君しか、
轟くんとお付き合いを初めてしばらく経った頃。デートに夢の国とか行ってみたいねと2人で1つの携帯を覗き込んでいた。轟くんは行ったことがないらしい!
いつか轟くんと耳とかつけちゃってあの世界観に溶け込んで写真を撮ったり食べ歩いたり、シンデレラ城前でライトアップを見ながらちょっとイチャついたり・・・そんな妄想をして張り切っていた時もありました。

「じゃあこの班割でいこう!」
「いいんちょー!!班割とか小学生みたいじゃん!グループって言って!」
「迷子防止やみんなで来た感を出すには班割も悪くないかもね・・・単独行動して集合時間に戻ってこない人とか帰っちゃう人とかいるだろうし・・・」
「あぁ?!何見てんだテメェ殺すぞ!」

「・・・違う班になっちまったな」
「仕方ないよ・・・くじ運がなかったから・・・」

コソッと耳打ちをする轟くんに、あんまりガッカリ感を出さないようににへらと笑った。


轟くん初の夢の国デビューは、わたしと2人ではなくクラスのみんなとでした・・・。
事の発端は女子が夢の国にクラスの女子で行きたいねという所から始まり、上鳴がウェイウェイして参加したがり最終的にみんなで行くって形になった。あの爆豪くんとか絶対来ないじゃんと思ってたのになんか丸め込またのか騙されたのか知らないけど集合場所にいたから目がとび出そうになった。
21人の大所帯ではアトラクションも移動も大変だしそれぞれ行きたいところもあるだろうということで班割(班割て・・・)することになり、揉めないように百ちゃんがくじを作ってくれていくつかのグループに別れた。
くじを引く時に轟くんと一緒になれるようめちゃくちゃ神頼みしたし、わたしがくじを引く時の轟くんの期待した目に答えるために全私の力が総動員したというのに、結果は惨敗。しかも爆豪くんと同じグループになって雲行き怪しい。爆豪くんの手綱を握る人このグループいないな・・・終わった・・・。
じゃあ夕方にはここに集合だ!という委員長の掛け声を尻目に、轟くんをみる。どうやら百ちゃんと同じグループだったらしい。百ちゃんも来たことがなかったみたいで、2人でパンフレットを覗いてお話をしている。

「・・・」
「オイ」
「・・・」
「オイ愚図!さっさと行くぞ!」
「え?わたし?っあ!歩きます!ちゃんと歩きますから!!」
パンフレットを見ている2人を見ていたらもう出発することになっていたらしい。いつまでも動かないわたしを爆殺卿が爆殺卿たる顔でわたしの首根っこを掴み引き摺り始めた。この日のために下ろしたおニューの服の襟も伸びるしおニューのミュールも傷つくからやめて!



結論から言うと爆豪くんは意外とちゃんと班行動出来ていた。最初のミミ購入の時はブチ切れててとんでもなかったけどその後はアトラクション並ぶのも大人しく並んでるし誰かが食べ物買うのに並んでもそれを待てていた。

「爆豪くんポップコーン食べる?」
「あ?何味だよ」
「ここはキャラメルみたい」
「んなくそ甘ぇの食えるか」
「じゃあ・・・あ、ここブラックペッパー味あるみたいだよ」
「どこだよ」

ポップコーンの味を調べるために携帯を開いて検索するとすぐ出てきた。場所の確認のために爆豪くんも一緒に覗き込んでくる。
ブラックペッパーとかカレーとか色々な味があるからいいよね。でもひとつは多いから半分ことか出来ると色々食べられるんだけど。・・・轟くんは何味食べてるのかな。

「ここ。少し歩いたらあるみたいだ、よ・・・」
「そーかよ」

顔を上げたら意外と近くに爆豪くんの顔があってびっくり。爆豪くんも黙ってたらかっこいいからこんなに近かったら緊張しちゃう。

「先いく?ポップコーン買って待っててくれたらわたし追いかけるよ。ここもう少しかかりそうだし」
「あ?じゃ、そーするわ」
「うん・・・あ、爆豪くん靴紐解けそう。」

爆豪くんはわたしのその言葉に自分の靴を見て、舌打ちをしながらしゃがみこんで結び直している。ポップコーンを買って爆豪くんを追いかけたら次は近くのアトラクションでも並ぼうかな・・・

「ねぇ、あの2人カップルかな?」
「え?あ!美男美女でお似合いだね・・・!彼氏もめちゃくちゃかっこいいし彼女もスラッとしてて絵になる〜!」

その言葉にふと視線を上げると、ミミをつけた女の子2人がカップルを見続けていた。その2人の視線のさきを追って、おわなきゃ良かったと後悔する。
お似合いと言われていたのは轟くんと百ちゃんだった。
2人はミミを付けて楽しそうに話しながら近くの別のフードの列に並んでいる。

たしかに、誰から見てもお似合いだった。もちろん、私から見ても。
2人とも本当に美男美女。百ちゃんを見てから自分を見下ろした。
可愛いと思って、可愛いと思われたくて買ったおニューの服もなんか可愛く見えない。胸はないし身長も小さい。靴だって服に合わせたからか靴擦れしちゃってる。
顔だって百ちゃんみたいに可愛くない。わたし、何にもいい所ない。
なんで轟くんわたしとお付き合いしてるんだろう。わたしのどこが好きなんだろう。

・・・というかわたしとお付き合いしてるのにあんなに楽しそうに他の女の子と回って。
距離だって近いし。そりゃ轟くんだって、男の子だもん、可愛い子とランド回れたら嬉しいよね。
別に、私じゃなくたって、

「オイ」
「・・・」
「オイバカ女!!」
「ヒッ!わ、わたし!?」
「テメェ以外誰がいんだ殺すぞ!」

ぼーっと轟くんたちの方を見ていたら耳元で爆豪くんが声を張り上げた。声まで爆発してる、この個性・・・。
爆豪くんは眉間のシワをそのままに言葉を続けた。

「なにシケた面してんだキメェ」
「えっ酷・・・」
「ヒーロー志望だろうが!!こんなんで傷ついてんじゃねぇ!」
「横暴・・・」

いや横暴すぎるよ爆豪くん。ディスりが挨拶がわりでも今の私には割と響くよ。ちょっとナイーブだもん。

「・・・テメェ教室の時も今朝も楽しみにしてたじゃねーか」
「え・・・」
「この俺が回ってやってんのにつまらねぇってか?」
「そ、そんなことないよ・・・!そんなこと・・・」

一瞬轟くんたちの方をみてすぐに足元に視線を落とした。
爆豪くん、私が楽しみにしてたの気づいてくれてたんだ。だから大人しく回ってくれてたのかな。そういえばいつもより優しかったかもしれない。

「・・・爆豪くんありがとう。楽しませようとしてくれてたんだよね」
「はァ?誰がてテメーなんか・・・」

そう一旦口を噤んだ爆豪くんを、どうしたのかと見上げた。見上げた先、爆豪くんはニヒルに笑って

「名前、」
「へ」
「服も靴も普段らしくねぇが悪かねェ。」
「は・・・」

そう耳元で言うから、だんだん顔が赤くなってしまう。悪くないって言うのは爆豪語で似合ってるって意味だったはず。・・・はず?!爆豪くんが褒めたの?!

「オラいくぞ」
「えっあっ」

私の耳元から顔を上げたと思ったら急に腰を掴まれ爆豪くんと密着する体勢になった。そのままスタスタ歩き出すから、歩きにくいし恥ずかしいんだけど!

「ば、爆豪くん!は、はやい!」
「ノロマ」

爆豪くんについて行くのと恥ずかしいのでいっぱいで、轟くんがこっちを見ていたことには全く気づかなかった。







気分は最悪だ。これ以上にないくらいに。

「と、轟さん・・・足元が」
「・・・あぁ、悪ぃ」

無意識に足元から個性がでて少し凍らせてしまっていた。左で溶かすために左足でアスファルトを踏みしめる。氷が高い音を立てて割れた。


ずっと好きだった苗字と念願叶って付き合い始めたのがこの前。色んなところにデートに行きたいと楽しそうに話す苗字が可愛くて、どこへでも連れて行ってやりたいと思っていた。この夢の国もそうだ。携帯でここのサイトを見ながら楽しそうに話していて、早く一緒に行きたいと思っていた。
なんだかんだクラスで行くことになり2人きりじゃないのに少し落ち込んだが、まあ一緒に回れれば楽しいかとそう思っていたのに。
無情にもくじで違うグループになり、一緒にまわることも出来なくなってしまった。
仕方ないねと笑う苗字に、仕方なくなんかねぇと思ったけどわがままを言ったところで困らすだけだから黙った。苗字は俺とまわらなくてもいいのかと少し落胆したが、八百万が初めてだとパンフレットを興奮しながら持ってきたので見ることにした、気を紛らわすために。
委員長の声が響いて、もう出発と思った時に苗字の声が聞こえてそちらを向くと爆豪に服を掴まれて連れていかている。
正直そこでもうイラッとした。爆豪は距離が近すぎる。苗字は掴まなくても歩いてついていけるんだからさっさと離してほしい。人の恋人に横暴すぎる。初めての夢の国も、先のことを思ってため息しか出ない。



「轟さん、チュロス食べませんか?」
「チュロス?」
「はい!これです!」

周り初めて少したった頃、よく分からない食べ物の所に並びたいとの八百万の希望に沿って並ぶ。色んなアトラクションや施設、食べ物があって一日じゃ周りきれないと感じた。どれも新鮮でたのしいはずのに、横に苗字がいないってだけでそう思えない。


「ね、あそこの女の子かわいいね。隣の男の子もかっこいい・・・カップルかな?」
「ね、結構お似合いじゃない?」

その言葉に何となく顔を上げて声の先を見ると、そのには苗字と爆豪がいた。ポップコーンの列に並んで話をしている。
というか、今なんて言った。お似合いとか、カップルとか・・・。聞き間違いであって欲しい。むしろその人たちに訂正しに行きたい。俺の恋人だと。
爆豪と苗字がそう見られていると思うだけで心の中からどす黒いものが溢れ出てきそうだ。
そのまま苗字を見ていると、携帯を開いたと思ったら爆豪が顔を近づけて一緒に覗き込んでいる。

は?
近すぎる。どう考えても近すぎる。爆豪は苗字に対してやっばり距離感がおかしい。ただでさえ一緒にいるというのも嫌に感じるのに、あれは無い。
今すぐ間に入って引き剥がしてやりたいけど、そんなことで嫉妬にまみれた男だと思われるのが嫌で、何とか踏みとどまる。

苗字はいつも俺を優しいという。だからその優しい男のままでいたいから、こんなちっぽけな事で騒ぎ立ててはいけない。
下を向いて深呼吸。落ち着こう。寮に帰ったら2人で部屋で過ごせばいい。今日のことを聞いて、俺が居なくても楽しかったと言われるのは嫌だからまた別日に2人で行く約束を立てればいい。よし。

また苗字に視線を戻すと、爆豪と目があった。苗字は背を向けているから顔すら見えない。目があった爆豪がニヤリと笑って、苗字の耳元で何かを喋っている。
あいつ、分かってやっている。俺が見てるのを分かって、挑発している。
手を握りしめて爆豪を睨んでいると、次の瞬間には苗字の腰を抱いて歩き出す。顔だけ振り向いた爆豪は相変わらず嫌味な笑いを携えていた。

最悪だ。これ以上にないくらい。






寮に帰ってシャワーを浴びるとすぐに女子棟へ向かう。苗字の部屋のドアをノックすると、苗字もシャワーに入ってきたのか、少し濡れた髪を手で押さえつけながら出てきた。

「?轟くん、」
「苗字、入っていいか」
「え、うん。大丈夫だよ」

そういう苗字の顔が少し曇っている気がしてまた嫌な感情が溢れてくる。あの後爆豪と仲良くなったのか?俺以上に?俺より爆豪の方が好きになった?

部屋に入ってすぐに後ろ手で鍵を閉めた。苗字は驚いた顔をして俺を見つめる。

「とどろきく、」
「別れねぇからな。苗字が爆豪を好きでも」
「え・・・?何言って。と、轟くんこそ、」

そう狼狽える苗字を壁に押し付けて手を握り込む。顔を鼻がくっつくまで近づけると、苗字の匂いがして頭がくらくらした。体が熱を帯びて来て暑い。

「轟くん、」
「好きだ名前、誰よりも」

苗字の言葉も聞かないまま、その小さい唇に噛み付いた。


嫉妬に狂ってめちゃくちゃにした後、名前が八百万に嫉妬していたことを聞いて舞い上がりまた無理をさせたのは言うまでもない。



Request by マヨさん
マヨさん、リクエストありがとうございました!!
夢の国で嫉妬祭りになりました。
嫉妬がメインだったのでイチャつきが無くてこれじゃあ爆豪くん夢じゃ・・・?と迷走してしまいました!
ちゃんと轟くんとの嫉妬えっち落ちになったのでこれは轟くんの夢です。轟くんの夢です!!
リクエスト通りにかけてないきがして気が気では無いですが、少しでも楽しんでもらえていたら幸いです・・・!!

リクエストありがとうございました!
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