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Make out

※数年後焦凍プロヒ軸




「じゃあやめたら?」


やってしまった。名前から放たれた言葉にカッとなっていた頭が冷水を浴びたように一瞬で冷える。そうして瞠目してから、自分が吐き捨てた言葉がなんだったかを恐る恐る手繰り寄せて、少し先に居る名前に緩慢に視線を移した。
ソファーに座ってその肘掛に頬杖をつきながらテレビを見ている名前は一切こっちを見ない。その横顔はちっとも怒っていなくて、いつも通りの表情をしていた。それが逆に、酷く恐ろしかった。まだ怒りに満ちた表情をしていたほうが、よかったのに。


「・・・やめ、るって」
「そのままの意味。疲れるでしょ俺といるの。別れた方がいいんじゃない」
「、」
「良くないかもね、精神衛生上。俺もお前も」
「や、名前、」


畳み掛けられる言葉に目の前が歪んで、滝のように冷や汗が湧き出す。名前はいまなんと言ったのか、わからない、わかりたくない。
心臓が恐ろしい程に早く動いて、痛くて、気持ち悪い。まるで自分の周りだけ酸素を失ったような錯覚に陥る。息をどれだけ吸っても、全く苦しさが良くならない。だから何回も呼吸を繰り返しては、目の前にあるはずの酸素を手繰り寄せることが出来ずにいて。

別れるとは、別れると言うことだろうか。別れるとはなんだっただろうか。別れる、わかれる、わからない。わからないでいたい、別れないでいたい。いたいのに、痛いのに、

頭の中を目紛しい勢いで様々な言葉が駆け巡る。そのどれもが伝えたいのに、酸素を上手く取り込めない今の喉では音にすることすら出来ない。喉から狭窄音のみが零れて、呼びたい名前すら霞んだ。


自分の体に起きている異常事態に何とか適応しようともがいている最中、歪んだ視界の中で名前は静かに立ち上がってその歩みを遠くに進める。いつも通り、いつも通りだ。名前はいつも通りで、俺だけいつも通りじゃない。その事実が、嗚咽になって込み上げて今にも嘔吐きそうだ。最近買ったばかりのラグに胃の内容物をぶちまけるのは些か気が引けるが、寧ろここで戻してしまった方が名前はいかないで来てくれるのではないかと小さじ程度の期待が鎌首をもたげる。でもそんなことあるはずがないなんて、普段は思わないのに、今はどうだろうか。

何とか口元を抑えて歩く名前を視線だけで追いかけると、リビングのドアの前まで歩いていて、その冷たすぎないドアノブを捻ってドアを開ける。そして玄関へ続く廊下へ足を1歩踏み出すのを見て、全身の血の気が今度こそ引いた。リビングの廊下の先は玄関で、玄関の先は外で。でもトイレも寝室もあるから、もしかしたらそっちに行くのかもしれないと思うポジティブさは持ち合わせてはいない。それでも期待したい、その足が向かうのは外じゃないって、


「名前、」
「いいよ、無理しないで」
「、」
「無理しないで、」


もうやめていいから。
そう廊下を見たまま、名前は振り返りもせずにその足をまた踏み出した。そうして後ろ手で閉じられる扉を、指先のひとつすら動かせない体で見つめる。名前の小さな足音が確実に離れていって、俺から離れていって。

いかないで、いかないでと叫び出したいのに、絞まった喉はあえぐ様な呼吸をするので精一杯。伸ばしたい手も指も、個性を使ってないのに氷のように動かなくて。
歪んだ視界の解像度が落ちて生温い何かが頬を滑って落ちていく。

行ってしまう、離れていってしまう、そんなの絶対に、駄目なのに。
遠くで閉じられる重めのドアの音が耳に響いてやっと、金縛りが解けたかのように体が動いた。そうして一切の力が抜けた膝は簡単に折れ曲がって、その柔らかいラグの上に吸い込まれるように座り込む。
心臓は早くて気持ち悪いまま、息も上手く出来ない。震える指先を持ち上げて、それを見つめたあとで顔を覆う。温度調節の出来ない両手は熱くて冷たい。気持ち悪い。気持ち悪くて、苦しくて、痛くて、このまま死んでしまう気がした。死んだ方が、マシかもしれない。

名前は出ていったのだから。










きっかけはなんだっただろうか。大したことではなかった気がする。
そう、本当に大したことじゃなかった。いつもやってるような、戯れのような言い合いだ。ただ自分の虫の居所が悪かった。なんて、そんな言葉で済ませられる様な事態ではない。

朝起きて隣に名前がいなかった。夜に任務に行くことが多いからよくあることだ。
食器を出す時に、手を滑らせて茶碗を割った。気に入っていたものだった。
仕事に行ったら欠員が出ていて、業務が思うように回らなかった。
任務でも些細なミスが多かった。
帰りの車で流していたラジオで名前の熱愛報道を聞いた。嘘だとわかっていたのに腹が立った。
帰ってきて、コートを脱いで掛ける時に名前のコートから人工的な匂いがした。よくあることだ。よくあること、よくあることなのに。


「名前」
「ん?」
「コートが臭い」
「あー昼の子のやつかも」


わかっている。名前のことは誰よりもわかっている。
血を飲むのもセックスが好きなのも性別なんて関係ないことも。
わかっている。


「熱愛報道ってなんだ、この浮気者」
「いつものデマじゃん、どーした?」
「どうしたじゃない、俺の名前なのに、名前がそうやってふらついて、誰でも相手するから」
「でもしょうがないよ、血はいくらだって欲しいし。焦凍も分かってて一緒にいるじゃん」


しょうがない、しょうがない。わかっている。嫌になるほどわかっている。
わかってて好きだった。それでも好きだった。好きで好きでどうしようもなくて、愛していて、愛されたくて。
だからこの想いが名前の奥底まで届いて、名前の無い関係が終止符を打った。

好きだと言った。俺を、名前が。好きだと言って照れて笑った後に、これ以上にないくらい抱きしめられて。名前の心臓が速く脈打つのを聴きながら、子供みたいに泣いたのだ。
俺を救って、掬った名前を、俺も同じように救うことが、掬うことができたんだと。長年持ち続けて伝え続けたこの想いは、1ミリだって無駄じゃなかったんだと。
ぼろぼろと泣く俺の目元に口を寄せて、名前は愛おしそうに笑って、俺の名前を呼んで、好きだよって言って。
そう言ってしたキスはこれ以上にないくらい幸せだった。幸せだったのに。


「名前の恋人は俺なのに、名前が、そうやって誰とだって、」
「仕方ないよ」
「俺ばっかり、俺ばっかりだ、こんなに好きなのに・・・!」
「焦凍ばっかじゃ、」
「名前はちっともわかってねぇ!俺の事だってめんどくせぇからこうしてるだけだろ・・・!」


可能な限り周りを牽制したし、未だに名前の携帯の連絡先は最低限だ。名前が俺を大事にしてくれているのは伝わっていたし、愛されてるのだって分かっていたつもりだったのに。
俺は本当に、どうかしていた。


「名前なんて、」




名前が出ていって何時間経ったのかわからない。リビングのラグの上に座り込んだまま、何もせずにそこにいた。
何も出来なかった。考えるのは名前のことばかりで、さっきの出来事を反芻しては、壊れたように出続ける涙がラグに永遠と染み込んだ。

ああ、あの後放った言葉をまた口の中に戻せたらいいのに。コートのことなんて気にしなければよかったのに。ラジオだってデマだとわかっているのだから、無駄に聞かなきゃよかったのに。俺はなんで、全部わかってたのに、それでもいいと、そばにいられるだけでいいと思っていたはずなのに。


初めてあったあの夜からもう8年も経つのに、俺はずっと子供のままだ。あの抱きしめられて眠った夜からもうずっと。
子供のまま大人になって、わがままばかりの好きをぶつけて。嫌がられない事をいいことに甘えて、特別だと許された気になって。

でも実際、少なからず特別ではあった気がした。出会って4年もすぎた頃になれば、名前も柔らかく笑うようになっていたから。そうしてまた甘えもわがままな想いも積み重ねて積み重ねて、今の場所を許されたのに。

馬鹿だ。俺はどうしようもないくらい馬鹿だ。ちゃんと伝わっていたのに。名前の特別も感情も、ちゃんとわかっていたのに。それでもまだ、もっとを求めて、そのもっとがなし得ないと勝手に激情して、呪いみたいな言葉を吐いて。そうして、名前を失って。

救いようがない。もう名前は戻ってこない。誰だってわかる。
だって名前は人気者で、引く手数多で。名前に好意を持つ誰もが俺のいた場所を欲している。たとえ俺のいた場所じゃなくたって、名前と過ごす時間が増えるのならそれは僥倖で。だから、もう無理だ。

名前は俺じゃなくたっていい。だから無理だ。名前がここに帰ってくる理由は、もう無い。


これからどうしたらいいのだろうか。俺は、名前なしでやっていけるのだろうか。名前がいなかった14年間より、名前を愛していた8年間の方が俺の全てだったのに。
いっそのこと、本当に消えてしまった方がいいかもしれない。名前は戻ってこないから、俺を優しく殺してはくれない。跡形もなく忘れさせてはくれない。
この想いを抱えたまま、死にそうになりながら生きるしかない。今日を後悔して、昨日までを夢に見て、明日に絶望を持ちながら。
そうして誰かと幸せになる名前を見かけて、それで、



「あれ、寝てなかったの?」


パチリ、廊下の電気を消す音が聞こえる。そうして今しがた聞こえた声に、ぐるぐると考え続けている頭のままぼんやりと顔を上げた。
壊れた涙腺のせいで視界は不明瞭だけれど、そこに誰かがいることはわかる。それが、誰かも。
ああ名前だなんて思いながら、ドアを閉めて持っていた荷物をテーブルに置いたりする名前を茫然と眺める。


「・・・名前?」


そうして漸く、そこにいるのが名前だと認識した。名前だと思っていながら、わかってはいなかった。名前はもう、帰ってこないと思っていたから。

ぼんやりと名前を呼んだのに気づいたのか、帰り支度もなあなあに名前はゆっくりとこちらに歩みを進めた。座り込んだまま動かない俺の前に来てからしゃがんで、困ったような顔をする。そうして伸ばされた手は頬に触れて、その冷たい温度から、改めて目の前に名前がいると理解した。


「こんなに泣いて。目が腫れるよ」
「・・・、名前?」
「そうだよ、他の人に見える?」
「・・・みえねぇ」


焦凍が見間違えるはずないもんね。
そう言いながら零れ続ける涙を掬って、困った顔のまま名前は笑う。

名前がいる。目の前に、もう帰ってこないと思っていた名前が。これは夢だろうか。いつの間にか、泣き疲れて眠ってしまっているのだろうか。
目元はぼんやりと熱いし、息は苦しいし、心臓は気持ち悪い。随分とリアルな夢だ。目の前の名前も本物と寸分も違わなくて、その指の感触ですら現実味を帯びている。


「な、で」
「ん?」
「だって、出てって、も、」


しゃくりあげているわけじゃないのに、喉が詰まって上手く声が出せない。呼吸をするのもやっとのなかで、どうにか酸素を探して、溜まった二酸化炭素と共に何とか言葉にしようと声を吐き出す。
そうだ、名前は出ていったはずなのに、どうしてこうやってここに帰ってきたのだろう。別れるとかの話もして、てっきりもう、


「・・・出てってないよ。買い物に行ってた」


あと買い物中に緊急の出動要請があって少し仕事もしてた。
未だに流れ続ける涙をその指で拭い続けて、名前の手はどんどん涙で濡れていく。

出ていってない、買い物、仕事。それらの言葉が頭の中にふわりと浮かぶ。
ヒーローは、夜間の出動要請も珍しくない。とくに夜を得意とする名前は、寧ろ夜間の出動要請の方が多いくらいだ。
緩んだ涙腺のままに名前を上から下までゆるゆると見る。目に見える怪我も服装の乱れもない。名前のことだ、あっさり片付けてきたのだろう。とりあえず、怪我がなくてよかった。
どちらかと言うと、勝手に傷だらけになっているのは俺の方で。今し方交戦してきた名前が、困ったように、心配そうに俺を見つめて眉を下げている。
どうして、そんな顔をするのか


「かいもの」
「もう夜だからお店もやってないしいいものはなかったけど、ないと困るからね。お茶碗」


そうして紡がれた言葉に、また息が止まりそうになる。瞠目して、指先が震えて。まるで油の足りないロボットみたいに少しだけ首を動かす。テーブルの上には、見慣れたエコバックが軽く畳んで置いてあるのと、その横に新聞紙に包まれた、多分陶器の食器。

名前は、俺が朝食器を割ったことに気づいていたんだ。
俺が出勤して、帰ってきた名前は多分食器棚を見て、ないことに気づいて。


「すぐ買いに行けばよかったけど、ちょっと寝ちゃって。またいいやつ買いに行こう」


そう言って頬から手が離れて、頭をまるで子供にするように撫で付けてくるから。その手が、酷く優しいから。
壊れた涙腺がさらに壊れて、とめどなく頬を涙が濡らす。それこそ子供みたいにしゃくりあげて、震える手で名前の服を掴んだ。


「ごめ、ごめんなさ」
「うん」
「あんなこと、思ってねぇから、思ったこと、ないから」
「うん」


吐き捨てた言葉が、その時の光景が浮かんでは呼吸を乱す。
あんな3文字、名前と出会ってから1度たりとも思ったことなどない。冗談ですら思い浮かばないのに、何で今日は言ってしまったのか、皆目見当もつかない。自分で思っているより、色んなことが重なってフラストレーションが溜まっていたのだろうか。だとしても、ぶつける相手も言葉も何もかも間違ってる。

名前は俺の全てだ。あの夜から、あの世界から、救い出してくれた時から、名前はずっと俺の全てで。
好きだから、愛してるから、一緒にいたくて、1番になりたくて。誰よりも何よりも、名前を想う気持ちでは負けない自信があって、だから名前にもいつかちゃんと届いたら、ちゃんと俺を見てくれるって。


「やめない、無理なんて、してない、別れたくない、名前、別れるなんてむりだ」
「うん」
「捨てないで、なかったことに、しないでくれ、」


本当は誰よりも愛されたい名前を愛したから、名前も俺を愛してくれるって、抱きしめてくれたから。
俺は幸せで、これ以上にないくらい幸せで。なのにもっとを求めてしまう、わがままを言ってしまう。
わかっている。名前のことはわかってるのに、それでも俺だけを選んで欲しいなんて、傲慢すぎだ。

傲慢すぎるから、捨てられてしまう、なかったことにされてしまう。俺がわがままを言って駄々をこねる度に名前はきっと俺にどんどん愛想を尽かすに違いないから。
だから、もう言わないし思わないから。名前の1番で、恋人でいられるなら。愛されるなら、それ以上は望まないから。だからどうか別れないでくれ、捨てないでくれ。
どうか、なかったことにしようとしないで。


「・・・まあ、別れるつもりはハナからないけど」
「、」
「焦凍が別れたいって言ってもね」
「っ言うわけ、ないだろ・・・!」
「そ?」


服を握ったまま俯いている俺に、上からやさしい声が降ってくる。その温度が体の全てに浸透して、その言葉を形作る。鋭さのない文字は俺を引き裂くことはなく、冗談交じりに告げられた二の句に弾かれるようにして頭を上げた。すぐ目の前の名前は、いつも通りのしたり顔だ。


「まああの時間に出かけるのは確かに買い物の意味もあったけど、お互い頭冷やした方がよかったでしょ」
「・・・」
「まあその結果焦凍は鬼のように泣いてんだけど」


明日は目が腫れそうだね、と零しながら右目の縁にその唇を寄せた。
確かに頭は冷やすべきではあったけれど、あんな風に出ていかれたらどう考えても捨てられたと思う。出ていってしまって、もう帰ってこないと思うだろう。・・・こういう風に触れてくるから、捨てられないと、別れないと思っていいのだろうか。


「まあ、俺も少し傷ついたから、仕返しみたいになっちゃったけど如何せんやりすぎたね。大人気ないです」
「いや、俺が、わるいから・・・、」
「・・・もうあんなこと言わないでね」
「言わねぇ、二度と、死んでも言わねぇ」


死ぬとか言わないの
呆れたように零してそっと肩を抱くと、少し力を込めただけで俺の体は簡単に名前の腕の中に埋まっていく。よいしょと座ってその足の間に滑り込まされて、俺ももう子供じゃないのにすっぽりと包み込まれていくように感じるのは、未だに心は子供染みた所があるからだろうか。


「やめたら、とか言ったけどさ」
「ん、」
「言われてやめられるならわけないよね」
「あたりまえだろ」


やめられるならとっくの昔にやめている。飄々としていて、来る者拒まず去るもの追わずな名前を好きでいるのは、本人が思ってるよりしんどい時があるのだ。それでも好きだからやめられない。簡単にやめられるほど、軽い気持ちじゃない。


「はー、しょうとー」
「ん」
「責任取って」
「なんの」
「俺を変えた責任?」


苦しいくらいに抱きしめられてから伝えられたのは、よく分からない責任問題だった。名前を変えた責任。俺が名前を、変えた責任。
腕の力が緩んで、少しだけ体を離される。そうして見上げて交わる視線が、痛いくらいに


「焦凍が思ってるより、俺は焦凍が好きだよ」
「、」
「焦凍がずっと真っ直ぐぶつかってくるから、俺も愛してもいいんだって、思わせてくれたんだ」


纏わりついていた悪夢から醒めてもいいのだと。誰かが愛してくれるように、誰かを愛してもいいのだと。


「だから焦凍。そう簡単に別れてなんてやらないからね」
「、名前」
「愛してるから、離してなんてあげられないよ。誰よりも何よりも、焦凍だけが好き」


与えられる言葉が、視線が、温度が。酸素となって全身を駆け巡る。ずっとずっと欲しかった言葉が、雨のように降り注いでおかしくなりそうだ。
恋人になってからセックスの時にも時々言ってくれていたけれど、その時にも勝る感情が胸の内を占める。
愛している。名前が自分を愛している。数年前の自分に聞かせたら、卒倒するだろう。今でさえ、目眩がして、死んでしまうのではないかと言うくらいに心臓が高鳴るのだから。


「名前、名前、ん」
「これからも愛してよ、嫌になるくらいに。」
「嫌になられたくねぇよ、」
「言葉の綾だよ、そういうところすき」
「俺も、俺も好き、名前好きなんだ」


会話の合間に重なる唇が熱い。熱くて、幸せで、溶けてしまいそうだ。現実的ではないけれど、名前がいれば何もいらないなんて本当にそう思えるくらいには、与えられる温度が愛しい。


愛してるだけで幸せだった。受け止めてくれるだけでよかったから。でも愛されることを知ってしまったから、もうあの頃に戻ることは出来ない。

救われて救って報われて。愛し続けた半生も、 普通になれなかった半生も。何も無駄じゃなかったと、今なら強く、思えるから。
だから、どうか。
これから先の人生も、愛し続けることを赦して。愛して欲しいと思うことを赦して。それがすこし、盲目的なくらいでも。





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