ぼっちなう | ナノ




話しかけられて戸惑いまくっていた俺に、存在に気づくどころかなんと俺の苗字まで知っていた尾浜君は肩を貸してくれ、俺を保健テントへ運んでくれた。向かう途中彼は心配してくれたが、超久々に人と触れ合い、痛みを感じないレベルまでに心中でテンションMAXになっていた俺はそれどころじゃなかった。人の体温ってこんなに温かいのか、と思った。感動した。
人から話しかけられた嬉しさと、俺のことを知っている人がいるという事実と、俺に手を差し伸べた彼の優しさに涙腺がひどく緩んだが、この場で泣いてしまったらなんだこいつきめえ、となり尾浜君に引かれると思って必死に耐えた。


テントについたところで俺は地面に敷いてあったござの上に下ろされる。ほぼ倒れこむように座る俺を見て尾浜君は「伊作先輩呼んでくるよ。」と言った。やばい尾浜君やばい優しい。かっこよすぎる。これがモテる男というやつか。久々の人からの直接的な優しさに俺の涙腺はさらに緩まった。耐えろ、耐えるんだ自分!!



それよりも彼になんてお礼を言えばいいのか。既に痛みなんてどこかに吹き飛んだ俺は尾浜君を待っている間、そう興奮したままの脳みそで考えた。
いやありがとう、と言えばよいのだろうが、ここから彼と友達に…、なんて企んでいる下心満載の俺は尾浜君が善法寺先輩を呼んで帰ってきたら何を言おうかと思案する。あ、やばい。多分今俺の顔相当気持ち悪い。



まずはありがとうだな。それから、あれを言って、会話が続けられそうだったら尾浜君は一回戦終わった?と聞いてからの大会話はどうだろう。いいな。よし、これでいこう!


そう考えてぐっと体に力を入れ、入れすぎてすっかり忘れていた傷だらけの体に激痛が走りアイタッとなっているうちに善法寺先輩を連れて尾浜君が帰ってきた。


よし、いうぞ、いうぞ!



「あのおは、「おうい!勘右衛門!!お前の番だぞ!」
「あ、もう俺の番か。ごめん、俺行くな。じゃ、お大事に!」
「!?!?」



そう言って走り出していった尾浜君。
かっこいい。かっこいいが…


「お、お礼…と、俺の明るい脱ぼっち未来…!」


明るい未来も共に走り去ってしまった。ひどい仕打ちである。




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