序章 | ナノ
{序章 (すべては2000年前から始まった)







物語は、ひとつの島を犠牲にしてはじまる。






ヒトビトが住まう地界―ユニフェロン―と神々が住まう天界―レヴェンホルム―によって成り立つ世界、「ヴェルニカ」。
すべての始まりである世界樹から生まれた八人の神。生の神ミュゼルファス、死の神ギルネーガ、日の神イルデレンタス、月の神ジオネルグ、海の神レイヴァーン、嵐の神ゼクトゥス、空の神セリアネデク、地の神ヨウファ。
この八人の「主神」と呼ばれる神々によって世界の均衡は保たれてきた。

しかしあるとき、世界各地で天変地異や異常気象が多発するようになる。
ある王国では国王の座についた男たちが次々と謎の死を遂げ、ある島国では土地の半分の村が森に飲み込まれ、ある帝国では突然現れた謎の集団が国全土を一日にして占拠し、ある皇国ではその地を収めていた竜人族が隕石により一瞬で滅亡、ある共和国は緑豊かな地がすべて砂漠と化し、ある空中都市は海の底に沈んだ。

それから2000年。
各国の混乱はある程度収まったものの、未だ世界のバランスは歪んだまま。

そんななか、西の大海にぽつりと浮かぶ、独自の文化を持った島。
自治区ピーズフルート。
ヒトとして認められないヒトが住まう、帝国の元属国。


唐突に現れた記憶喪失の少女は、海の力を受け継いだ、世界唯一の異種だった。





ヒトが決して踏み込んではならないところに、
この世の真実は存在する。
そう、踏み込んではならない。


美しき天上、創られし地上。
神々は堕ちた。







『争いは何も生まない。ああ、ヒトは、何故ヒトは理解しない――』






これは、


世界再生の物語。











堕ちゆく世界に祝福を


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