一年生の頃。
小平太は何かあるごとに私を呼んで、私によく懐いていた。
今では考えられないほど小さかった小平太は、私の周りをちょろちょろと動き回り、誰から見てもまるで小動物だった。



「長次!縁の下の蟻の列が三角形んなってる!見て見てっ!」
「・・・」

「うわああん長次! 部屋の中が蟻だらけになったよおおお!」
「…食べこぼすからだ」


「長次!この武器なんていうのかな!すっごく美味そうな形!」
「・・・」

「うわああん長次! 割れちゃったよおおお!」
「…面白半分に引っ張るからだ」



「長次!長次!ねぇ、長次!」



私も小平太に甘かった。



「ああああ!小平太ばか野郎!どこにアタックしてんだよ!長次の朝顔、割っちまいやがって…!!」
「どっどどどどどうしよう留三郎!!」
「どうしようも何も…とりあえずバレーするどころじゃな…」
「・・・」
「おわあああ長次ぃ!いたの!?」
私に怯える小平太。
「ごっ、ごごごめん長次!」
「・・・」
「夕飯の煮豆あげるから!」
「…いらん」
「これから1ヶ月、背中流す!」
「…やめろ。お前がやると皮膚がなくなる」
私が右手をあげると、身構えて縮こまる。
「ひっ!」
ぴんっ
「あいたっ!」
指先で額をはじいてやった。
「…え?デコピン?」
隣で留三郎が間の抜けた声を出す。
小平太から離れ、バレーボールで割られた鉢を拾い始めると、留三郎は私の背中へ話し掛けた。
「あ、あのさ長次…」
「・・・」
「加害者側の俺が言うのもなんだけど、その…デコピンだけ…?」
「・・・」
そんなに叱るべきことだろうか。
「…怒ったところで朝顔はどうにもならんし、小平太だってわざとじゃない」
「…そうか…」
小平太をじっと見つめる留三郎。
「…なんだよ」
居心地悪そうに小平太は抗議した。
「いや、べつに…」
「なんか言いたいことあんなら言えよっ」
「…なんだかんだ長次って、いつも小平太甘やかすなと思って」
「なっ…!しょんなこと無い!」
慌てて噛む小平太。まるで図星だったようだ。
そんな小平太を見て、留三郎は小馬鹿にして笑った。
「あるだろ。お前、長次に怒られたこと無いんじゃねーの?」
「あるっ!」
「嘘つけ。たとえばどんな時?」
「うっ…」
「・・・」
「…ほ…」
「ほ?」

…本を、粗末にしたとき



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