SOMYと双子



いくつかの仮定から始める。
決められた一般的・普遍的な前提から結論をすすめる。
それで得られる定理のみからなる体系を研究する学問。


そう、只今数学の授業中。
あ、知らねーよって話だよな。


こんにちは、大月紅夜です。
すっごく眠くてハゲそうだわ。


数学が好きな私は問題を解き終わった。
だから寝るか寝ないか頭の中でフル回転中。
今の眠気が尋常じゃねぇわ。


周りを見ると雛志とがわさんは真剣にプリントに絵を描き込んでいた。
多分プリントいっぱいに落書きがされてる。
数学苦手だから以前にやる気力から現実逃避を始めている。


同じ数学苦手でも夢汰はちゃんとやっていた。
理解をすれば苦手ということが無くなり好きな問題だってある。
落書きもしていたがちゃんとやっていた。


紅夜「(…寝るしかない)」


私の前に座る大崎だって寝てるんだ。
コイツ、机に伏せないで寝てやがるぞ。
椅子から落ちればいいのに。



私が寝ようと机に伏せた瞬間。

タイミングを見計らったかの様に放送の電源が点いた音がした。



《3年A組の大月紅夜、長門夢汰、雛志悠、塩宮がわこ。至急応接室に―――》



悠「・・・」
夢汰「お呼び出し・・・?」
がわこ「ちょ、ウチまだ描き終わってない」
紅夜「(…寝れなかった)」



《なお、ヘッドフォンを持参するように》



あぁ、これはSOMY絡みのことだ。

数学の教師の顔を見れば苦笑い。
そして「静かに行きなさい」っと言われる。

面倒だという感情を顔に出しながらゆっくり席を立ち上がる。
周りの生徒から「何やらかしたんだよ」っと言われる。
SOMYだよ、多分。


夢汰「ヘッドフォン持ってね」
紅夜「SOMYなぁ・・・」
がわこ「司令官しっかり!ウチのヘッドフォン何処だろう」
悠「よっしゃぁぁぁぁぁ!行こう!」


雛志が何故そんなに行く気満々なのかは謎。
廊下に出れば猛ダッシュしだした。
授業中に抜け出すのでテンションが上がってるのか?
さっき数学教師に静かにと言われたばかりなのだが。


急に走りだした雛志に驚いて硬直する夢汰。
声をかければハッ、と意識を取り戻してヘッドフォンを持つ。

相変わらず前で大崎が寝てるので消しゴムを投げ、雛志を追いかける。



悠「ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」


がわこ「ちょ、授業中なんだから静かに走ろうよ!」
夢汰「走るのは確定なんだ」
紅夜「ねぇ、応接室って何処」
夢汰「方向音痴か」
紅夜「そうですけど」
悠「階段下りるんだよね?下りるんだよね?」
がわこ「合ってるから!」
紅夜「まったく何で地図無いのか」
夢汰「地図あっても読めないでしょ」


3年目になる校舎にも未だに慣れていない。
きっと1人で行動するば道に迷うのだろう。
だから校内での別行動任務では指令にまわって動かない。
動いたら迷ってるだけだし!


がわこ「待ってよー」
紅夜「がわさんが待ってだって」
悠「頑張れー」
夢汰「何でそんなに慎重なの」


階段を下り始めてからがわさんが遅くなった。
落ちるとでも思っているのか、超慎重に1歩1歩。
階段の下りになるといつもこの様子。

私と夢汰が軽やかにダダダダッと階段を下っていく。


悠「急がないと私の足が滑って蹴るかも」
がわこ「おま、はぁ・・・?!」


がわさんの後ろで仁王立ちしている雛志。
逆光で無駄にかっこよく見える。
落とすぞと言うように蹴る素振りを見せる。

がわさんがほんの少しだけ早くなった。
でも本当に少しなので雛志が背中を押す。
わあああああっと大声を出し、パニックになりながらも階段を下りてくる。


階段を下り終われば心臓を抑えている。
がわさんの動機が止まらないらしい。
あら大変。


紅夜「やぁがわさん」
夢汰「遅いよー」
悠「最近の若者はグータラグータラしてるからー」


既にヘッドフォン装着済みの3人。
応接室の前にスタンバイしている状態。
一応SOMYとして、仕事だと思えばヘッドフォンをする。
多分、初任務となるだろうし。


がわこ「ウチだって頑張ったんだよ!」
紅夜「お疲れ」
夢汰「そうだね」
悠「乙」


がわこ「何なのさ・・・!」
紅夜「司令官ですから」
夢汰「レッドです」
悠「無敵過ぎるブルーだよ」
夢汰「え、ブルーが無敵なの?」
紅夜「寧ろ司令官の私が無敵だろ」

がわこ「はい、準備OKですー」


がわさんがヘッドフォンを装着したのを確認し、応接室のドアを開ける。


「うーぅー」

「うー、あっ!」


何か見えた。
唖然としていると、直ぐに雛志がドアを閉めた。


夢汰「・・・」
がわこ「・・・」

紅夜「今さ」
悠「気のせいだよ隊長。疲れているんだよ隊長」
がわこ「うーぅって言ってたね。可愛かったね」
夢汰「何か一緒に校長も居たけどね」
悠「気のせいだって、疲れてるんだって。しょうがない、今日は仕事諦めて授業行こうか」


雛志が背中をグイグイ押して来た道を戻ろうとする。
いつもなら仕事しようと言う雛志。
どうやらこの仕事をしたくないらしい。


夢汰「初任務かもよ?」
悠「気のせいだよ」
がわこ「え、入らないの?」
悠「開けてはならぬ」



「早く入りたまえ」



背中を向けていた方から声がしたのでゆっくりと振り返れば校長が居た。

もう一度入れと言われて、部屋に入る。


「ぅうー」
「あぃ!」


「君たちには放課後までこの2人の世話を頼む」
悠「嫌です」


一列に並んだSOMYレンジャーの中で即答した。
がわさんがキョトンっとした顔から口を押さえて笑いを堪えた。


夢汰「雛志が嫌がるなんて珍しいね」
悠「私子供苦手なんだよ」
紅夜「だからか」
がわこ「可愛いのに」
夢汰「初仕事だよ?」
悠「仕事したくない」


それはいつも私が言ってることじゃないか。
雛志の顔はホントにマジ。

校長に訴える。
校長は仕事があるので依頼を引き受けて欲しいらしい。


地団駄を踏む雛志の足に赤ん坊がしがみついた。
雛志を見上げ、遊んでとばかりの笑顔。



悠「助けてええええええええええええ」


がわこ「あっはははは」
夢汰「誰も助けない」

紅夜「・・・歩くの?って事は1歳はなってるんだ。でも安定してないね」
校長「流石司令官。もうすぐ2歳になるそうだ」

がわこ「何で解るの?」
紅夜「伊達に弟と妹居ないから」

夢汰「あれ、オレ妹居るのに」
がわこ「ウチも妹居るのに!!」
悠「私末っ子だもの」


初依頼。
双子の世話を放課後まで受けた。













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