勇者なう | ナノ


4 そうぐう




旅立ちから2日たち、なかなか魔物の倒し方やら自炊やら野宿やらに慣れてきて、レベルも5は上がったんじゃないの?と思いながらもっしゃもっしゃときび団子を食べながら俺は森の中を歩いていた。


大体、勇者(笑)が魔王を倒しに行こうと決めて魔王が倒せるなら苦労はないし、そもそもそんな魔王だったらとっくのとうに倒されているであろう。大事なことはこれまでに何人も犠牲者が出ていることで、数日前まではほのぼのとゆとり社会で生きてきた俺には向いてないということである。死ぬの嫌すぎる。

初めて魔物から傷を負った時に「やばいコレ!やばいやばいどうすりゃいいの!?薬草!?薬草なの!?」と、かすり傷にパニクりまくった俺の先はまだまだ遠すぎて不安になった。





しばらく歩いていると、突然大きな影が俺に飛びかかってきた。ビビって大剣を取り出す。目の前にいたのは魔物で、中々強そうな奴であった。しかし、その時森の奥から「こらっ!かみこ!」という声が聞こえ、目の前の生物はきゅうんとおとなしくなった。



「悪いっ!ちょっと戦闘続きでさ。カリカリしちまってんだ。」


そう手を合わせて茂みから出てきたのは灰色の髪の毛を一つに結った同い年ぐらいの女の子で、俺は大丈夫と返したものの戸惑いを隠せなかった。


「ええと、大丈夫なのか?随分ぼろぼろだけど。」


ぼろぼろな身なりの彼女に問いかける。戦闘続きということは何度も戦ってきたところであり、傷も多く痛そうだ。


「ああ、全然大丈夫!アタシ丈夫なのが取り柄だからさ!」
「そうな、」


のか、と続ける前に、グギュルルルルという音が辺りに響いた。俺ではない。多分この魔物も違う。


「…………」
「…………」


お互い無言になった。

俺はまだ色恋沙汰とか男女の駆け引きとかそこらへんは経験したことがないのでちょっとこういう時の対処法はよくわからん。これどうすればいいの。触れればいいのか、デリカシー的な意味で触れてはいけないのか。


散々考えた末、俺は一言だけ言った。



「あの、きび団子あるけど、食べる?」






まもの と しょうじょ に そうぐう した !