「あれ、また君か、って何したのその怪我!!」
るんるんと保険テントに向かったものの、俺を待っていたのは善法寺先輩の驚愕の声と数々の質問であった。
ひとつひとつの質問に答え、俺は大人しく先輩からの治療を受ける。きつく包帯で巻かれて鈍い痛みが腕に走り、俺は必死にさっきの竹谷君との会話を思い出した。幸せな気分になって痛みが和らぐ。やばい、この方法無敵だわ。
「君が二回戦にでてるとは思わなかったよ。」
手際よく包帯を巻きながら善法寺先輩が俺に話しかけた。確かにあれだけの怪我をしていたから先輩が勘違いするのも無理はない。
俺がはあ、と返せば善法寺先輩は骨や筋に損傷はないようで良かったと俺に言った。
「狼に咬まれたなんて、下手すれば一生腕が動かなかったかもしれないから。」
先輩さらりと怖いこと言わんでください。良かった、俺の忍者人生ここで終わるところだった。
今のところ帰る家もない俺がここで学園からぺいっと追い出されたら、かなりきつい人生を辿ることになるであろう。というかぽっくりいってるかもしれない。怖い。かみこちゃん咬みどころ悪くしないでくれてありがとう。
「じゃあしばらくは絶対無理に左腕動かさないようにね。」
にっこりと言う善法寺先輩にはい、と返そうとしたところで、俺は午後にももう一戦控えていることを思い出した。
「あの、俺、三回戦もでなくちゃいけなくて…」
「はあああああああっ!?」
保険テントに善法寺先輩の驚いた声が響き渡り、周囲の視線が一気に集中した。
俺はその後善法寺先輩から注意すること数十点をものすごい剣幕で言い聞かされ、人ってあんなに変わるものなのかと妙な教訓を得た。
食べ終われば三回戦だからご飯で精力をつけるぞ、と先ほどの善法寺先輩の剣幕にいささかげっそりとしながらも俺は食堂へと足を向けた。