side:仙蔵





「相変わらず愉快だな、お前らは」
小平太と伊作をその場で見送る長次に、私は後ろから声をかけた。
疑問符を浮かべる長次に「部屋の前があんまり騒がしかったので一部始終見ていた」と付け足してやると、なるほどといった顔をした。
ここがい組の部屋の前であることを忘れていたのか。全く、騒々しいやつらめ。
「しかし良いのか? 塹壕掘りの約束などしてしまって」
「…なんとかする」
どうやら長次には初めっから塹壕を掘る気など無いようだ。
「見事な手懐け方だ」
私は思わず苦笑した。
「普段は手のつけられない猛獣のようなアイツが、お前の前だとまるで聞き分けの良い大型犬だなぁ」
長次から否定の言葉は聞こえない。
「アイツがお前に懐いてるんだか、それとも…」
「・・・」
「お前がアイツを甘やかしてるのか…」
「・・・たぶん」
「たぶん?」

「…たぶん、どっちもだ」

最後の長次の台詞は、溜め息混じりだった。



prev | next

back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -