ぼっちなう | ナノ




試合開始!という言葉に笛の音。

想像以上にあった周りからの竹谷君への声援。そして狼の凛々とした声が相まって、俺の精神は2秒経たずに粉々に砕け散った。

「よっしゃいくぞ!」

その声を合図に狼と竹谷君が此方に向かってとびだした。
先に狼が飛びついてきたので急いで横に逃げる。それも束の間苦無を持った竹谷君が俺に迫ってくる。すかさずくーこちゃんで受け止めるが後ろから狼の声が聞こえ驚いた俺は身をかがめた。上を見ると狼は案の定先ほどまで俺がいたところに頭突きをかましている。いきなり俺が身をかがめて竹谷君のバランスが少し崩れたが、狼は竹谷君に当たることなくひらりと地面に着地。竹谷君はそのまま後ろに下がって体制を立て直す。
なるほど流石生物委員。動物と息が合っている。


しばらく畳み掛けるような竹谷君たちの戦い方に慣れないまま相手をしたが、どうも相手の攻撃を受け止めることが精一杯で試合の流れが完全にあちらさんに持っていかれているのがありありと分かる。
昨日の傷もどんどん開いてきているようで、このままじゃスタミナ切れでやられる可能性があるな、と思っていた矢先であった。


竹谷君の攻撃をすんでのところで交わしたところで、今まで竹谷君の攻撃の補佐のような行動ばかりとっていた狼が左から大きな口を開けて飛び込んできた。
右側には竹谷君、ちょうど彼を受け流したところの俺はすぐに反応することができなかった。


やばい、


「ガウッ!!」


一瞬で左腕に強い熱が広がった。

目の前で、自分の腕の肘近くが咬まれている。血が飛び散る。


「いッ…!うあ゛っ!!!」


スローモーションの様に宙に浮いている珠のような血の雫を目にしてからやっと、左腕に激痛が走った。




ピンチです




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