輝かしく走り去ってしまった尾浜君の背中を半泣き状態で見送り、俺は善法寺先輩から治療を受けていた。
善法寺先輩曰く、これだけ痺れ薬を塗った武器で切られここまで歩いてこれたのはすごいことらしい。そういえば俺は薬でぶっ倒れたことはあまりないな、と思い、ぼっちの自覚があることはそれだけ自分でなんとかしようという意識が高いものなのか、と感心した。ぼっちすごい。でもなんだろう、負けた気しかしない。
「でも、佐島の薬は辛かっただろ。」
「はあ。あれ、善法寺先輩は佐島君のこと知っているんですか?」
「ああ、あいつは去年保健委員だったから。中々えげつない薬を作る奴だったよ。」
はは、と善法寺先輩は笑っていたが、俺にとっては全く笑えることではない。はは…乾いた笑いを返し、自分はよく生きて帰ってこれたと思った。
薬の耐性は人それぞれなので、俺は強い方なのかと今更に知ることができたが、正直薬にちょっとばかり強いからって特に強みなわけでもなく下手すりゃ囮係になる気がしてぞっとした。というか「自慢できることは?」「薬に少し耐性があります。」っておま。地味にも程があるだろう。なに耐性って。そんなもんあっても毒性が強けりゃ即死ぬわ。馬鹿野郎。つくづく俺は主人公向きではないらしい。
「はい、できたよ。ひどい傷だからとりあえず今日は絶対安静。」
「ありがとうございます。」
部屋まで送ろうか、という先輩の気遣いに感動しながら俺は丁重にそれを断った。忙しそうな先輩の手を借りることは極力人に迷惑を掛けないようにしているぼっちにはできないことである。善法寺先輩優しい。先輩に何か頼まれたらなるべく答えるようにしようと心に誓い立ち上がった。
「夕食は誰かに持ってきてもらいなよ。」
「……はあ。」
早速すみません先輩、それだけは無理です。