ぼっちなう | ナノ





ある城を籠絡させろという忍務実習がきたのは二週間ほど前であったか。先日の波乱の武道大会(ちなみに俺的に一番印象に残ったのは大会終了後である)の数週間後のことだ。
ある城の名は一応伏せておく。今時は個人情報、会社情報の漏れに厳しいからである。今室町時代だけど。
さておき、その実習は五年全体で行うという半年か一年に一度程度にしかこない大きな実習であった。

それぞれのクラスで役割と班を決め、数週間前からクラス関係なく自分の班を中心に動く。普段の簡単な実習とは違い学年単位で行うこれは上級生になればなるほどレベルが上がり、五年ともなると結構きつくなると聞いている。生死に関わることもあるそうだ。まあ六年の一部がもしもの時のために準備をしてくれているらしいが。

死にたくないしそんな実習無くなれ!と思ったところで無くなるわけがなく、俺はなるべく生死に関わりにくい役職に就けるよう祈った。必死に祈った。特に委員長が学級会議に出かけたであろう時なんて、部屋で爪先立ちをしながらぎゅっと絡めて握った両手を天高くつきあげて「アーメン!ソーレン!神様!死ぬのはマジ勘弁!」とぶつぶつ呟き始めるほどであった。人も滅多に通らない孤独な長屋の隅っこ一人部屋で、俺はただひたすら自分の身の無事を祈った。


そしてついに班発表、昼休みも終わり委員長が一枚の紙を見ながら淡々と役職を告げ始める。
「山木、最終突撃班、相模、情報班、日下は巻物捜索班…」
いつ来るのか、焦らしプレイなのかという程俺は委員長の顔と紙を穴が開くほど見つめその時を待った。しかし待てども待てども俺の名は呼ばれない。え、なに、俺まさか委員長に存在忘れられてる?あれ?流石にそんなことないよね?と俺が別の意味ではらはらし始めた時、「最後に、」と委員長の口が開いた。彼の目が俺の視線と重なる。


「苗字は女装班。以上。」


「分かってると思うけど、学級会議で綿密に話し合って決めたことだから異論は認めません。こら富士、早速文句言わない。」
ざわざわとうるさくなるいつもの五年は組の日常の風景の中、いつも通り静かな俺。ただし表情だけはいつもと全く違った。

女装班、じょそうはん、ジョソウハン……


「じゃあ紙貼っとくから、明日から各自ここに記されたところに行くこと。」
いつも通り淡々と明日からの予定を告げる委員長と、早速立ち上がってそれぞれの放課後の予定に向かおうとする同級生たちの間で、俺は目と口を開いたまま声を漏らした。


「え?」




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