ぼっちなう | ナノ




お風呂場から部屋に帰るまで、俺はその時間が地味に好きである。
あの、後はもう復習をちょこっとやって寝るだけ、という何も考えなくていい時間帯。風呂によって温まりぼーっとした体と頭を夜風で冷やしながら取り留めもないようなことをぼんやりと考えるその感じが好きだ。

その俺の好きな時間、つまり風呂場から帰る途中、もう日は落ちていて辺りは暗く、まだ起きているのであろう生徒の部屋からぼんやりと光が漏れている道を歩いていく。幸い俺は長屋の一番奥、端っこにある部屋なので風呂場から歩く距離は人よりも長い。

部屋に向かう途中、人とすれ違うことがしばしばあるが、俺はその人たちに挨拶をすることは基本ない。先輩や後輩だったら頭を下げたり下げ返したりするが、同級生とは特に何もなくすれ違う。本当は他の奴らみたいに「よーっす、お前の組あの試験やった?」「今日やったよ。まったく、すげー基準高くてさ。超疲れたわ。」なんて授業の愚痴なんかを言い合ったりしたい。できない。


夜練をしている人の音もかすかに聞こえ、明日は俺もやろうかな、組手のテスト近いし、そう明日の予定を頭の中で練っているとふと、前方に人影が見えた。

あ、あれはろ組で唯一話したこと(ただし一度だけ)がある不破君じゃないか。超会話したい。今日のいろは合同授業大変だったなー、いやでも不破君は組手は得意だったんだっけ。いいなー今度良ければ俺に教えてくれよ。とか。そんな会話でどうでしょうかね、普通の会話になってますかね。もうほんっと人と喋らないもんで会話がどういうものか忘れかけてるからどうにかしたい。だが悲しいかな、人と喋らん限りどうにもならないであろう。


そんなこんなで不破君と近づく、やべえどうしよう、一応お辞儀とかした方がいいのか?いやでも同級生でお辞儀とは堅苦しいか。いや、だが無視する方がそれは失礼なことなのではないのだろうか。

どうすれば、こうしてみたら、
そう考えているうちに不破君と俺はぱっとすれ違い、そのまま彼の足音は俺の後方へと離れていった。目が合うこともなかった。



……いや、別に気にしてないし。
目から何か染み出てきた気がしたがそれを無視し、不意に聞こえてきた学園一忍者していると言われる潮江先輩のギンギーン!という声を耳にしながら部屋についた俺はため息をつきながら部屋に入った。

いや、だから、気にしてないですって。





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