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爆豪くんへのプレゼント 後編

「よし!やりましょう!!」

前回のあらすじ!勝己くんの誕生日プレゼントを聞いたら手作りのおかしだって!!以上!!
え?割愛しまくり??何も無かったよね??うん。何も無かった。いいね。わたしがめろめろしてあんあんした展開なんて無かった。いいね?!恥ずかしいからやめろ!!
と、言うことで今日は4/19なんですが!!学校も終わり寮のキッチンを占領させてもらうのです!ちゃんと今日キッチン使うねってみんなに言ったし。いや別にみんな何も出来なくなるわけじゃないから。ただわたしずっといるね!ってだけ!!
お菓子作るって言ったら砂藤くんが手伝うかって声掛けてくれたけど、これは誕生日プレゼントだから遠慮した!!やっぱり自分の力で作らないとね!!
冷蔵庫あけて「名前の!」って書かれたコーナーにある材料を取り出してキッチンに置いたけどちゃんと全部揃ってるよね・・・。昨日学校終わったあとに買い出しにいったんだけど、出かける前にメモもしたしメモ通りに買ったから大丈夫だと思う!

「うん、全部ありますな」

全部あるの確認したからレシピみながら開始じゃ!!本当は練習と本番と2回やりたかったけど時間が限られているのでぶっつけ本番でいきます。大丈夫わたしならできるさ!!
で、何を作ってるかというとケーキにしたんだけど。やっぱり誕生日だしね。
ほろ苦のザッハトルテにしようと思いまして。このクックパッドのつくれぽ700件くらいあるやつ。クックパッドは1000件つくれぽあれば確実って聞いたことあるけど、700件あるなら大体大丈夫でしょ!!ふんふんと鼻歌を歌いながら湯煎等開始しましょー。
昔はさ、昔って言っても中学校の頃なんだけど。よく家でおかしとか作ったんだよねー。あのころは姉も大学生で実家から通ってたから一緒に作ったなー。腐った女2人が作るものだけど腐ったりダークマターになったりはしてないんで。姉の影響で小学校の頃から腐ってたけど大丈夫なんで。え?何が大丈夫かって?色々さ。

というか人に何か作るのって初めてかもしれん。中学までのバレンタインは溶かしたチョコを型に流し込むだけというお前それ手作りって言っていいんか?ってやつしか作ってないし。しかも女子にしかあげてないしねー。高校に入ってからは個人じゃなくて女子みんなで作って男子に好きなだけどうぞって感じだもん。今年のバレンタインも同じ。勝己くんには甘いのはあれかなって思ってキムチ鍋奢った。え?バレンタインにキムチ鍋??何かおかしいか??あ??喜んでたんだからいーんだよ!!!個人的にチョコ貰えなかったからって悲しい顔なんかしてな・・・え?してなかったよね??え??
だから個人的に作ってあげるのははじめてというか。なんか女子っぽいね。お料理自体作るの嫌いじゃないからごく稀に勝己くんにお休みの日のお昼ご飯とか作ったなあ。「悪くねぇんじゃねぇの」って言いながら完食するから美味しいんじゃん!って嬉しくなるけど、あれ、勝己くんってわたしの顔立てるために全部食べてくれてる・・・?って思わないことも無い。でもそういうやさしいところもすき。だからこれからもお料理とか適度に作って上達して食べてもらって、

「いや、機会減るし何言ってんだか、」

メレンゲを作ってる手がちょっと止まった。手が疲れただけだよ。
また卒業後のこと考えちゃったわ。いや考えても無駄なんだけどね、なるようにしかならないし。でも今より確実に会える人か減るだろうし、会う日ももしかしたらヘロヘロに疲れててお料理つくるとかそれどころじゃないしねきっと。というか会えんの??お互い事務所決まってないけど地方とかになったりしない??どうする北海道と沖縄になったら。会えなさすぎるにも程があるな??そんなん勝己くんわたしのこと忘れちゃうんじゃない?!そういえばいたわってならない?!どうしよう?!・・・落ち着け、例えばなしだから。例え話。でもオファーきた事務所の中に北海道も沖縄もあったからあながちない話でも・・・。いや、そこを選ばなきゃいいじゃんね?!勝己くんが選んでもわたしが反対側を選ばなきゃいいんだから!!そうだそうだ!!勝己くんに事務所決めたか聞かなきゃ!!・・・いや、なんか聞くの怖くない・・・?どうする?わたしにオファーきてない都道府県とかだったら。いや勝己くんが近いからって選ぶなんて言語道断なんだけど、なんだけど。
いやもう思考がしっちゃかめっちゃかだわ。でも考えすぎてメレンゲはめちゃくちゃいい感じになってきた。上手くいきますねきっとこれは。

チョコレートたちと混ぜ混ぜして型に流しこんでオーブンにぶち込んだ。これ40分〜50分て適当だなおい。こういうのはちゃんと書いてくれないと不安になるじゃん・・・。あったまり始めたオーブンをじっと見つめる。ちゃんと膨らめよ。でもわたしの不安とか寂しさとかそういうのは膨らまなくていいです。萎んで。勝己くんといる時はこんなこと考えないのに、1人になるとそんなことばっかり考えてダメだね。はあ、現実逃避したい。勝己くんといる時に現実逃避してるわけじゃないからね?!勝己くんがいたらそんなこと考える余裕もないってだけさ。すきって気持ちと楽しいって気持ちと嬉しいって気持ちと、幸せって気持ちで不安とかそういうのは入る隙間ないんだ。こんな日々が終わらなきゃいいのにーって思ったらエンドレスエイトならぬエンドレスフォーになっちゃうからダメだね。え?わたしにそんな力はない?そうですか・・・。

愛情詰まってるけど不安とかも詰めてしまったケーキ完成しちゃうじゃん!!隠し味の不安とかで不味くなってないかな?!愛情でカバーできてる?!頼んだぞ愛情!!卒業後とかほんとなるようにしかならんのだからね!!ポジティブシンキング!!名前ポジティブシンキングだよ!!!





「はっぴーばーすでー!かつきくん!!お誕生日おめでとうー!」
「お前それ今日何回目だよ」
「えっと、朝から数えていち、にい・・・とりあえず両手に収まるくらい?まだ両手だって!」
「もうじゅーぶん聞いたわ」

下駄箱で靴を履き替えながら若干呆れ顔の勝己くん。まだ両手だよ?!始まったばっかじゃん!!朝起きて共有スペースで会った時におめでとう第1弾をぶちかましてから朝一緒に登校する時もおめでとうして休憩時間の度におめでとうして今帰りです!!まだ両手なのに・・・!と思いながら急いで靴を履き替えてポッケに手を入れて立ってる勝己くんの横に並んだ。勝己くんてさあ置いてくとか言う割にはこういう時絶対待ってくれるんだよね。は?すき・・・。

「今日が終わるまで言うね!」
「お前いまの聞いてなかったんか?」
「だって勝己くんが産まれた日だよ??1日フェスティバルだよ!!」
「へーへー」
「あっめんどくさくなったな」

横に並ぶと自然とポッケから手を出したわたしの手を掴んでまたポッケに戻す。毎日それだけできゅーんとしちゃうわ。当たり前のことみたいに何も言わずにしてくれんの最初はお前本当に爆豪勝己か?ってなったけどそういえば元々付き合う前からソファーでくっついてたりしたわって思い出した。勝己くんて意外と距離近いよね。スキンシップ好きかね??でも絶対言ったらペットのリードは義務だからっていう。ペットじゃないってば!!
寮までの5分だけをこうやって歩くの好きだよ。隣見上げた勝己くんの横顔マジでパーフェクト。壁画かなにかかな?あれ?壁画って言ったらディスになる??ちがうのこれは国宝的な意味で褒めてるんだよ!!

「?勝己くん寮こっちだよ」
「ん」
「え?そっち行くの?コンビニ?」
「黙って着いてこい」
「?はぁい」

急に寮とは反対側の道を歩き出したからどうした?!ってなったら黙って着いてこいだそうです。まあ着いていかない選択肢とかないから着いていくんだけども。寮までのデート伸びたね!!やったね!!



「えっ、こ、ここ、」
「鶏かよ」
「こけ・・・!じゃなくて、ここ!えっ、え?」
「はよ歩け」

勝己くんどんどん突き進みますなー!って思って隣でキャッキャ喋って着いて行ったら立ち止まったから、ん?って思って勝己くんの見てる先みたらゲーセンあった。・・・ゲーセン?!ゲーセンてゲームセンター?!ええええって見上げてたら勝己くんがゲーセンの中に進み出すから繋いだままのわたしは引き摺られて中に入るわけです。
ゲーセン・・・!勝己くんと・・・!!いきたかっ、あっまってもしかしてこの前一緒に行きたかったって言ったの覚えててくれたの?!ええ?!覚えててくれたんだ?!だから来たんだよね?!そうなんだよね?!
なになに?!勝己くんの誕生日なのにわたしがサプライズ食らってんの?!平日だからお出かけできないってボヤいてたのを拾ったの?!たしかにこのゲーセン学校からそんなに離れてないし少し遊んで帰るくらい余裕だもんね?!・・・えっ、だから作るもの前の日に作れって言ったの?!あの時から考えてたの?!えー・・・えー・・・!!勝己くん・・・スパダリがすぎる・・・。

「か、かつきくん!」
「あ?」
「あ、ありがとう・・・!わたしが行きたいって言ったから連れてきてくれたんだよね・・・?」
「はァ?俺が来たかっただけだわ」

そんなこと言うけど、まあそれでよしにしといてあげるさ!はあー今めっちゃにこにこしてる!勝己くんの誕生日に勝己くんとプチデート!しかも一緒に行きたかったとこ!嬉しいことばっかでわたしの誕生日みたいじゃん!!あんまり長くは居られないから早く遊ばないと!!

「へへ」
「締まりねー顔」
「そんなこと言って、わたしの笑った顔実は好きでしょ!」
「そーだな」
「・・・・・・・・・へ?」

そういってスタスタゲーセンの中突き進んでいくけど、あれ、マジでわたしの誕生日だった・・・??




「勝己くん凄すぎない?」
「てめぇが下手くそなんだわ雑魚」
「いや、いや流石にわたしは世間一般くらいだと思ってるけどね・・・?」

ゲーセンの帰り道で暗くなった道を歩いてるんだけども。行きにはないものがお互いの繋いでない手にこんもりなんですわ。ええ、UFOキャッチャーの戦利品です。。
勝己くんが言った言葉にやや放心した後にさあ遊ぶぞ!!UFOキャッチャーするぞ!!って意気込んでかわいいぬいぐるみの入った台にへばりついたんだけど、わたしが5回やってなかなかヘッタクソな動きを披露したらその後勝己くん3回でそれ取りました。落ちた時にうわああああ!!!って喜んで取り出し口から勝己くんが引っ張り出して押し付けられたのをぎゅーってした!かわいい!!まさか取れるなんて!!

「ありがとう!!勝己くんだいすき!」
「おー」
「かわいい・・・!もふもふ・・・!」
「次は」
「え?次?」

もふもふしてたら次はって聞かれたけど次??でもまた取れるとは限らないけど・・・まあやるだけタダだしね!え?タダじゃない?たしかにお財布のお金減ってる・・・!!!次を促されたのでじゃあこれー!って指さしたやつに勝己くんチャリンってお金入れて数回でまた取れた。は?またとれたんか??え??

「え」
「おら」
「あ、ありがとう・・・?!いいの?!」
「次」
「次?!」

押し付けられた2匹目のぬいぐるみをもふったら次って言われて、え?次?!また?!って戦慄しながらもあれ・・・って指さしたやつ片っ端から取ってった話する??2つの袋にパンパンにつめられたぬいぐるみを見て店員さん泣いてたよ???
UFOキャッチャーでしこたま乱獲した後に音ゲーを2人でバッシバシやって周りがドン引く様なシンクロ率をたたき出しフルコンボした。まあゲームならね!!それに勝己くんとわたしは強い信頼関係で結ばれた飼い主とペットなんだからシンクロ出来んのは当たり前よ!!格ゲーではボッコボコにされたけどカーレースゲーではいい勝負した!!てか勝己くんの運転(?)姿かっこよかった・・・。横から見たけどハンドル握ってるのヤバない??勝己くん卒業したら免許とるのかな??あれ、もう取れるのか?18だし。でもヒーロー免許取得で忙しいから車の免許までってなると大変かな??いやでも彼は勝己爆豪だからな。勝己くんの辞書に不可能の文字はない。わたしも18になったら免許とりたいなー!海辺のドライブ!隣に勝己くんを乗っけてブイブイ言わすのだ!!


「へへ、楽しかったあ」
「よかったなァ」
「ねね、帰ったらケーキ食べようね!」
「作ったんか」
「そだよ!勝己くんご所望の誕生日プレゼントだよ!!見た目は上手に出来た!」
「そりゃ楽しみだわ」
「アレっ、いや、きっと美味しいよ?!中身も!!・・・たぶん」

楽しみだわって言った勝己くんの顔がいたずらっ子みたいだからあれは確実に味はどーだかなあ?って顔だよ!!大丈夫だよレシピ通りに作ったしつくれぽ700件のやつだよ!?途中も失敗してないはずだよ?!膨らんだし、多分大丈夫だよ!!・・・たぶん!




「じゃじゃーん!」
「・・・」
「はっぴばーすでーとぅーゆー、はっぴばーすでーとぅーゆー!はっぴばーすでーでぃあかつきくーん!!はっぴばーすでーとぅーゆー!!おめでとおおお!!」
「うっせえ」

寮に帰ってきてみんなが持ってるぬいぐるみの山にギョッとした後にお夕飯を食べてシャワー浴びて、さあ満を持してケーキの登場です!!勝己くんの部屋にとってきたぬいぐるみを並べて(怒られたけど強行突破した)お皿とフォークを用意して冷蔵庫からそーっとケーキ持ってきました!!ドアを開けてバースデーソング歌ったらうっせぇ言われた。めげないもん!!

「はい勝己くん着火して!その後吹き消して!」
「着火を俺がやんのはおかしいだろうが」
「だって火つけるやつ何にもないし・・・あ、焦凍くん呼ぶ?」
「呼ばんでいい不味くなるわ」

そんな青筋立ててピキピキせんでも!冗談だって!!ことある事に焦凍くんはアピール?してくるから勝己くんは焦凍くんが近くにいるとガルガルする。まあ焦凍くんも挑発の達人みたいな感じだしね・・・。でも大丈夫!!靡かないのだ!わたしが今だいすきなのは勝己くんだもん!!にこにこしながら火ぃつけてって言ったらちっさく息を吐いたあとに蝋燭の先端で小さく爆発起こして火をつけた。便利ー!!

「じゃあ吹き消してどうぞ!!」
「ガキかよ。お前がやれくそ犬」
「そう言わずに!わたし主役じゃないもん!今日の主役は勝己くんだよ!」
「俺は毎日主役なんだわ」

勝己くんの毎日主役発言に謎にたしかに・・・!と納得してしまうわたしがいた。まあその人の人生毎日主役よ!!消して消してと催促したらめんどくせーって顔した後にふーしてくれた!!勝己くんがふーしてんのなんか笑える

「おめでとうー!!!」
「どーも」
「ささ、食べよ食べよー!」

渾身のおめでとうをぶちかまし顔に「聞き飽きました」って書いてある勝己くんをスルーしてケーキ入刀!!ふたり用だから小さいケーキだけどそれでも1回で全部は食べられないからまた明日食べよう!え?2日置いて大丈夫かって??大丈夫大丈夫!!わたし冷蔵庫のこと信じてるから。

「美味しい?」
「悪くねぇんじゃねぇの」
「美味しい頂きました!」

ケーキをひと口食べたのを見てから聞いたらいつものセリフもらいました!これはきっと美味しいだね!!よかったよかったとわたしもひと口たべたらほろ苦で美味しかった!!無事に成功ですね・・・!!お口直しにキムチ鍋用意した方が良かったかな??口甘いままで眠れる??いや歯磨きはするけど、こう、ね?まあ寝る前のキムチ鍋はおかしいか。
もぐもぐケーキを食べてくれる勝己くんを見つめながら食べるケーキは2倍美味しいね。



「勝己くん」
「あ?」
「誕生日おめでとう。勝己くんが生まれてきてくれたことに感謝してるよ。・・・勝己くんがいなくて、出会ってなかったら・・・出会ってなくてもそれなりの人生だったかもしれないけど、やっぱり勝己くんがいてくれるからわたし毎日がこんなに楽しくて、嬉しくて・・・ずっと幸せ。もう勝己くんのいない人生なんて考えられない、なんて!」
「・・・」
「だから、生まれてきてくれてありがとう。これからの1年も勝己くんが幸せでありますように!」


ケーキをテーブルに置いて、何となく居住まいを直して勝己くんに向き合った。なんか改まって言うと恥ずかしいけど本心だしね。勝己くんがいなかったらって考えるけど、それはそれできっと普通に生きてるんだと思う。もしかしたら焦凍くんと上手くいってたかもしれないしそうじゃないかもしれない。勝己くんのいない毎日を普通にすごして、それなりに楽しくしてると思う。でも、もうわたしは勝己くんと出会っちゃったので。出会っちゃったら、やっぱりそんな勝己くんのいない日々なんて何にも楽しくもないんだよね。勝己くんがいて、一緒にゲームして、ヒーロー目指して、たまに夜一緒に寝て。そんな毎日が幸せで、宝物で。
だからつい未来のこと考えちゃうんだけどね。でも大丈夫。毎日に勝己くんがいなくても、たまに会えるだけできっと大丈夫。たくさん取ってくれたぬいぐるみに囲まれて、勝己くんとすごした高校生活を思い返して。それできっと、大丈夫。


「欲しいもんまだあんだけど」
「え?今言う?!ちゃんとこの前手作りだけでいいのかって確認したじゃん?!明日用意することになるから遅くなっちゃうじゃんん!!もー!!」
「セックスんとき言っただろーが」
「セッ・・・!だ、だからあの時はくたくたなんだからダメなんだって!!・・・で、なに?」

「お前」


にこにこして勝己くんを見てたらじーっとこっち見つめて欲しいものまだあるっていった。は?!まだある?!急に?!今ここで?!なんで今言う?!今からなんてすぐ用意できないじゃん・・・!!なんでや・・・!!うがああー!ってしたらえっちのとき言ったって。だから聞いてねぇって!!えっちのときに大事なこと言うのなし!!今後そういうことなしにしてください!!もおおおってしたらお前って、

「・・・へ?」
「お前の全部寄越せ」
「それ、どういう」
「そのまんまの意味だわ」


真剣に見つめられて、言葉の意味を噛み砕くのに全く飲み込めない。言われてる意味が、わかるようでわかんないような。だって、そんな、そんなこと

「プロポーズみたい・・・」
「はァ?ンなだせぇプロポーズなんかすっかよ。プロんなって稼いだ金でてめぇがしこたま泣くようなのお見舞したるわ」
「え、いや・・・え、ちょ、ちょっとまってよ」

勝己くんの放つ言葉がさっきからずっと理解できない。都合のいい解釈ばかりが頭に浮かんで、でもそんなわけないって。心臓が早鐘を打って、震える手を勝己くんの手が掴んだ。勝己くんの手は、相変わらずあったかい。

「卒業したら一生に住むから秋には家探すぞ」
「・・・じ、じむしょ」
「てめぇのとこに来てんだろ」

そう告げられた事務所の名前には見覚えがあって。たしかに書類にあった。それなりに凄い事務所でまさかわたしにと思ってたから覚えてないわけが無い。

「で、でもそこわたしには」
「俺が扱いたるから問題ねぇわ」
「・・・勝己くんには、もっとジーニストのとことか、」
「俺がのし上がる踏み台にすんには丁度いーんだよ」
「・・・」
「おい名前」

言われ続ける言葉にぼんやりする。名前を呼ばれて手を強く握られてやっと、勝己くんの目を見た

「てめぇがくだんねぇことでうだうだしてんのは知ってんだわ。俺がいねぇ人生考えらんねぇとか言う割にヘラヘラしやがって。離れたらびーびー泣いてんのが目に浮かぶわ」
「・・・びーびー、は、なかないし、」
「黙って聞け。お前は俺のもんなんだよ。離れられると思ったら大間違いだわ。誰が手放すか」
「・・・」
「お前は俺の横でずっと馬鹿みてぇに笑ってりゃいいんだ」

急に視界の解像度が落ちて、目の前の勝己くんがぼやける。真剣な顔がかっこいいのに、見えなくなっちゃって勿体ないや。
勝己くんには全部お見通しだった。わたしが最近悩んでたのも、不安になってたのも、何もかも全部。勝己くんの前では出してなかったのに、流石としか言いようがない。きっと馬鹿なこと考えてるなって思ってたんだろう

「全部寄越せって言ったり、俺のもんっていったり、どっちなのさ」
「くそ犬がンなこまけぇこと気にしてんじゃねぇわ」
「さっきのだって、も、プロポーズじゃん・・・」
「違ぇ」

ぼろぼろと零れる涙を繋いでない方の手が優しく拭う。ねぇ勝己くん、いいの?ずっと一緒にいたいって思ってていい?卒業してからも、その後もずっと隣を歩きたいって、そんなわがまま、許してくれるの?

「わたし、ばかだよ」
「何を今更」
「ばかで、なきむしで、うるさくて、めんどくさくて、」
「てめぇは」
「・・・」
「てめぇは俺ンことどー思ってんだよ」

「・・・好きだよ」

仏頂面も、敵を倒してる姿も、怒ってる顔も、横顔も、ゲームしてる姿も、寝顔も、笑ってる顔も、わたしだけに見せる、やさしい顔も。

「だいすき、これ以上にないくらい、勝己くんがすき」

全部好き。勝己くんのぜんぶ。どうしようもないくらい。本当は1ミリも離れたくないし、夜は毎日くっついて寝たいし、ずっと、笑いあってたいの。

「それだけありゃ十分だわ」

「・・・わたしの誕生日みたい」

勝己くんが、少し笑った。おなかいっぱいのときの顔で。


「てめぇの誕生日はこんなんじゃねぇわ。覚悟しとけ、名前」




Happy Birthday かっちゃん!!


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