side:小平太





痛かった…
ものすごく痛かった…
痛いなんてもんじゃない!
今日が命日だと思った!
いさっくんは本当は死神か何かなんだ、きっと。
「でも我慢したもんね!もう終わったんだもんね!これから長次と塹壕掘りだ!」
長次が塹壕掘りに付き合ってくれるなんて何年ぶりだろう。小躍りしながら自室の戸を開ける。
「長次!終わったぞ!塹壕掘りに行こう!」

「…あれ?」
誰もいない。
長次のヤツ、どこに行ったんだ?
「なんだよぅ。1日付き合ってくれるって言ったのに」
言った記憶なんて無いけど、私の中では言ったことになっている。
「…ん?」
ふと視線を落とすと、長次の机上に開いたままの、ツギハギだらけの冊子があった。
「なんだこれ。本なのか?」
手に取ってみる。
「ずいぶんボロボロだなぁ。なんでこんな…」

ビリィッ

「…え」
嘘だろ。
「…裂けちゃった…」
真ん中から、キレイに真っ二つだ。
「…えええええ!!!」
いや、ちょ、待っ
ウソ嘘うそだろコレはないよね有り得ないよねドッキリだよね手に取っただけじゃん!手に取っただけじゃん!!
どっどどどうしよう長次の本破っちゃった長次の本破っちゃった長次の本破っちゃった長次の本破っ(長次の本破っちゃった=マジで殺られる5秒前by六年生)
「小平太?」
「ぉああああああ!!!」
いつの間にか長次が部屋に戻って来ていた。口から心臓。
慌てて破った本を後ろに隠す。
「? 今、何か隠…」
「知らない知らないなんにも知らない!隠してないよ!隠してない!隠す!?何それ、美味しいの!?」
なんなんだよ今日!いさっくん並みに不運だぞ私!逃げたい!!
「・・・」
長次は私の後ろの一点をじっと見つめる。視線の先は長次の机。…あっ
「…小平太」
「は、はひっ!」
「机の上にあった本…」
あああ
も う だ め だ
「…〜っご」
「?」
「ごめんなさあああい!!」

バキイイィッ

「!?」
天井を破壊して屋根裏から脱走。こうするしかない、仕方ない! 天井なんてあとで留三郎に修理してもらえばいい!
必死に逃げてて、ふと気付く。
「…あ!」
さっき破った本が手元に無い。しまった!きっと部屋に落としてきたんだ!それも長次の目の前で!
もう、後にはひけない。
「…うわああん!!!」

情けないことに、屋根裏を逃げながら半ベソかいた。



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