SOMYと拳銃





「うぐッ」


がわさんが壁に勢い良く背中と頭をぶつけた。
そしてそのまま重力によって床に崩れ落ちる。


「がわ・・・ッ!!」


床に崩れたがわさんを心配して叫ぶ雛志。

ぶつけた背中が痛いんだろう。
顔を歪めてこっちを見てきた。
意識がハッキリしてないのか、目がぼんやりと霞んでる。
多分視点が合わず、良く見えていない。

見ていればがわさんの腕に血が流れている。
本人が気がついて手で抑えたが、抑えている手からはって血は出てくる一方。


いつもは真っ白いヘッドフォンは赤黒く汚れていた。



「・・・あ、ネクタイに血がついてる」



暑い時以外はつけていた学校指定のネクタイ。
今では返り血のついたネクタイになって汚い。

私はネクタイを外して適当に捨てる。
その近くには私が壊した自分のヘッドフォン。



―――ッ!!



ズキッと突然の脇腹に痛み。
今の動作が駄目だったのか、元より動いたのが駄目だったのか。
先程雛志ににやられた傷が思ったより深かったらしい。

立つのさえ苦しくてしゃがみ込む。
額には脂汗がにじみ出てきているのが自分でも解る。


ガタガタッと音がしたのでしゃがみながらも目だけを向ける。
私が痛みで苦しんでいるうちの雛志ががわさんを庇うように前に立っていた。
青いヘッドフォンをつける雛志の目には涙が浮かべられてる。


「何で犯人が隊長なのさッ!何で・・・ッ!」

「・・・、だから隊長じゃないんだけど」


痛みはまだあるけどゆっくりと立ち上がる。

迷う様子も無く、拳銃を向ける。
拳銃を向けられた雛志は引く気が無いらしい。


「思えば最初から変だったよ!証拠だって中途半端だったし・・・」
「私が現場調査の時に証拠隠滅してたからね」




銃声が1回鳴り響く。




目の前でドサッと倒れる音がした。
音がしたものから血が広がっていく。

意識がハッキリしてなかったがわさん。
雛志が倒れたのを見て顔が青ざめていた。

倒れた雛志に向かって何度も何度も呼ぶ。
何度も何度も、目に涙を浮かべて声が嗄れるというぐらい。
雛志は返事をするどころか指1つ動きはしない。
その時間に傷口からは血が流れる。

雛志に叫び呼んでいたがわさんがキッと私を睨んだ。


「…嘘をッ、嘘を言ってたんだね」


がわさんが立ち上がろうと足に力を入れる。
腕や手には傷がいっぱいつき力を入れることすら痛みが走るだろうに。



「だって毎日がエイプリルフールだもの、って」


いつも言ってるでしょ




また銃声が響いた。




ふぅっと一息つく。

耳に廊下からは足音が聞こえた。



ドアがバンッと開いて夢汰が教室内を見渡す。
もちろん耳には赤いヘッドフォン。

目を見開いて状況を見る夢汰。
私の手には拳銃が握られて雛志とがわさんが血まみれで倒れている。


「やっぱり母さんだったんだ」
「・・・もう少し早く解ったら良かったのに」


この2人も助かったかもね。
倒れている2人を見下す。


とある教室
夕日が差し込みオレンジ色が教室内に広がる。

教室内には夢汰と自分の血と返り血のついた私。
そして傷と血だらけの雛志とがわさんが倒れている。
最悪な風景が作られている。


「仲間だと思ってたのに・・・ッ!」


「仲間?私は最初っから仲間だと思ってないし」



「ちょ、カット!カーットッ!」


私と夢汰とは違う声。
しかも大きな声で言われて夢汰と私の動きがピタッと止まった

緊張がブチッと途切れ、近くの机に座って深い深呼吸をする。
夢汰も椅子に座って大声がした方を向く。


夢汰「今ので駄目なんですか?」
紅夜「完璧じゃんよ」

悠「えー、何でー?」
がわこ「監督ー。倒れる役も大変なんですよー」


倒れていた雛志とがわさんがケロっと顔を上げる。
よっこらっと起き上がる2人。
腕や顔、銃で撃たれたとされているところには血糊が付きまくっている。


「いやー、大月さんがねー」

がわこ「かーさーん」
紅夜「え、何?台詞間違えた?」

「台詞は完璧だよ。表情がどやってしてたから、そこは白眼視な感じね」


白眼視って何?文系嫌いな私には知らない言葉。
文系の雛志の方を向くと待ってましたとばかりに人差し指を立てていた。


悠「説明しょう!白眼視とは人を冷たい目で見ること。また、人を憎み、冷たく扱うことなのだよ」

がわこ「悠ちゃんが頭良く見える」
夢汰「凄・・・ッ」



遅れまして、こんにちは。
血糊べったりな大月紅夜です。


今回の仕事。


前回の赤ちゃんの世話などによって、この高校ではSOMYレンジャーがあるという事を聞きつけた何処かの監督。

校長に「是非とも!SOMYレンジャーの映画をッ!」って事で「学校の評判も良くなるんじゃね?」っと言う校長の考えで強制的に映画の撮影をやらされている。
もう帰りたい。


がわこ「白眼視だなんてかーさんそのものじゃないか」
紅夜「この野郎」


どういう意味だ言うとそのまんまだよっと言い返された。
そんなことないでしょ。


悠「倒れているとどや顔なのかも解らない」
夢汰「そういえばどやってしてたような」
「大月さん、何思って演技してる?」
紅夜「“私は仲間じゃなくて家族って思ってるわ”って思ってた」
がわこ「ダウトー!」
紅夜「焼き鳥食べたいって思ってたの」
夢汰「おま、ちょ」

夢汰「カット前の台詞で母さん笑ったよね」
紅夜「夢汰を見ると笑っちゃうんだよ」
夢汰「おい」


もう1回やり直しです














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