「きーせ」


地べたに座った青峰っちが、くいくいっと手首を上下に曲げて俺を呼ぶ。
まったく何を企んでいるのやら。もう口の端が厭らしく持ち上がっている。…変態。


だけどそれを見て、ぞくぞくしてしまう自分も十分変態だと自覚している。


「何スか?」


歩み寄れば、シようぜ、と。


「ここ、屋上っスよー」
「んなこた、わかってるつーの」


シたいんだよ。
獣のような瞳が俺を映す。いいよ、の返事の代りにしゃがみこんでキスをしてやれば、噛みつくようなキスが返ってきた。唇が離れる瞬間、ぢゅっと舌先を吸われて腰の奥がずくん疼く。俺の中にあるスイッチが完全に入っていく。


「青峰っち、立って」
「あ?何でだよ」


舐めたい。
そう短く告げれば、えろいなぁお前、と満足そうに笑って立ち上がる。その厭らしい笑い方一つで俺の鼓動は簡単に高鳴ってしまう。ああ、はやくめちゃくちゃにしてほしい、と。


青峰っちの脚の間に跪き、やんわりと膨らんだ股関を目の前にして生唾を飲んだ。ズボンの上から形を確かめるように触って口づける。ベルトを外し、ファスナーを歯に挟んで、じーっと下ろす。


「それ、やべーわ」


頭の上から声がしたから、何で、と言う風に首を少し傾け見上げる。


「いや何か…AVみてー」


ふ、と笑ってズボンと下着をべりっと一緒に脱がせると、半勃ちしたぺニスが顔を出す。そっと手にとり、まだ柔らかいことを確認するように触れた。先端から根本にかけて、ちゅっ、ちゅっと唇を落としていく。根本までキスをしてから、裏筋を舌先でべろりと舐めあげ、ぱくっと亀頭を口に含む。青峰っちの反応が見たくって、俺は常に見上げる体勢をとった。
がちりと青峰っちと視線が交わる。情欲に染まった双眸が自分を見下ろしていると思うだけでこの身体の簡単に熱を上げる。


れろれろと口の中で舐め回したり、口から出して見せつけるように舐め回したり。根元を両手でしっかり持って、頬張れるだけ頬張てみたり。歯を立てないように気をつけながら、唾液を染み込せるように口を前後運動させたり。
とにかく、この人が自分で気持ちよくなってくれるように愛撫を施す。


だんだんペニスの質量が増す。反りも角度を増して、カウパー特有の味と匂いが口の中に広がる。口の中でで育っていくペニスが愛しくて、じゅっと吸う。吸うことで頬が締まり、それが気持ち良かったのか青峰っちの腰が動く。ちゃんと自分で気持ちよくなってくれている証拠。口蓋に亀頭を擦り付けられると嬉しくて俺は目を細めた。


口から出してみると、怒張したペニスがてらてらと光っていた。


「おっきくなったスね」


膨らんだ先端に口づける。おー、とだけ返す青峰っちの頬は少しだけ赤みががっていてかわいいと思った。


竿を左手で包んでしこしこと扱き、先端を右手の指先でぐりぐりと攻める。青峰っちをじいっと見詰めながら、気持ちいいっスか、とかすっごく硬いっスね、とか腰、動いてるっスよ、とか言って言葉でも刺激した。うっせえよ、とか言ってるくせに身体は素直で先走りがとろとろと溢れる。


左手の上下運動の速さが増す。にちゃにちゃという聴覚的な刺激は青峰っちよりも俺を煽って、窮屈そうにズボンを押し上げる。


「あおみねっち…」
「ん?」
「我慢できない…俺も、シたい」


にやりと笑って、じゃあ、好きなようにしろよ、と俺の柔らかい髪を撫でる青峰っち。
頷く余裕もなくて、俺は青峰っちのペニスをもう一度口に頬張り、ベルトに手をかけ手早くズボンと下着をずり下ろす。痛いくらいに勃ち上がった自分のペニスを青峰っちの先走りで濡れた両手で扱いた。


「…っ、ん…ん…」


夢中で青峰っちのと自分のを愛撫する。手と口の動きがちぐはぐにならないよう気を付けながら、両方のぺニスを攻めあげる。上から時たま聞こえてくる熱い吐息が俺を興奮させた。


「ふっ…ん、んん…っん、うぁ」


後少しでイきそうだったのに、ずるりと口の中からペニスを引き抜かれ、なんで、どうして、と訳がわからなくて泣きそうになる。黄瀬ぇ、と掠れた声で呼ばれて顔を上げると、痛いくらいに腫れ上がったペニスが頬に擦り付けられる。


「顔にかけてーんだけど…」


熱い息を含んだその言葉に、寸止めをくらったペニスが震える。今なら青峰っちに言葉で攻められただけでイける気がする。淫乱、とか言ってくれないかな。


「…学校だから、いやっス。口にしてよ」


本当はかけてほしい。青峰っちの望むことは何でもしてあげたいし、顔を汚されるのだって嫌じゃない。だけど顔にかけられるよりも、口に吐き出されるほうが好き。だって、あんたのものは精液でも汗でも血でも何でもほしい。吸収して自分の一部にしたい。


青峰っちは舌打ちして、突っ込ませろ、と半ば無理矢理押し倒してきた。コンクリートの固い地べたが背中に当たって、痛い。余裕、ねーんだな。いつもなら何か下に敷いてくれるのに。最近、バスケもろくにやらなくなったから、色んなものが溜まってるのだろう。自分でそれらが解消されるのなら喜んで俺は身体を差し出す。


何の躊躇いもなく青峰っちは中途半端に穿いたままの俺のズボンと下着をずり下ろす。


「脚、開け」


告げられた通りに脚を開く。この人を自分に繋ぎ止めるものはもう身体しかないんだから、恥ずかしさなんてもうどこかに置いてきた。


青峰っちが自分の指を口に頬張り、くちゅくちゅと舐める。そんなことしなくていいのに。早く入れて、中を掻き混ぜて、ぐちゃぐちゃにして。もういっそ慣らさないまま青峰っちのペニス入れていいから、だからはやく俺の中に入ってきて。はやく、はやく、はやく。
俺は無意識に青峰っちを見上げていた。


「…なんだよ」
「…ううん、何でもない」

そろりと視線を外す。自分が浅ましいことをこの人に抱かれる度に思いしる。こんなにも浅はかな自分にあんたは気づいているのだろうか。


「入れるぞ…」
「うん」


アナルに指を当てられると身体は勝手に強張った。つぷり。侵入してくる感覚に息を止めて耐える。何度ここを弄られても一番最初の異物感だけは馴染めない。
何か握っていないと不安になる手を彷徨わせていたら、アナルを解いていない方の手が青峰っちの肩へと誘導する。こういう優しいところがまた好きなのだ。自分だけが気持ちよくなれればいい、なんて思ってないところがたまらなく好き。セフレなんだからそんなことしなくてもいいのに。変に期待してしまう。


きゅっと肩を掴んで狭い中を解される感覚を感じた。人差し指と中指の二本の指がゆっくりと確実に中を解していく。長い指を逃がさないようにねっとりと絡み付く俺の中。
さっきは余裕なさそうだったのに、慣らすのはこんなにも丁寧で愛されてんのかな、なんてあり得もしないことを思いだす。
不意に前立腺を掠められ、俺は声を上げた。みっともない声を。


「ここ?」


確かめるように何度もぐりぐりと撫でられ嬌声は止まらない。青峰っちは意地の悪い笑みを浮かべながら、気持ちいいかと訊いてくる。知ってるくせに、わかってるくせに、ほんとに意地悪なんスから。
ここでこっちが変な意地を張って答えないと機嫌を悪くしてしまうし、俺はどうしようもなく愛しいこの男をつなぎ止めておくために、望みどおりの答えを紡ぐ。


「いい、そこ・・・気持ち…いいっス、あっ」
「そっか…」


俺の答えに満足したらしく身体を離して指も抜かれた。指の抜けた中は青峰っちがほしいとひくひくと呻く。
黄瀬、おいで、と対面座位しやすい姿勢で青峰っちが俺を呼ぶ。こくん、と頷いて身体を起こし、青峰っちの股間の上に跨がる。ペニスを右手で抑え、左手を青峰っちの肩に添えて腰を落としていく。先端がアナルに当たり反射的に腰を上げると、逃げるなと腰を捕まれた。下からノックされるように何度かアナルをつつかれ、あっあっと情けない声を零れす俺の唇。


「黄瀬ぇ、まだ?」
「んあ、あ、ちょっと待って、って」


大きく深呼吸をして唇を噛み締め、ぐっと腰を落とす。ぐちゅ、と厭らしい音をたてて青峰っちのペニスを飲み込んでいく。しっかりと解かされたけれど、指二本とは比べ物にならないくらいの太さと長さを持つ青峰っちのペニスを飲み込むのは至難の業。ぐぐぐっと膝を折り、腰を沈める。強烈な圧迫感と異物感に目を強く瞑って耐えた。青峰っちも辛そうな声をもらす。
尻に青峰っちの下生えを感じ全部入ったことを知る頃には、脚はがくがくと震えて力が入らなかった。


「相変わらずキッチーな、お前の中」


膝裏を持ち上げられ軽く揺すぶられただけで頭が白くなる。
痛みだって青峰っちとつながった証拠だと思えば快楽に変わる。なんて単純な身体なんだろう。


「あっあっ、ひゃぁ…ん、あおみね、ち」


譫言のように何度も名前を呼んでいたら、なにと返されてふやけた頭の意識が戻ってくる。呼んでただけ、と答えたら怒るだろうか。気持ち悪いと思われるだろうか。答えるのに悩んでいると黄瀬と呼ばれたから肩口に埋めた顔をあげた。唇と唇が触れるくらいの距離にどきりと胸が鳴る。まだ唇を重ねたことは、ない。


「お前、それわざとか?」
「な、にが…?」
「その何度も俺の名前呼ぶやつ」


やっぱり気持ち悪かったのだろうか。気に障ってしまったのだろうか。すいませんっス、とだけ謝ると大きく溜め息を吐かれた。あーあ、最悪。青峰っちの気分悪くさせちゃった。セックス中に名前を呼ぶのはNGなんスね、知らなかった…。
落胆していると急に尻たぶを捕まれ、大きく腰を打ち付けられた。強い刺激に背中にまわした腕に力がこもる。


「んぁ、やあ青峰っち…はげし」


再開した律動はいつもより速くて激しくて青峰っちの背中にすがるので精一杯。みちみちと肉を引き裂かれるような痛みとぐずぐずに腰を溶かすような快楽に意識がまた薄れていく。
青峰っちのペニスも大きくなった気がする。お互い射精が近い。
溜め息吐いてたけど、こんだけ大きくなってたらちゃんと俺で感じてくれてる証拠だよね、気分悪くさせちゃたけど俺で気持ち良くなってるんだって安心してもいいよね。


「イ、く…ん、あっあっあっあぅあ!」
「っぅ…!」


背中を大きく仰け反らし喉を晒すように果てた。どくどくと吐き出された精液を受け入れない俺の器官とこの絶頂の波が去る頃にはあんたは俺の側に居ないんだろうな、なんて冷静に考える自分の頭が憎い。


「……好きだ」


ぼうっとした意識の中で唇にカサカサしたものが触れる。それが何なのか知る前に俺は意識を手離した。


キスの仕方さえまだ知らなかったあの日

(20130303)
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