あいえんきえん、 | ナノ


  休日にて1


今日は休日。

天気は快晴。少し日差しが強いくらいだ。絶好の買い物日和である。

ということで、久々に母から休んでてもいいよと言われた私は女の子らしく買い物でもしようと思い街をぶらついている。


ぶらぶら歩きながら何を買おうかと考えていると、すぐそこに見慣れないお団子屋さんの旗が目に留まった。そういえば少し前、美味しいお団子屋さんが出来たとか常連さんが話していたな。此処だったのか。
丁度小腹も空いてきたしお茶にでもしようか、と思い店のお姉さんにみたらし団子二つを頼み、座った。


人がいっぱい通ってるなーとどうでもいい事を考えながら、予想以上に美味しかった団子をムシャムシャ食べていると、見覚えのある顔が道を通るのが見えた。

ツヤツヤで少し癖のある黒髪。
溢れ出る優等生オーラ。

祝日の彼である。おぉ、こんなところで見かけるとは。

彼の隣にはもう一人、彼と同じくらいの男の人がいた。ふわふわの茶色の髪の毛をした、なんだか柔和そうな人だ。
なんとなく彼らを見ていると、ふと、祝日の彼の視線がこちらに向かった。

ビクッ、と少し驚きつつ焦った。団子をムシャムシャ食べているところをを見られたのだ。乙女としては少し恥ずべきことである。
私が目を逸らすか挨拶をするべきかと迷っている内に祝日の彼は此方に向かってずんずんと歩いてきた。え、なんで?

この団子屋に友人でもいるのかとキョロキョロと周りを見渡したが、祝日の彼は私の前で足を止めた。一緒にいたふわふわの方も彼を追って私の前に来る。


「こんにちは。」
「えあ、あ、こんにちは…。」


随分と唐突な挨拶である。ていうか本当に私だったのか。


「あの、今日はお店、開いてないんでしょうか…?」
「え?」
「この道の先にある豆腐屋の方ですよね?」


そう言いながら彼はうちの店の方向を指差した。
…あぁ、そうか。私がいたから店が開いてないのかと思ったのか。基本休日は手伝っているからなあ。


「いえ、今日もやってますよ。私は今日、お休みなんです。」
「ああ、そうなんですか。よかった。」


祝日の彼は心底ホッとした顔で言った。そんなにうちの豆腐を買いたかったのか。店の娘としては喜ばしい限りである。
そう思っていると、せっかくだから食べていく?とふわふわさん(先程命名)があだ名の通りふわふわした笑顔で祝日の彼に提案した。
え、ここで?

祝日の彼は、ああ、いいな、とあっさり承諾しさっさとお団子を頼んでいる。行動はやっ。


「隣り、いいですか?」
「あ、どうぞ。」


彼ら二人が座れるように端につめると、祝日の彼が私の隣に座った。そのまた横を見たらふわふわさんがメニューを見てうーんうーんと悩んでいた。まあこのお店、美味しかったからな。悩んじゃうよなぁ。

そう思い、これが美味しかったですよ、とふわふわさんにさっき食べた団子を進めてみた。


「そういえば、いきなり話しかけてしまってすみません。」
「え、いやいや。」
「そうだよー。いきなり進路変更するから吃驚したよ。」
「いや、あそこの豆腐屋が開いてないのかと思って…。良かったよ開いてて。」
「兵助はそこのお豆腐屋さん好きだって行ってたもんね。」
「え。」


そうなのか。
祝日に必ず買いに来ていたので少なからず気に入ってくれているとは思っていたが、面と向かって豆腐を好き、と言ってもらえるなんて。店の娘としては嬉しいもんだなぁ。


「あの、ありがとうございます。」


ペコリ、と彼の方にお辞儀をする。


「いや、此方こそ。いつも有難う御座います。」
「今日は僕も行こうと思ってたんですよ。」
「そうなんですか。嬉しいです!」


ご友人まで連れてきてくださるとは!祝日の彼はいい人だ!たった今私の中のいい人リストに追加された。

その後三人で少し談笑しているとふと、ふわふわさんが言った。


「そういえばお名前きいていませんでしたよね。訊いてもいいですか?」
「あ、はい。名前と申します。」
「僕は不破雷蔵、です。よろしくお願いします、名前さん。」
「久々知兵助です。宜しくお願いします。」
「はい、よろしくお願いします。」


ふわふわさんの本名はまさかの命名したものピッタリだった。私のあだ名センスは中々いいんじゃないんだろうか。

しかし祝日の彼が「久々知」さんかぁ。考えてみれば私はかれこれ半年は彼の名前を知らなかったのだ。少し新鮮な感じである。
少しばかりじーんと感動していると久々知さんが、さて、と立ち上がった。


「そろそろ探しに行かないと。」
「? 何か探しているんですか?」
「いや、ちょっと人を…。」
「ふらり、と離れてしまってですね…まったく何処いったんだか、三郎。」


不破さんが心底呆れたように言った。
それにしても自由な人なのだろうか、その三郎さんは。ふらりといなくなるなんて。


「はぁ、頑張ってくださいね…。」
「あ!名前さんも僕と同じ顔を見かけたら声かけてくださいね!僕達が探してるって!」


不破さんが自身の顔を指差して言う。なんだかその仕草もかわいく見えて少し笑ってしまう。さすがふわふわさんだ。


「では、名前さん。また。」
「あ、はい。また。ご友人、早く見つかるといいですね。」
「ありがとうございます。」


そういって二人と別れた。





……ん?同じ顔?





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