中学二年生のインターハイの時だった。
帝光中学校女子バスケットボール部は、インターハイの決勝で負けた。

うちの女子も中々の実力のはず。やるじゃん相手チーム。
まぁ、そーは言ってもどーでもいいんだけどね、俺ら男子は優勝してるんだし。怒られんのは女バスだけ。多分。
でも俺たちだって応援に駆り出されてたのに、せっかく応援したイミねーじゃん。
でも決勝戦の相手チームのキャプテンの子、かわいかったな。顔が。性格は暑苦しそーだったけど。
うちみたいな強豪を倒して優勝できるのはそりゃ嬉しいだろーね、すっごくすっごく喜んでた。そんな体力なんてもうないはずなのに、仲間と肩組みながら飛び跳ねて喜んでた。かわいー。

と思ってたら、中三のインターハイの決勝でもおんなじ中学に女バスはまた負けた。キャプテンもまた、おんなじ子だった。相変わらず、顔がかわいかった。
今回も優勝したってのに、今度はずっと泣いていた。笑ったり喜んだりしないで、去年と同じように仲間と肩組んで泣いてた。なんとなく、気持ちはわからないでもなかった。でも、暑苦しいなって。

その子のことは、その後も何回も見かけた。高校生になってからも、ずっとバスケを続けてるっぽかった。
試合しに来てたり、男バスの応援に来てたり、多分色々だったけど陽泉の女バスと直接当たることは一回もなかった。
身長高いし、ポジションはずっとセンターみたい。髪は長いことが多かった。たまに短くなってた。そっちのが好きだった。初めて見たときは可愛い感じだったけど、年々キレイになっていった。

一回だけ目が合ったことがある。偶然会場の廊下ですれ違った時に。同年代でバスケやってて俺のこと知らないとかありえないだろーけど、特になんも言わずにすぐに目は逸らされた。そりゃそーだ、俺がアンタを認識してるなんて、思ってもみないだろーし。

どーせまた大会とかあれば会うでしょって、あーいうバスケ馬鹿はこれからもずっと、バスケ辞めるわけないんだしって思ってたから。
だから一回も声も掛けたりしなかった。まぁ、次でいーかって。


けど、高校二年生のウインターカップ以来、あの子のことは見てない。



青春のきらめき





なんとなく、今もたまに思い出す。
多分、一度でも声を掛けていたらこんな想いはしていないはずだ。声を掛けていたら、きっと何か違ってたはずなのに、一度目が合ったことがあるだけだから逆に未練になるんだろう。
心底どうでもいいはずなのに、ふとした時に思い出す。
合コン参加した時とか、女から連絡先聞かれた時とか、告白された時とか、えっちしてる時とか。

別に毎回じゃないけど、なんとなくふわふわいるんだ、ずっとどっかに。
まさか死んだなんてことないと思ってるし、高校名だって覚えてるけど、それを頼りにわざわざ探しに行こうとかするほどじゃなかった。するほどじゃなかったくせに、思い出しちゃうのはかなりメンドくさい。多分探しに行けばよかったんだ。


「アツシ」
「んー?」
「アップ終わってるのか?試合、始まるぞ」
「んー」


俺は今22歳で、Bリーグのとあるクラブで結局プロバスケットボーラーとしてバスケを続けてる。室ちんも一緒のクラブだ。腐れ縁ってやつなんだろう。
俺は自分のこと頭が良くて、要領いいって思ってる。たとえどんな会社でどんな仕事をすることになってもそれなりに出世できる自信あるけど、心のどっかでは自分にはバスケしかないって分かってる。
室ちんも、同じだと思う。

黒ちんは今年からガッコーの先生になった。
赤ちんは起業した。
ミドちんはお医者さんになるための勉強してる。
黄瀬ちんはこないだ朝ドラに出た。
峰ちんはNBAのチームの所属が決まった。
あと、火神はもうNBAでやってる。


続けてる人もいるけど、バスケを辞めるっていろんな人に言われるたびに、またあの子を思い出した。なんであんな必死になってやってたのに、辞めたんだろって。

あと、すごく嫌だった。本当はみんなにバスケを続けて欲しかった。そんなこと、口に出したこともないけど。
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