るんるん、るんるん、るんるん

今日もとっても幸せだ。
敦くんの彼女であるだけで、今日もとっても幸せ。敦くんのお顔を思い出すだけでわたしの顔がほころぶ。

今日も今日とてなんでもできそう。
それに今日はなんにもミスなんて、しないんじゃないかな!



青い青い



「先輩、洗剤の量、間違えましたよね?」

洗濯機から漫画のようにモコモコと溢れ出る泡を見てわたしは驚愕した。だって今日はなんのミスもしないはずであったのに。
後輩ちゃんの鬼のような形相に慌てて洗濯機を止める。まずは洗濯機が壊れてないと、いいんだけど。


「ご、ごめんね」
「謝るなら選手に謝ってくださいよ、洗濯物待ってるんですから」
「う、その通りです・・・あの、この洗濯物水ですすぐから、1つずつ。」
「一人でこんな量できませんよ。干すのだってしなきゃなのに。手伝います。」
「だ、大丈夫!後輩ちゃんには、迷惑かけないよ!」


もうだいぶ掛けてますけど、と言いたげなジト目をよそに、内心で謝りつつ。
なんだかんだで最後は、やっぱり手伝って欲しいと思ったら言ってくださいよ!と。優しいんだもんなぁ。
まずは泡だらけの洗濯機を拭くところから始めた。
そして山盛りの洗濯物をすすいで、絞って、という作業を始めた。これが終わったら全部干さなくてはならないのだ。一体いつまでかかるのだろうか。


***


とっくに日は暮れ、部活も終了して部員たちも居残り練習組を除いてみんな帰宅した。
わたしは体育館のすぐそばの洗い場でひたすら洗濯物をすすいで絞ってを繰り返し、手はもうとっくにふやけてしまっている。それに日が暮れると少し冷え始め、水が冷たい。でもこんなことを頑張れるのには理由があった。

体育館から聞こえてくるこの足音やボールの音、これは絶対に敦くんのだ。
何だかんだ文句を言いながら毎日絶対に居残り練習している。もうあんなに上手くてとっても格好いいのに、練習もみんなより沢山するんだ。そんなの誰も敵いっこないよ。すごいなぁ、素敵だなぁ。だから一番かっこいいんだ。


「なにニコニコしてんの」
「うわぁっ!!」


ようやくすすぎを終え、洗濯物を干しているところだった。後もう少しで終わろうかというところに、突如として声がかけられたのだった。
それはもちろん。


「敦くん!」
「こんな時間に洗濯物干すのってそんなにたのしーの?」
「えっ?ううん、ニコニコしてたのはね、敦くんが一番かっこいいからで・・・」
「はぁ?」
「あっ、そっか前置きがないとだね。敦くん一番上手なのに、一番居残りして、だから一番かっこいいんだなって!」
「・・・もー、そーゆーこっぱずかしいことよく言えるよね。」
「えへへ」
「もう終わる?一緒にかえろーよ。うわっ手、つめた」
「寒いの我慢してたから・・・」
「大丈夫?こっちおいで」
「う、うん」


残りの洗濯物を急いで干して、敦くんの後を早足について行く。わたしが早足なのにすぐに気がついて、敦くんは歩くペースを落としてくれた。
体育館には先ほどまでまばらに練習音が聞こえていたけど、もう誰も残っていなくて、正真正銘敦くんが一番最後のようだった。

敦くんは男子更衣室に入っていった。着いておいでと言われたけれど、いつもお掃除するときは入っているけれど、男子更衣室に入っていいのかな。
中まで入って来ないわたしに気がついて敦くんがもう一度、おいで、もう誰もいないから。と言ったので、今度は従った。

敦くんはわたしをベンチに座らせてから部活のジャージを肩に掛けてくれると、自分は練習着を着替え始めた。
男らしく練習着のTシャツを脱ぎ、上半身裸になる。たぶん僧帽筋、みたいなのがすごい。かっこいい。
敦くんはわたしに背を向けているけど、こ、これっていくらなんでも見ていちゃダメだよね。顔を赤らめて目を背けたわたしは、必死に床のタイルに付いた傷の数を数えていた。


「恥ずかしーの?」
「きゃー!!!」


上半身裸のままの敦くんが視界に入ってきた。どうしてまだ着替えていないのと思いつつ、正面から見ると今度は腹筋がすごい。バキバキに割れてる。どうやったらこうなれるんだろう。沢山筋トレしたんだろうなぁ、かっこいいなぁ。


「は、恥ずかしいよ。着替えるなら、先に言ってよぉ」
「ごめんって」
「・・・え、洋服、着ないの?風邪引いちゃうよ」
「触ってみる?」
「え!!」
「腹筋見てたから」
「・・・・・・」
「いーよ」


正直興味があった、敦くんの腹筋。というか筋肉。いつも沢山おかし食べてるのにちっともぽよんとしていないんだもん。
おずおずと敦くんのお腹に手を伸ばして、触れてみる。


「わっ、固い」
「他のとこも触っていーよ」
「ほんと?わ、腕も、胸筋も、すごい。敦くん、かっこいい」
「ふふん」
「すごいなぁ」
「じゃあさ」
「ん?」
「俺も触っていーよね?」
「へ?」


素っ頓狂な声が出た。


「だ、だめ!!」
「なんで?」
「え、だって、えぇ、だめ。」
「どーして?」
「だって・・・」


え?だめ、だよね?触っていい?って敦くんがわたしの身体をってことなんだよね?
それは・・・でもわたしたちはお付き合いしているし、ダメなことはないのかな。

「うぅー・・・」
「なまえちゃんは触ったじゃん、俺のこと。
それっておかしくない?」
「そ、そっか、じゃあ・・・ちょっとだけだよ?」


あぁ、嫌だなぁ、敦くんみたいに引き締まってないのに。お腹なんてちょっとだけぷよぷよしてる。あと、二の腕とかも。そこは触らないでくれたらいいなって思ってたのに、敦くんはやっぱりお腹から触ってきた。


「・・・・・・」
「無言なの、やめてよぉ」
「ぷよぷよ」
「もう!!だから、だめって。」
「いーじゃん、かわいーよ」
「きゃっ!」


お腹を触ったり、二の腕を触ったりしていた敦くんが、その大きな手でわたしの胸に手を触れた。
いつもボールを掴んでいる逞しくて骨ばった手が、わたしの胸をぎゅっと掴んだり、ふにふにと形を変えたり。


「あ、だめ、それは、んっ、あつしくん・・・」
「あは、かわいー」
「あっ、や・・・っ、だめだよ・・・」
「なまえちゃん、おっぱいおっきーね」
「え、っ・・・」
「おっきーの、俺好きだなー」
「そ、そぉ・・・?、ん、」
「うん、だーいすき」
「じ、じゃあ、ちょっとだけなら・・・さわってもいいよ・・・?」
「直接?」
「へっ!?」
「だめ?」
「ん、・・・すきにして?」
「なまえちゃん、かわいい」
「っあ、」


言うが早く、敦くんはわたしの着ていたシャツの裾から素早く手を入れて。
羞恥に震えるわたしをよそに、ブラジャーのホックまで手際よく外し、窮屈さから解放された胸を揉み始めようという瞬間だった。


ーーコツ、コツ、コツ


「!」「!」
「おい、まだ誰かいるのか?」


その声は監督のもの。
監督が男子更衣室の目の前にいるのが分かる。
わたしは思わず自分の口元を両手で覆った。なぜなら、敦くんの手が今にもわたしの胸を掴もうとしているのだから。
たまたま来たのが監督で良かった。さすがに電気の点いている男子更衣室のドアを無断で開け放すようなことはしない。


「まさ子ちんー?まだいるよー」
「何だ、紫原か。えらい遅いな。」
「んー、なんか疲れて寝てたー」
「何してるんだ全く。施錠しないと私が帰れないんだ。」
「んー、すぐ着替えるよー」
「早くしろ。職員室で待ってるからな。更衣室の施錠はしろよ。」
「おっけー」


ヒールの足音が遠ざかっていく。
こんなことになっているのに、すごく、すっごく興奮している自分がいるのだ。信じられないほどに。
敦くんがわたしのTシャツに潜らせていたその手を抜いたことを、ひどくもどかしく感じた。


「むー、まさ子ちん。邪魔しないでよねー」
「っは、ぁ・・・」
「なまえちゃん、声我慢できてえらかったねー」
「ん、うん、」
「はー、もう、せっかくいいとこだったのに。」
「あつし、くん・・・」
「ん?」
「むり、かも・・・、」
「・・・?」
「も、我慢できない・・・」
「え、」
「もっとさわって・・・ほしい・・・」


敦くんの目が、ぎらりと輝いた。
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