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side:文次郎
「あちゃー…そりゃ小平太、やっちまったなぁ」
長次が俺達い組の部屋を訪ねてきたのは夕飯前のことだった。
「残念だが、私達のところへは来てないな」
仙蔵が武器の手入れをしながら、長次へ言葉を返す。
「そうか…」
長次の顔に少し疲労の色が見える。長次のヤツ、ずっと小平太を探し回ってたんだろうか。あいつの辞書に行動範囲なんて言葉は存在しない。見つけ出すにはよっぽどの労力が必要だ。
「…放っておくのが一番じゃないか?」
「仙蔵」
こいつはまた冷静なことをさらりと言ってのける。そんなこと言ったら、今まで探し回ってた長次の苦労が無駄になるじゃねーか。
「お前そりゃあ…」
「いや、それが一番正解なんだよ文次郎。長次も心配のし過ぎだ」
俺の言葉を遮って、仙蔵は不適に笑った。
「なんせアイツは大型犬だ。すぐに飼い主が恋しくなるだろうよ」
その頃 side:小平太
「困った…」
長次にバレずに夕飯食ったまではいいものの、今日、どこで寝よう…
部屋には長次がいるわけだから、寝るどころか夜着を取りにすら行かれないし…
塹壕掘って寝るか
「ぶあっくしょっ!!!」
でかいクシャミ一発。
鼻水が出た。しんべヱみたいだ。
「今日、寒いなぁ…」
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