おはようございます。
今日は遅刻をしないで来た長門夢汰です。
紅夜「あー、でも――――・・・」
悠「ここは―――・・・」
只今ですね、3年昇降口にいます。
そこにはオレと母さんと雛志の3人。
2人は1つの下駄箱の前で普段の何倍も真剣に考えている。
もう考え始めて10分ぐらい。
夢汰「やめるって選択肢は?」
紅夜「無い」
悠「無いよッ!」
揃えて言われた。
まぁ頑張ってっと言って携帯をいじる。
そしてつぶやく、「昇降口なう」
今この場には塩宮が居ない。
夢汰「塩宮もねぇ・・・」
紅夜「遅刻だなんてしてくれちゃうからさ」
悠「だからこういうフラグが立つんだよねぇ」
夢汰「仕掛けなくても・・・」
オレが言った仕掛けるという事。
それは、塩宮の下駄箱に2人が悪戯を仕掛けるということ。
塩宮が寝坊をしたらしく、1つ遅い電車でくるという情報を貰った。
情報はどこから、って。
まぁ、つぶやけるサイト様だよね。
それを聞いた人が直ぐに下駄箱に向かい、今こうなっている。
夢汰「前は上履きを逆にしただけだよね」
紅夜「時間無かったからな」
悠「そうそう」
紅夜「だからレベルアップしないと」
悠「次の世代にね、私らもね」
変に頭を使う人ら。
悪戯に関してだといつもより何倍にも頭が冴えるんだろうけど。
朝から昇降口を通る他の生徒に変な目を向けられていた。
こっち見んな!
紅夜「急がないと次の電車で来るから」
悠「でも思いつかない」
夢汰「だから辞めようよ」
それは出来ないっと難しい顔をしてまで仕掛けを考える。
色々と案を出すがどれも納得が出来ないと没になる。
そして次の案をまた考えていた。
大崎「何してんだ?」
紅夜「・・・誰だっけ」
悠「隊長、坂口くんだよ」
紅夜「どうも、坂口くん」
夢汰「あら、こんにちは坂口くん」
紅夜「アホ、大崎だよ」
大崎「俺、無駄に傷ついた」
心臓を抑えてグラッとする大崎。
あらそうっと流されるだけだった。
大崎に構ってる暇の無い2人は悪戯に戻るだけ。
オレは携帯をいじるだけ。
大崎「・・・お前ら冷たい」
夢汰「それで、何で居るの」
大崎「お前らこそ何してんだよ」
紅夜「え、がわさん待ってるの」
悠「うん、心優しいからね」
大崎「お前らそういう奴じゃないだろ」
それもそれで酷いとは思うけど。
どうやらお見通しらしい。
どうせ元々知っていたんだろう。
出版委員長だし、情報好きだし。
悠「ちょっとお茶目をね」
紅夜「出来心なの」
大崎「仕事しろよ」
紅夜「余計なお世話だ」
夢汰「仕事がないの」
悠「そして出来上がったのがコチラ」
大崎「どこの3分クッキングだよ」
こんな感じにっと言いながら塩宮の下駄箱を開ける。
夢汰「あれ、オレが見てないときに何した」
紅夜「アポー」
塩宮の下駄箱にはリンゴが入っていた。
どこから持ってきたのかは知らないけど本物の林檎だった。
上履きを奥に押し込んで下駄箱を開いたらリンゴが目に付く。
しかも1つじゃなく、大量に。
落ちてくることがないぐらい、ギチギチに。
悠「なんとこのリンゴ、今なら100円を切るお値段」
紅夜「しかも1つ買うと3つオマケがついてきますッ!」
悠「お値段変わらずお得感ッ」
通信販売で覚えたとしか思えないこの口調。
オレが大崎の方を見れば意外に真面目な顔をして考えていた。
え、この場面で何を考えてるの。
まさか悪戯に参戦?
大崎「林檎売ってんの?」
わぁお!
コイツ馬鹿だ!
まさかの自体に雛志と母さんが硬直。
大崎は冗談ではなく、本気だよ。
だって目が本気だから。
大崎「早弁用の弁当忘れちゃったからなぁ、腹減りそうだし…」
夢汰「ねぇ、マジだよこの人」
大崎「え、何が?」
夢汰「何でも無いよ」
目を逸らす。
ダメだ、ホントにマジだ。
大崎は気にせず林檎を買おうか迷っていた。
紅夜「純情路線だ・・・」
悠「・・・虐めてはいけない国の人だよ」
2人は塩宮の下駄箱から離れていく。
顔を俯かせてフラッと壁にもたれ掛かる。
大崎「どうしたのコイツら」
夢汰「なんだろうね」
悠「アヒャヒャヒァヒャ(゚∀゚)」
紅夜「ああああああああああ」
悠「_(:3 」 ∠)_」
紅夜「(:D)rz」
奇声を出しながら林檎を壁に投げた。
塩宮の下駄箱に入っていた林檎を全部。
そしてそのまま床に崩れ落ちる。
自分の汚れが浮き彫りになったんだろう。
塩宮は虐めていいタイプ。
真に受ける大崎には何言っても効かないだろう。
冗談として受け取ってくれる時もあるが、本気にする時もある。
大崎「何でダメージ受けてんの」
夢汰「・・・ピュアの対応が解らないんだよ」
そう言うと大崎は顔をキョトンッとさせた。
そうだよね、解らないよね。
ピュアさは天然ものだもんね。
オレらには無いスキルだよ。
多分、塩宮が真に受けたらそのまま茶化す。
だけどそれ以外は慣れてない。
がわこ「あれ、何してんの」
遅刻して登校してきた塩宮。
昇降口に揃っているオレらを見て不思議そうな顔をした。
夢汰「あ、おはよー」
大崎「どーもー」
がわこ「あら、大崎だ」
普段通りに靴を履き返る塩宮。
今まで何があって、その下駄箱が無事なのか何も知らない。
夢汰「塩宮が普段通りなのは大崎のおかげなんだよ」
がわこ「は?」
夢汰「お礼言っときなさい」
がわこ「え、ありがとうございます?」
大崎「いえいえ?」
靴を履き替えながらお礼を言う。
何なのかサッパリ分かっていないんだろう。
下駄箱を過ぎれば床に飛び散った林檎。
その近くでダメージを受けている2人が見えた。