あいえんきえん、 | ナノ


  笑顔くん




「えーと、絹と木綿2丁ずつと…。」


今日は祝日なのに珍しく祝日の彼が来ないな、と思っていたら丁度彼と同じくらいの年の男の子がいらっしゃった。初めて見る顔だ。祝日の彼はツヤツヤの黒髪だが、目の前の彼の灰色の髪の毛はぼっさぼさで、The・男の子といった感じである。なんか、何事にも全力投球!みたいな。分かるだろうか。
考えてみれば、本当に祝日の彼は男の子なのだろうか。よく知らないが普通はこの彼ぐらいが年頃の男の子というものなんじゃないか?私は自分よりも数倍は整った容姿を思い出しちょっとへこんだ。


「寄せ豆腐と、えーと…。」
「?まだ買われるんでしたら、こちらの新商品がオススメですよ。」
「あじゃあそれも三丁!」
「…随分買われますねえ。」


彼は先程から既に結構な量を選んでいたが、まだ悩んでいたようだ。私が父自慢の新作を進めたら、それも三丁も買ってくださるようだし、これは貴重なお客様だ。これ程買うのはそれこそ祝日の彼くらいである。すごいな。若者で豆腐流行ってるのか?それだったら喜ばしいことこの上ないが。
私が感心していると、彼は人懐っこい笑顔で答えてくれた。


「あぁ、知り合いがちょっと寝込んじまってて…。そいつがすげー豆腐好きな奴なんですけど…、っとはい御代。」
「はい、丁度頂きました。そうなんですか。珍しいですねぇ。今時の方で豆腐好きなんて。」
「そうすか?オレも結構好きなほうですけど。」
「はは…ありがとうございます。ぜひご贔屓に。」


笑って言うと彼はまた人懐っこそうな笑顔で笑ってくれた。

なんでもその彼の友人が怪我をしてしまったそうで、起き上がれないから豆腐を買ってきてほしいと泣きつかれたとか。なんだその友人すごいな。
人が良さそうな彼だからきっと断れなかったんだろうな、と思って微笑ましくなった。


「じゃ、ありがとーございました!」
「はい。ありがとうございました。ぜひまたご来店ください。」


彼によると友人はよくうちにも来ているとのこと。今度はその友人と一緒に来る、と言ってくださった。
もしかしたらその友人が祝日の彼だったりして、なんてちょっと想像してみる。もしそうだったらなんだかんだ仲良くやっていきそうなコンビだなぁ。


そんなことを考えながら、私は今日も店番に精を出すのだ。





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