勇者なう | ナノ


5 まものつかい




「もぐ、んぐ、ぬぐぐ、」


目の前で先ほど渡したきび団子と、これじゃ足りなさそうだと荷物から出した握り飯をバクバクと口に運ぶ少女と魔物。すごい食いっぷりだ。そろそろ喉が渇きそうだと俺は手に持っていた水を渡す。


「あ〜、ありがと!」


そしてぐいぐいと水筒を仰いで、彼女はぷはあと息を吐いた。


「助かった!本当に助かった!ありがとう!」
「いや。もう大丈夫?」
「うん!アタシ、もう二日は食べてなくてさ。お前のおかげ!ありがと!」


ぱあっと輝くような快活な笑みでお礼を言う彼女は、ぼろぼろなのは変わらないがさっきより幾分元気になったようで、ほっとする。

なぜここにいるのかと訊かれ、俺が魔王を倒しに行くのだと返すと、彼女はそうなのかーと空を見上げて言った。何か思うことでもあったのか、彼女は魔王退治、魔王退治…と数回呟く。


「なあ。」
「なに?」
「それ、アタシもついていっていい?」


突然の彼女の発言に驚いた俺はえっと声を漏らす。だって、今、ついていくって、え?
未だ吃驚して言葉を発しない俺に彼女は、自分が一人前の魔物使いになるため武者修行の旅に出ているのだと告げた。魔王退治ともすれば自分の力になるし、食料のお礼としても役に立ちたいのだと言う。その熱心な眼差しや誠実さに俺は胸を打たれ、うんと頷いた。


「ホントか?!」
「いや、むしろ俺の方がいいのか?お礼とはいえ、その、危ないし。」
「ううん、大丈夫!アタシにとっても都合がいいんだ。だから遠慮なんてすんなって。」


いくら仲間がいたら心強いと言えども女の子を魔王退治の道連れにするというのは気が引けたが、やったーと喜んでいる彼女はもう引き下がりそうになかった。

彼女の「そうだ、お前名前は?」という言葉に「アアアア、一応勇者やってます。」と返す。それを聞いた彼女は「勇者!?お前が!?」と驚いていた。ですよね。正直俺が一番驚いてます、はい。


「アタシはハチザエモン。長いからハチでいいよ。魔物使いだけどまだ一匹しか仲間はいないんだ。こいつがそのかみこ。人慣れしてるからアアアアにもすぐ懐くと思うよ。」


そう言ってハチがかみこの頭を撫でる。



「これからよろしくな、アアアア!」
「ああ。よろしく、ハチ。」



鬱蒼と生い茂る森の中、俺たちはがっしりと握手を交わした。






まものつかい の ハチザエモン が なかま に なった !