□my darling


「黄瀬」


寝室の扉を開け、一時間くらい前まで自分もいたベッドに歩み寄れば、まだ気持ち良さそうに黄瀬が寝息をたてていた。白い枕に散らばった金の髪を梳く。さらさらと指の間から滑り落ちるそれはまるで金糸のようで、お日さまのやわらかい匂いがした。ちゅっと髪に口付け、もう一度名前を呼べば、ん、と鼻にかかった音が聞こえてくる。



「Good morning,my darling.」



前髪を掻き上げ額にキスを落とす。んー、と返事をしながらそろそろと腕を首にまわす黄瀬はまだ瞼を持ち上げる気配はない。すりすりと首筋に頬を擦り付け甘えてくるのをかわいいな、なんて思いながら犬にするみたいに頭をわしゃわしゃと撫でた。



「ほら、起きろ」



細い腰に腕を回し起き上がらせると、いやいやと頭を左右に振って黄瀬は起きることを拒否する。せっかく目玉焼きも半熟に焼けたのに、このまま黄瀬が起きてくれなければ普通の目玉焼きになってしまう。黄瀬の大好きなオニオングラタンスープだって冷めてしまう。それはちょっとやだな、ちゃんとおいしい内に食べてほしい。



「ほーら、きせ」



首に巻き付いた腕を解いて、頬を摘まむと眉間に眉を寄せ、いひゃいと睨んできた。痛くしてるんだから当たり前だ、ばーかって抓った頬をふにふにと揉む。黄瀬は肩を竦め、声をたてて笑った。この笑い方が好き。こいつの笑顔一つでしあわせになれる自分をなんて簡単な人間なんだろうと思うけれど、しあわせになれるのだから仕方がない。もっと笑ってほしくって脇腹を擽る。



「やだ、かがみっち、ふはは」



こちょこちょこちょ。容赦なく弱い部分を擽ってやれば、黄瀬が楽しそうに擽ったそうに身を捩る。もうやめて、起きるから、と泣き笑いになったところで少しやり過ぎたなと反省。うっすら水の膜を張った瞳をごしごしと腕で拭く黄瀬にわりぃと謝罪する。



「ん、平気っスよ。おはよう、火神っち」

「おはよう、黄瀬」



顔を寄せれば自然と閉じる瞼。吸い寄せられるように形の良い唇に口付ける。おはようのキス。同棲し始めて最初の頃は唇が離れると恥ずかしくて会話すら上手くできなかったけれど、最近は慣れたものでもう恥ずかしさはなくなり、その代わりにどうしようもない愛しさが込み上げてくる。この愛しさのせいで胸が苦しいのは自分だけだなんて思いたくない。



「飯、出来たから食べようぜ」



うん、と頷いたくせにまた首に腕を絡めて鼻を俺のそれに擦り寄せてくる。かわいい、かわいい、かわいい。だけど口にはしない。口にしたら何だか負けた気がする。



「火神っち〜、抱っこ〜」



今日は随分甘えん坊さんのご様子。抱っこ、抱っことせがむものだから190近い男をお姫様抱っこする。黄瀬は見た目の割りに軽い。ちゃんと食え、と言えば、モデルだから無理、と返ってくるし、びっくりするくらい好き嫌いが激しく、同棲当初はほとんど俺の料理を食べてくれなくてがっかりしたのを覚えている。今では嫌いなものも俺がアレンジした料理で食べれるようになり、残さずきれいに平らげるようになった。


ダイニングまで運んで椅子に座らせてやる。身体を離そうとしたら、シャツの襟元を掴まれ唇を奪われた。歯列を割って入ってきた舌は俺の腔内を貪る。それに応えるように俺も舌を絡めて貪り返す。後頭部を掴んで深く深く口付ければ胸板をどんどんと押され仕方なく唇を解放してやった。自分からしてきたのになんつー奴。



「朝から盛んな、ばかがみ」

「盛ったのはてめえだろ」



ごちん、と額をくっ付ける。いたっ、と笑う彼が仕方なく愛しい。一方的な片想いは成就したはずなのに、好きという想いは一向に落ち着いてくれない。困ったものだと思いつつ、これからも一緒にいたい、できればずっと隣で笑っていてほしい、なんて願ってしまう俺はエゴイストだろうか。



「好きだ、黄瀬」



白い頬に朱をさして、俺も、と笑う黄瀬が愛しくてもう一度自分のものであるのを確かめるようにキスをした。


(20130129)
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香山さん、お誕生日おめでとうございます!!
ぬる甘火黄でごめんなさいです(; ;)
いつもいつも素敵な火黄ごちそうさまです!!
(`σ///σ)<これからもこんなやつですが、仲良くしてください!!香山さんだいすきでする〜///

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