勇者なう | ナノ


1 ゆうしゃ の つるぎ




どこにでもあるようなちょっと田舎なこの村。
いつもほのぼのと時が流れるこの村が今日は少しざわついていた。


原因?俺である。


ざわつく村人の中心で、俺は一つの大剣を手に立ち尽くしていた。



ちなみに俺の持つその剣は、村に太古から伝わる<勇者の剣>というシロモノである。




*****




時をさかのぼること遥か30分。

今日はこの村で<剣の日>と呼ばれる日であり、内容は村の17以上の若い男衆が村の中心にある広場のど真ん中に突き刺さっている剣を抜けるか試みる日である。
この剣を抜いた人物は伝説の勇者の生まれ変わりとされ、世界に魔物を量産し続ける魔王を倒すため旅に出なければいけないとかなんとか。


とは聞かされているもののこの行事、明らかに力だめし的行事である。

既に何十年、下手すりゃ何百年、若い男に引っ張られに引っ張られた剣は俺の小さいころに比べて明らかに埋まっている部分が減ってきているし、つい最近村の古い本が沢山置いてあるところで古い本を読んでいたら挿し絵に刃の部分が半分は埋まっている剣が載っていた。

ちなみに今の剣の状態はわずかに先っちょが埋まっているだけの状態である。
どう見ても長年引っ張られてちょっとずつ抜けてきているとしか思えない。勇者とは一体なんなのか。


今年17になり初めてその剣を引っ張ることになった俺は列の始めの方に並んでいた。
前にいた同い年の力のありそうな青年が引っ張り、「ああ畜生、抜けねえ!」と嘆いた後、俺はその剣に手を掛けた。


なるほど固いな、と思いながら力を込めたその瞬間。


ずぽっと剣が抜けた。


反動で後ろに一歩下がったが俺は一瞬何が起こったのか分からなかった。


「え?」


俺が手に持っている初めて全体像を見せたその剣をやっと認識し始めたとき、周りからわっと完成が沸いた。




もう一度言う。

伝説の勇者とはなんなのか。





ゆうしゃ の つるぎ を てにいれた !