□01




服の裾を掴まれたから。
また、もっかい、と言われるのではないかと思ったら。
徐ろに開かれた口は、


「青峰っちが好きっス…付き合って、ください…」


と紡いだ。

さっきまでボールの音やバッシュの踏み込む音を響かせていた体育館は静かで。
黄瀬の声はいつもみたいな弾んだ声ではなく、か細くて。
でも、はっきりした声で。
顔をトマトみたいに真っ赤にして。
俺の服の裾をぎゅっと握りしめて。
目にはうっすら水の膜を浮かべて。
身体を小さく震わせて。
黄瀬が俺に好きだと、付き合って欲しいと言う。



黄瀬が俺のことを好きなのはうっすら気づいていた。




誰かに見られてる。
そう思ってその視線を探すとほぼ黄瀬のものだったし。
何気ないボディータッチだけで顔を紅潮させるし。
俺がテツと話してると何か寂しそうな顔するし。

同性だからと言って、好意を寄せられるのは別に気持ち悪いと思わなかったし、俺は俺で黄瀬の顔が好きだ。
澄ました顔とか、真剣な顔とか、笑った顔とか、悔しそうな顔とか、寂しそうな顔とか、眠そうな顔とか。ころころころころ変わるこいつ顔は見ていて飽きないし、ときどき見せる俺のこと大好きみたいな顔がたまらなくいいのだ。



「…いいぜ」



付き合ったら他の顔も見れるんじゃねーのかなって、好奇心本位で黄瀬の告白に二つ返事した。




お前の笑った顔がもっと見たくって

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