされ、この腕の中に閉じ込もってくれないこの愛しい九尾妖狐に今日も今日とて愛を囁きに京を越えてやって来た。


「好きだ」
「ふふ、青峰っち、最近そればっかっスね」
「お前が返事しねえからだろ」


どかりと腰を下ろして正面から見据える。


「なあ、どうしたら俺のもんになってくれんの?」
「えー、わかんないっス」
「わかんねえってなんだよ!?」


ああ、くそ、と唸ると黄瀬が青峰にずいと近付き頭を肩に預けた。突然の接触に青峰はどきりと胸を鳴らす。触っていいのか、それともだめなのか、触れようと伸ばした手をまた叩かれ拒絶されないか。悶々としている青峰の手の甲を黄瀬は撫でた。


「血、出てる」
「…お前の結界にやられた」


恨みがましく言ってやったのにふふ、ごめんねってまったく反省の色のこもっていない謝罪の言葉が返ってくる。他のやつにこんな風に謝られたら絶対ぶん殴っても許さないけれど、恋心を寄せた相手なら許せてしまうのは人間も妖怪も関係ないんじゃないだろうか。


「別に…舐めときゃ治んだろ」
「ふーん、そっか」


そういった口から赤い舌が覗く。それに目を奪われていると、黄瀬は青峰の手に口付け傷口に舌を這わせた。青峰がびくりと身を震わせれば、ちらりと黄瀬が視線だけ向け厭らしく微笑む。ねっとりと傷口を舐めたり吸ったり、わざとぴちゃぴちゃと音をたてたり。傷口から手の甲全体を舐め、指先の一本一本に舌を這わせて吸い、掌もべろりと舐めあげられる頃には青峰は下腹部に熱を溜めていた。
ちゅぱっと淫猥な音をたてて黄瀬の赤い舌が青峰の手から離れていく。その間を繋ぐように線を引いていた銀の糸がぷつりと切れる。それが合図だったかのように青峰は黄瀬の身体を押し倒した。


「…俺と寝たいんスか?」


緩く口の端を持ち上げ妖艶に微笑む黄瀬の姿に青峰は生唾を飲む。こくり、頷けばもくもくと九の尾が二人を囲み、青峰の無防備な唇に黄瀬の濡れたそれが重なった。







「はぁ…んっ、あ…」



自分の上に跨がった妖狐が腰を揺らし熱い吐息を溢す度に青峰は下から突き上げたくなった。それを何とか理性で抑える。交わってやってもいいけどあんたは動いちゃだめ、という交換条件付きで始まった交わり。正直もう頭がおかしくなりそうだ、いやなっている。熱くねっとりと絡み付く黄瀬の中は気持ち良くて腰が痛いくらいに疼く。


「んっ、はぅ…あー…きもちい、い…」


目を瞑り指を噛んで素直に快感に蕩けていく黄瀬に理性の糸は簡単に切れた。
熟れた胸の尖りを誘われるように手を伸ばし親指で潰せば甘ったる声を上げ中を切なく締める。


「こら、動いちゃだめだって…」


胸の尖りから引き離そうとする黄瀬の手に青峰は自分のそれを絡め、とさりと形勢を逆転する。幾度か瞬きを繰り返す黄瀬を余所に青峰は胸の尖りに吸い付く。


「ちょ、約束がちがっ、ん…あっ、やぁ」


膝裏を持ち左右に脚を開かせ挿入を深くする。抑えていた分の反動か、腰を強く打ち付けてしまう。それに合わせて黄瀬の喉から言葉にならない声があがる。


「あっあっあっ、やめ、あー…あおみね、ち」
「わりい…腰止まんねえ」

ずっずっと中を突き、ラストスパートをかける。青峰のペニスが膨らみ、その形に沿って黄瀬の中も広がる。


「っ…きせ、すきだ」
「知ってるっ、ふぁ、もうだめ…いく…っあ」


きゅうっと爪先を丸め、ふわりふわりと揺れていた九の尾がぴんっと天を向いた。出口まで引き抜き最奥まで一息で貫く。どくどくと青峰のペニスから子種が吐き出される。快感の余韻とじんわりと精液が広がっていく感覚に身体を子刻みに揺らす黄瀬は酷く厭らしくてまた下半身に熱が溜まる。

「きせ…」


もっかい。
そう青峰が呟くと、もうしょうがないな、なんて言ってもう一回戦付き合ってくれるのだから少しは脈があるのかもしれない。


「つぎ終わったら花見ね」


青峰の耳の裏を撫で黄瀬が笑う。おう、とだけ返し、桜を見ながらどうやって口説こうか、どうせ好きだの愛してるだのしか言えないんだろうな、なんて自分のボキャブラリーの乏しさに苦笑してしまう。伝える言葉が少ない分この交わりで自分の気持ちがしっかり伝わるようにと青峰はありったけの愛を込めて黄瀬を抱いた。


今日も今日とて愛を囁く

return|home

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -