ぼっちなう | ナノ




あまりの衝撃で左腕に持っていたくーこちゃんが手から零れ落ちる。唯一の物理武器が落ちてしまっては、次に竹谷君の攻撃がきたら受け止められない。焦燥。腕の痛み。頭の中がぐるぐると混ざってきたとき、カラン、とくーこちゃんの落ちる音がした。状況に急に現実味が湧き頭に冷静さが戻る。


こりゃもう狼可哀そうとか怖いとか言ってられない、と目の前にいた未だ咬みついている狼を空いてる右手で渾身の力で殴る。今度は相手ががうっ、と悲鳴を上げた。

「かみこっ!」

竹谷君が狼のであろう名前を叫ぶ。
その間に地面に落ちたくーこちゃんを拾いながら懐から小さな布袋を取り出し、竹谷君の後ろに入り込んだ。

竹谷君が振り向いた瞬間にこれまた渾身の頭突き。
不意打ちの頭突きで竹谷君が目を瞑ったところで布袋の中身を狼に向けてぶちまけた。辺りに粉が舞う。


キャンッ!と痛そうな狼の声が聞こえた。粉は少量。すぐに風で飛ばされる。
ぶちまけたのはちょっと前授業で作った目潰し。
使うことがあるかも、と入れておいて良かった。風下側にいた人にも迷惑を掛けるのではと思い、あまり使いたくなかったが、この状況ではそうも言ってられない。それにごく少量であったためか、特に周りから悲鳴は聞こえなかった。

安心しながらも落ち着いてはいられない。すぐに狼(かみこちゃん)に近づき、ごめんなと小さく言いながら右手で持ち上げてぽいっと枠外に出す。
これでとりあえず一対一。絶望的状況からようやく希望が見えてきた気がする。



反撃開始、なんてどっかの漫画の登場人物みたいな言葉が頭に浮かんだ。






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