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さて、私はどうやらいつのまに知らぬ地にいてしかもそこの住人に天女という格付けをされた挙句、なんだかこの場に住むことになりそうな状況になっている。 あの謎の浮遊を体験した私は、なんだかまだ色々話し合いをすることになったからとりあえずしばらくこの部屋にいてくれと言われたので今素直に部屋にいます。えらいなあ。
はっはっは、いやあ忍者だってよ。ここにいる皆さん忍者だってよ。マジっすか。だがそれ以上に私は天女だってよ。あ、ちょうちょ。かわいいなああはは、はああああ…。
もう乾いた笑いと溜め息しかでてこないし、さっきから私の現実逃避ハンパねえっす。うふふ、どないしまっせ。
ん?なんだかバタバタと急いでいる音がする。どこの誰だかは知らないけど廊下は走っちゃいかんのだぜ、まったく。
…あれ、気のせいか足音がすごく近付いて、
バタンッ!
「天女さまっ。」
「ふぎゃえぃっ!!!!」
突然、バンッと襖を開けて大声を上げるもんだからそりゃびびった。 ちょ、少年もうちょい落ち着いて接してくださいよ。私の方が絶対年上なんだからね。日々仕事により体力精神力をやられているストレスに殺されそうな未来の社会人なめんな。めちゃめちゃもろいハートだからね。もっとお婆さん扱うように接してくれなきゃ。
扉を開けた見たことの無い少年が口を開いた。
「あ、あの、学園長先生が貴方をここに住まわせる、と…。」
「へ。」
「とりあえずまた部屋に来るようにと仰せつかっておりますので、行きましょう。」
そして私はまたしても流されながらあの学園長先生とやらの部屋に行くことになったのである。
******
「じゃ、そういうことでおぬしを住まわせるってことにしましたぞ。うん、決定。」
「え。」
そういうことがどういうことなのか分からないがどうも私はここに住んでもいい事になったようだ。 なぜこんな怪しい奴を、と思ったがそれを言った後に考え直されて「やっぱ今のナシ!」となったら私は途方にくれることになるので言わない。
その後の学園長先生の話の内容は、これからこの服を着ろ、と小袖?みたいなとりあえず着物を数着渡され、あと仕事は今度言い渡すからまずはこの学園に慣れなさい、ということで私には数日間、お付きの人と一緒に行動しろ、と言われた。お、お付きの人、だと…。
「あの、本当に、」
「じゃあ天女さま、今日はとりあえず夕飯を食べて、ゆっくりしてください。そこにいる食満留三郎に案内は任せますからの。」
おお少年の名前は食満留三郎というのか…やっぱ珍しい名前、じゃなくて。
「え、あの」
「はい、分かりました。天女さま、こちらにどうぞ。」
「あ、待ってください!あのなぜそんなに敬語を…」
「?そりゃ天女さまだからでしょう。」
「あ、私、そんな敬語されるような偉い人間では、ないので!その、学園長さま?にまで敬語をされるのはちょっと…!」
一瞬食満くんと学園長が目を見開いた。 残念ながらあの謎の空中浮遊をしたことによって自分でも自分が天女ではないと言い切れないのでそこは否定できない。いや、天女になった記憶はもちろんありませんが。とりあえず分かるのはチキンハート私に目上の人からの敬語はちょっと無理だ。例えるならいっつも偉そうな部長からある日突然敬語を使われてる感じである。これは怖い。
「ほっほっほ、おもしろい。天女さまが私より偉くない、と。」
「あ、えっと、」
「分かったぞ。お前さんには敬語はつかわん。そんなに畏まわれてもな。」
「あ、ありがとうございます!」
敬語を止めてくれた学園長に礼を言い、私は行きましょう、と食堂まで道を教えてくれる食満くんについていった。
******
「どう思うかの。先生方。」
「…確かに、害は無さそうですね。それに、」
「浮いたと言うんでしょう?なら本当に天女さまという可能性は高いでしょう。」
「だとしたら、ご無礼のないようにしなければいけないと、」
「しかし本人としては極普通の、少女に見えましたがねえ。ねえ、学園長先生。」
「そうじゃのう…。まあ、どうでるかじゃな。」
「彼女がですか?」
「いや、」
「あやつ、名前と、この学園の生徒が、じゃ。」
………。
「なるほど。」
「とりあえずは警戒をしておけ。が、多分安心じゃろう。まずはなるべくご無礼のないようにせい。」
「はっ。」
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