ただいま、と言ったって返ってこない、おかえりなさい、の声。行ってきます、と言ったって聞こえてこない、いってらっしゃい、の返事。同棲しても、お互いが忙しくて会えないのは重々承知していた。
でも、それでもよかったのだ。
朝7時くらいに帰ってきて、くたくたになった身体をベッドに放り投げれば、少し前までそこにあった体温が黄瀬を包んでくれた。少し眠って、昼前にお腹が空いて目を醒ます。ダイニングに足を運べば、食卓の上に昼食が用意されていて、いつも通りサランラップのかかった惣菜の横に“おかえり。温めて食べろよ。行ってきます。”のメモ。
そのメモが中学から愛してやまない青峰と同棲している証拠。それだけで黄瀬は十分幸せになれた。


青峰と同棲して5年。
腕もレベルも上がった青峰の料理は黄瀬の胃袋と心を満たしていく。
昼食を食べ終えたら食器を洗い、洗濯物を洗って干して畳んで、夕食を作り、いつも通りにサランラップをかけて、その横に“練習お疲れさまです。温めて食べてね。行ってきます!”のメモを置いて午後3時前後に家を出る。
これがここ数ヶ月の黄瀬の生活リズム。



それが今日、久し振りに仕事がはやく終わり、珍しく夜中の1時過ぎに帰ったら、風呂上がりの青峰に家の中でばったり出会ってしまった訳で。
黄瀬は数ヶ月振りに見る恋人に思わず抱き付いて、口付けを強請った。
それに応えるように青峰は深く深く口付ける。舌と舌でセックスするように唾液を交換して飲んで、呼吸さえ奪って、相手の舌を受け入れて、お互いが満足するまで口内を貪った。
唇が離れる頃にはお互い熱が上がっていてどらからともなくベッドに誘った。







「っあ、はぁ…あ、ふぅ」


怒張した青峰のペニスが黄瀬の身体を開いていく。久しぶりの感覚にシーツを握って耐えた。自分が苦しくないようにペニスを扱き、ゆっくりゆっくり中に入ってきてくれる青峰の優しさに黄瀬は涙が出そうになる。


「っ、きちいな…」
「ふぁ…だ、て…4ヶ月ぶり、すよ」


4ヶ月ぶり。青峰に自分が触れるのが、青峰が自分を触れるのが、4ヶ月ぶり。もっともっと長かった気がする。

青峰と同棲して1、2年目は仕事より一緒にいる時間の方が長かった。
3年目になって黄瀬はドラマの撮影が入るようになり、青峰も有名なバスケットボールプレイヤーとして忙しくなり、一緒にいれる時間がどんどんなくなっていった。仕事をするのは楽しい、だけど青峰との大切な時間を奪うのなら辞めたい、と何度も思った。できることならこの愛しい男を受け入れるだけの容器になりたい、毎日そんなことばかり思っていた。

昔、一度だけ青峰を受け入れるだけの容器になりたい、と言ったことがあった。青峰は、なりゃーいいじゃん、と笑って肩を抱き寄せた。それじゃただのセフレだけど、それでお前は満足なの?と。そんなのいやっス、絶対にいや、と首を振って否定した。そしたらまた笑って、青峰大輝の黄瀬涼太が一番好きだけどモデルの黄瀬涼太も俳優の黄瀬涼太も俺は好きだって頭をわしゃわしゃと撫で回してキスをくれた。
それからだ。それからこんなに青峰に会えない忙しい毎日でも黄瀬は生きてこれたし、しあわせを感じてこれた。彼の一言でこんなにもしあわせになって、頑張れる自分の安っぽさに呆れつつ、でもこれが本当の黄瀬涼太なのだから仕方がない。




中に青峰がいる、確かめるように中を締め付け、胎を手で擦った。ああ、いる、いるんだ、ここに。ずっと待ち望んでいた感覚。青峰が中にいるっていうことがどうしようもなく嬉しくて自然と目が細まる。


「なに、どーした?腹いてぇの?抜く?」
「ん…ちがう…なんか…青峰っちが、いるんだなって」


思っていることを伝えただけなのに、青峰は目を見開いて、ばーか、そういうの反則って困ったように笑う。そうして膝裏を抱え直して緩く腰を揺すった。


「あっあっあっ…くぅ、んあっは、」


低くもなったり高くもなったりする声が部屋に振動する。心地よい声だ、と青峰は思った。
緩やかなピストン運動でじわじわと快楽を高めていく。
前立腺を外さずに突いて、上気した肌に手を滑らせる。
淡く色付いた胸の尖りを指と舌で愛撫すれば甘美な声を漏らした。


「ひゃあ、んぅ…きも、ちいっ…きもちいい、す」


素直に気持ちいいと言う黄瀬をもっと自分で気持ち良くなって満足してほしくって愛撫を施す。少し速く腰を揺らし、耳元で何度も名前を呼んだ。りょうた、りょうた、りょうた。それに応えるようにだいき、好き、好き、と艶やかな声が紡ぐ。


黄瀬の身体が快感の波に打ち震え始める。中を切なく締め付け、官能的な声を上げ絶頂を迎えた身体は、がくりと大きく震えた。その切ない締め付けに耐えられず腰をずっずっと打ち付け、青峰も射精を迎える。中にじんわりとが拡がっていく感覚に小さく声を上げ、満足そうにうっとりと黄瀬は微笑んだ。


「キス、して…」


青峰も微笑んで啄むようにキスをした。きつく抱き合って体温を共有し、りょうた、と呼べばだいき、と囁く、そうやって何度も互いに名前を呼びあった。
そして青峰が与える快楽に黄瀬はあの心地よい声を上げ、素直に溺れていった。



それでもしあわせだから



(20130224)



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2万打企画でフリリクしてくださったキキさまに捧げます。
同棲青黄の甘裏という素敵なリクエスト本当にありがとうございました!!
同棲青黄になっていますでしょうか…とっても不安です;;
これを書いている最中、某同棲青黄botさんのツイートを観察させていただいておりました笑
本当に同棲青黄botかわいいです!!


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