あいえんきえん、 | ナノ


  山菜、薬草、忍者さん


山菜取り。
誰もが一度はやったことがあるだろうそれを私は今日、母に頼まれ一人で行っていた。

…のだが。

「あ、あわわわわわわ。えらいこっちゃ…!」



目の前に黒い服を来た人が倒れている。見たところ忍者のようで、先ほど私の目の前に木の上から落ちてきた。


「い、てて、」
「あの、大丈夫でしょうか?」


忍者なのでもしかしたら自分は危ないのではないのかと思ったが、痛そうだったので一応声を掛けてみる。それに悪い人だったら今更逃げてもあまり意味がない気がした。私は予想以上にあきらめが早いのかもしれない。

痛そうだ、と心配していると男の人がバッと体を起こした。

そのままきょろきょろとあたりを見渡し、ふう、と息をつく。


「あ、あの、」
「うわあああああああああ!」
「ほわあああああああああ!?」


いきなり大声を出されてこっちも吃驚して大声を出してしまった。

二人で大声を出した後に少しの間。ぽかーんとした自分が彼の目に映った。ちなみに彼にもぽかーんとした自分自身が私の目に映っていることだろう。


「あ、すみません。気付かなくて…」
「き、気付かな…あっいやいや。その、大丈夫でしょうか?どこか強く打ちつけてしまったりしてませんでしょうか?」
「大丈夫です。」
「そうですか、良かった。」


ほっとして胸をなでおろすと、彼が口を開いた。


「あの、なぜ逃げないんですか?」
「え?」
「いえ、忍者の格好をしている人間がいたら逃げるのが普通だと思いまして。」
「あ、ああ。」


そうか、確かに自分でもそう思うなあ、と思い私は痛そうでしたので、と答える。


「それに、私足が遅くて…多分怖い人だったらすぐ捕まっちゃいます。」


はは、と笑うと彼は呆れた顔をした。


「あなたが危ない目に合うかもしれないんですよ。」
「そうですね。だから私、あなたが怖い人でなくてとっても良かったです。」
「……」

「あ、そうだ!これ、どうぞ!」


ふ、と思い出してざるの中から一つの草を取り出す。折角だからと摘んでおいたものである。


「これは?」
「えっと、この草、たしか打ち身に効くんですよ。」


名前…ソクズだったけな?と思いながら彼にその草を渡した。


「…ありがとうございます。えっと、」
「あ、苗字といいます。あなたは…?」
「諸泉尊奈門です。苗字さん、その、今私がここにいたことをなるべく口外しないで頂きたいんですが。」
「はい、諸泉さん。分かりました。」


忍者にも色々あるんだろう。大変だなあ、と思いながら彼に返事をした。


「すみません。」
「お気になさらないでください。困ったときはお互い様です!」


申し訳なさそうに言う彼にそういうと初めて諸泉さんが軽く笑った。笑った顔が可愛らしかったから、意外と自分と歳が近いのかもしれない。
その時がさがさ、と草をかき分ける音が聞こえた。誰かもまた山菜を取りに来たのだろうか。

音が近づいてきてすぐに、私たちから見て左側の前の方の草がかき分けられ、一人の男の子が現れた。


「あ、あれ?」


なんだか見覚えがある。そうだ、確か、ちょっと前友人の代わりにお店に来た、


「あ、あなたは!苗字豆腐屋の!」




笑顔くんだ。



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