ぼっちなう | ナノ




痛い。痛い。

目潰しをくらってもう目が開けられない状態の俺はとりあえず現位置の簡単な把握をする。

場所は先ほどから約二歩下がったところだから後ろはあと一間ぐらい、横幅は右が四尺、左が二間半といったところだろうか。大丈夫、こういうところは冷静になれば意外と適切な対応が取れるものだ。涙ぼろっぼろだけど。思春期である十四歳がぼろ泣き。しかも中身は三十路…やめようもうこの話はやめよう泣いてるのも仕方ないしこれは目に入った悪い物を涙が取り除こうとしてる生理的な涙だから大丈夫、大丈夫だって。
と、もう既に冷静じゃなくなりかけたが鉢屋君が向かってくる音に俺は神経を集中させた。

といっても俺は目隠ししての体術授業や暗闇での実習はそこまで得意なわけではく、避けることしかできない。勘が鋭い人間だったら結構いいところまで行くのだが前世が平成人の俺には直感的なものはない。昔の人ってすごいよね。
言い訳に聞こえるって?別に構わない。なぜなら言い訳だからである。


視覚が奪われた場合、本能的にすべての攻撃を大きく避けることになる。枠外に出ないように自分の位置を把握しつつ攻撃を避けながら一撃でも攻撃を繰り出す場を探り続けるこの戦法はかなり精神力を使う。相手の行動、息遣いにまで気を配って、俺はどうにか攻撃のチャンスはないかと探った。が、あの天才鉢屋君がこの相手を倒すにあたって一番の場面で隙を見せるはずがない。というかそんなとこで隙を見せる奴がいたらそれは忍者失格である。


後ろに対戦場の枠線が迫ってきたであろうところで、俺は一か八か勢いをつけて跳び、鉢屋君の後ろに回った。
彼が振り向く瞬間、此処しか何もできない。ぐんと右足を踏み出して苦無を振りかぶった。
しかし、目の前にいるはずの鉢屋君に当たった手ごたえはない。あれ、と思ったら下からぐん、と人の気配が伸びて苦無を持っている手に手刀を当て、くーこちゃんを落とした俺の手を掴んだ。


ぐるんっと比較的ゆっくりとしたスピードの浮遊感。


固い地面に叩きつけられて体がひりひりとした痛みを感じたその時には、首に刃物と思われるひんやりとした感触があった。

あ。

俺が現状を理解し始めたところで笛が鳴る。


辺りに高々と鳴らされた笛とともに聞こえた木下先生の声は、勝者が鉢屋君であると告げた。






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