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風邪ひいたなう

昨日からなんだか体が怠いし、節々が痛いと思っていたら、就寝中びっくりするくらい寝汗を掻いていて頭痛は既に頭痛のレベルを超えた何かに進化していた今日この頃、つまり起床時間である今、俺は布団の中で絶望していた。

なにが絶望かって俺のいる部屋は学園すべて含んだ長屋の中で一番隅っこ。そして更に一人部屋という部屋が決まった時からぼっちを見せつけられていたといっても過言ではないこの寂しい空間は、俺がいくら熱で苦しもうが、突然ミイラ化しようが、さながらさけるチーズのごとく裂けようが誰にも気づかせないという特技を保持しているのである。そのため、俺は自らの力でこの現状を人に伝えなければならない。畜生誰だよこんな特技こいつに持たせたの。部屋の主に会いに来る友達がいないからだって?そうです俺のせいです。ごめんなさい。


まだ早朝であろうこの時間帯、寝間着で部屋を出てもいいだろうと、どろどろぐちゃぐちゃガッツンガッツンした頭で判断した俺はのそのそと布団をかき分けて障子を開けた。寒い。閉めた。
何やっているんだ。逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめ以下略。と呟きながら冬の外気vs俺で激戦を繰り広げる。繰り広げた末、なんとか勝利した俺はやっとこさ部屋から出、激戦中戦者によって、というか俺によって言葉通り右往左往した障子の冷たい視線を感じながら忍術学園の校医である新野先生のお部屋に向かうことにした。ごめん障子。


**(朝)


新野先生に症状の旨を伝え、授業を休むことを伝えておいてほしいと頼んで、俺は自室に戻ることにした。薬は持ってきてくれるそうな。新野先生は優しい先生です。駄目だ、段々意識が朦朧として小学生みたいな文章になってきている。風邪怖い。

久々の風邪のあまりの辛さに、俺はかの有名なインフル先輩ではないのだろうかと思ったが、考えてみればこの時代にインフル先輩は存在しているのであろうか。よく分からないがとりあえずインフル先輩マジぱねえっすと呟いておいた。マジ尊敬してるんで目をつけないでほしいっす先輩。


そんな感じで自室に戻ってきたが障子に手を掛けたところなぜか開かない。よく見れば左側の方の敷居に昨日吹雪いていた雪が固まっている。なんだこっち開かなかったのか、と思いながら出るときに開けた右側の障子に手を掛けたがこちらも開かない。ぎしっという音がした。どうやら先ほどの何十回何百回にわたる冷気vs俺との激戦によって敷居に塗ってあったろうが削り取られて滑りが半端なく悪くなったらしい。

簡単には俺を通そうとしないというラスボスオーラに満ち溢れている目の前の障子を呆然と見つめながら俺は立ち尽くした。昨日の友は今日の敵。先に手を出したのは俺であったが、風邪をひいている時に限ってこんな仕打ちをするとはなんて非道的な障子なんだ。おまえら人間じゃねえ!!確かに人間じゃなかった。

半泣きになりながら右側の滑りが悪い方のを必死にぎしぎし引っ張って俺はやっと部屋に入り込んだ。


**(昼)


昼頃に善法寺先輩が昼飯と薬を持って部屋に来てくれた。
善法寺先輩は始めに入るよ、と声を掛けてくれたが、障子に手を掛けた後しばらく俺の部屋産の頑固な障子と奮闘していた。本当にごめんなさい。やっと屈強な障子を倒した善法寺先輩はその拍子で水差しを倒し廊下をびしょびしょにして俺におかゆと薬を渡した後ずっと廊下を拭いていた。水も再度持ってきてくれた。相変わらずの不運だったが先輩の優しさにより、既に軽く冷えていたおかゆすら身に沁みた。


**(夕方)


昼間のうちに少し暖かくなったものの、夜にかけまた空気が冷たくなってきた。
寝ることにも飽きた俺がさむいさむいと布団虫になっていたところ、新野先生が夕飯と薬を持ってきてくれた。更にガチガチだった敷居にろうまで塗ってくれて俺の新野先生に対する尊敬度は無限大になった。なんか胸がキュンとした。


**(翌朝)


朝、こーいーしちゃったんだー多分きづいてなあーいでしょおーとガラガラの声でぼそぼそ歌いながらすっかり体が楽になった俺は昨日の新野先生の天使っぷりを思い出しながら障子に手を掛けた。びくともしなかった。あれ?デレないの?というか出れないの?

這いつくばって敷居をよく見てみたところ敷居にはびっちりと氷が詰まっていた。なぜだ。誰がこんな仕打ちをしたんだ。と、そこでふと思い出したのは善法寺先輩だった。そうかあの時倒した水差し。




ぐああああああと声を出し、俺はくーこちゃんよりもツンデレであった障子に全力で土下座した。俺の完敗である。




そんな感じのある一日。
(お見舞いは人っ子一人来ませんでした。)




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