勇者なう | ナノ


3 たびだち




朝、今日はついに旅立ちの日である。
つい一昨日まで、というか昨日の午前中まではこの村でほのぼのと生きていくことに何の疑いも感じなかったというのに、人生とは本当に何が起こるか分からない。


朝から家に色々な人が来て、持っていきなさい、と様々なものをくれた。村長にいたっては結構な量のお金もくれ、いよいよ俺は後戻りできない。

言えない。昨日の夜ずっとどうすれば勇者回避できるか考えていたなんて言えない。




旅に必要なものはすべてと言ってもいいぐらいに品物は集まった。いや、旅に何が必要なのか俺は知らないけど。たくさんの荷物をなるべくコンパクトにまとめて、俺はあの忌々しい大剣を背に担いだ。中々重みがある。

そういえば貰った物の中で六つはきび団子だった。村の皆は魔王退治をなんだと思っているのか。



訳あって、人様のお家に住ませて貰っている俺は今まで面倒を見てくれたおばさんにお礼を言い、重い大剣とそれ以上に重い魔王を倒すという勇者しか感じ得ることのないプレッシャーを背に町から一歩を踏み出した。





わかれ と たびだち !