「ただいまー…っわ!」
家に帰ると、ナルトたちとご飯に行っているものと思っていたサスケが部屋にいたので驚く。
「帰ってたんだ?」
「…ああ」
振り向きもせず、素っ気ない返事を返すサスケ。
「どしたの?何かあった…?」
荷物を置いて上着を脱ぎ、私はソファに座るサスケの隣に腰を下ろした。
「…なあ、アイツと何話してたんだよ」
「アイツ…?」
「ネジ」
チラッとこちらを見るサスケ。ネジさんとは挨拶の社交辞令のような会話をしただけなので、私はサスケが何を聞きたいのかさっぱり分からない。
「全然大したことじゃないよ?」
「……」
「どうしたの?ネジさんとなんかあった?」
サスケの顔を覗き込むと、フイッと反対側を向いてしまった。それでもめげずに「ねえ」とサスケの服の裾を引っ張ると、少し間を開けてからサスケが口を開いた。
「…アイツともう話すな」
「…なんで?」
「…なんでも」
「そんなの…やだよ」
そんな、理由も分からないままネジさんと話せなくなるなんて。ネジさんだけじゃない、みんなに対してそう思う。
それにしても、何故ここまで言うのだろうか。ネジさんと話したくらいで、ここまで言うのも珍しい。
「今日サスケ変だよ?」
「変じゃねーよ、お前が…ッ!」
サスケが私の肩を勢いよく押すと、私はそのままソファへと倒れる。しかし、その言葉の続きは飲み込んでしまったようで、代わりに唇を噛んでいるのが見える。
「…言いたいことあるなら言って、聞くから」
私がそっと促す。するとサスケが押し倒した私の手首にぎゅっと力を込めるのが分かった。そして意を決したように私と目を合わせ、口を開く。
「お前が…お前が、頭撫でられたり、するからッ…!」
確かに、今日数回頭をポンポンとされた。それが気になっていたというのか。私は優しい先輩だなという印象だが、恐らくネジさんの方も妹みたいな後輩くらいにしか思っていないことだろう。ネジさんにも、もちろん私にも他意はなかった。
「今回だけじゃない…ずっと我慢してた…なまえのこと傷付けたくなくて。でも、他の奴に…アイツに取られるくらいなら…!」
「待って、私は今までだってこれからだって、ずっとサスケが好きだよ…?」
「うるせえ、もう限界だ…ッ!」
ガンッとソファの背もたれに隣接する壁を叩く。私はあまりのその音の大きさにビクッと体が跳ねた。
「父さんや母さん、一族のみんなを奪われて…その上なまえまで…?冗談じゃねえよ、なまえは絶対渡さねえ…!」
「ッッッた…!」
あまりの痛みにぎゅっと目を瞑る。少し経って首元からサスケの歯が離れたのを見計らってから恐る恐る目を開けると、そこには酷く泣きそうな顔をしたサスケがいた。
「大丈夫、私はどこにも行かないよ」
「うるせえ、母さんも昔そう言ってた」
「昔と今は違う。だってサスケも私も強くなったもん。私に何かあっても、サスケが守ってくれるでしょう?」
「…でも、」
「大丈夫、ずーーっと一緒!本当だよ?その代わり、サスケも私から離れちゃ嫌だからね。」
そう言うと、渋々ながら「…ん」と首を縦に振るサスケと目が合った。そして、その瞳がスゥーっと紅く染まる。噛まれた首が痛いはずなのに、その痛みよりも綺麗な紅い写輪眼に引き込まれる。そして私は意識を手放した。