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爆豪くんからのプレゼント

※勝己くんと付き合ってるif
※本編番外編、「爆豪くんへのプレゼント」読了後推奨
※この話だけくそ犬の誕生日を秋にしています。本編は特に決めてないです!みんな自分の誕生日にしといてくれよな!(サムズアップ)





みなさんおはようございますこんにちはこんばんは!!苗字名前です!!お久しぶりぶり!!あ、続けて読んでる人は久しぶりじゃなくてつい数分前ぶり?んな事たァどうだっていいんだ!!書いてる人が久しぶりなんだからそれでいいんだよ!!
季節は秋でございます!現実は真夏??季節の先取りってね!!

「ふんふんふーん!」
「ご機嫌だなァ名前チャン」
「だってー、2人の愛の巣探しだよ?そりゃ鼻歌も出ちゃうよねー!」
「愛の巣とか言うな気持ち悪い」
「もー照れちゃって、いだだだだだだ離せ離せ離せ」

街はオレンジやら赤やらの秋カラーで彩られていて、そこかしこからいい匂いが漂ってきます!特に焼き芋の匂い!焼き芋美味しいよね、蜜が沢山入ってるやつ嗅ぎ分けるの得意だよ個性がら!えへへぇ!!
秋色のコートを着てぺたんこの靴を鳴らしながら、繋いでいる手をブンブンと振り回して鼻歌を歌います!聞いてください、苗字名前で、紅葉。ふんふんふーんと歌ってると隣上からご機嫌だねって聞こえてきました!もちろん手を繋いでいる勝己くんなんだけどね!!勝己くん黒のチェスターコートと白いマフラー似合ってるよ!!そして秋は勝己くんの色だねー!!私すきだよ秋!!勝己くんの色だし食べ物は美味しいし食べ物は美味しいし食べ物は美味しいから!!え?食べ物の話しかしてない?そんな事ないよチッチッチ。
今日はね、休みの日なので2人で街に繰り出して、来年の春から住む2人の愛の巣探しです!!えへへー!!!

今年の春に勝己くん誕生日パーティ(参加者二人)をした時に勝己くんからまさかのプロポーズ(!)と卒業したら一緒に住むぞって同棲宣言されたのだー!みんな知ってるよね!!えへへ、思い出すだけでニヤけてしまうのだ。プロポーズはプロポーズじゃないって言ったけど、あれはもうプロポーズですよ名前ちゃん!だってしこたま泣くプロポーズしてやるって言われたし、というかもうそれがプロポーズじゃんね!!と思っちゃうのだ!事務所も同じとこ行こうねって言われてもうきゅんきゅんきゅーん!だよ!えっ勝己くんジーニストの所じゃなくていいの・・・?!と思ったけどいいんだって。決めた事務所を踏み台にしてのし上がっていくんだって!まあ一緒にジーニストの事務所って言われたらちょっと無理だもんね。だってわたしにタイトなジーンズはちょっと無理があるって言うか、なんというか。まあ郷に入っては郷に従えっていうからどうにかなるかもしれないけどね!!
わたしにきていたオファーの中で1番と言っても過言ではない事務所に勝己くんと行くと決まりまして、無事に申請もして2人ともそこに行くことに決まりました!やったね!昔熱出した時に「横か後ろにいたら守ってやらんこともねぇ、俺は飼い主だからな」(キリッ)って言われたことあったけど、まさか現実になるとはね!でも守られるだけの名前ちゃんじゃないのだ!!あれからわたしも成長して強くなったし、勝己くんを乗せて走り回ったり連携プレーが上手くいくようになってきたから、勝己くんのサポートとほかのプロヒのサポートも頑張る!もちろん近接も出来るしその気になればバクーッ!って食べれちゃうんだけどね!でも食べたらお腹壊すから食べない。敵、美味しくない。

そんなこんなでもうわたしは勝己くんの誕生日の後からハッピーライフハッピーホーム名前ホームだったんだけど、今日ついにおうち探し、内見だよー!!緑のもじゃもじゃのサイトで2人でおうちの条件でアパート探して、何件か良さそうなところあったから見に行くのです!決まるといいなあ!2人の愛の巣!照れちゃってぇー!って言ったら繋いでる手もギリギリ握られるし繋いでない手で頭をギリギリ掴まれるから割れる割れるって騒いだ。いやマジで割れるから。手も砕けるから。勝己くんも焦凍くんに負けず劣らずゴリラなんだから加減しろ。でもこれはわざとやってる、勝己くんは手加減出来るからねどっかのパワーゴリラと違って!多分今はわたしがはしゃぎすぎでウザくてやってる。もー本当は勝己くんも2人の愛の巣探し嬉しいくせに!でもこれをまた言うともしかしたら命取られるかもしれないから言わないでおくね!!

「はー、痛かった割れるかと思った」
「割れたら隙間から落ち着きっつーもん詰めといてやる」
「まあ詰めたところで元々持ってますって!」
「・・・」
「え?何その嘘だろお前・・・みたいな顔」

ギリギリと掴まれていた頭が解放されてふぅーーと一息つくと、乱れた髪を直しながら落ち着きを詰めてくれるって言ったけどわたし元々持ってるよ?落ち着き。ほら、こんなに落ち着いているでしょう?とお淑やかな顔したら嘘だろお前顔された。嘘じゃねぇよ落ち着き持ってるよ!!持って・・・る!持ってるから!!・・・え?落ち着いてない・・・?そ、それは勝己くんが好きだから一緒にいたらハッピーになっちゃうだけだって!!それにわたしがあまりにもお淑やかだったら勝己くんと合わないでしょ?!勝己くんがサルーキ連れて歩いてたらびっくりでしょ?!そういうことだよ!!というかわたし以外の犬連れて歩くな!!いやわたしは犬じゃないけど!!!

「もー!」
「ほらさっさと行くぞ」
「お昼に美味しいパンケーキのとこ連れてってくれないと動きません」
「へーへー」
「返事が適当!」

ギャーギャー言うわたしの手を握り直して歩き始めた勝己くんについて行くけど、いつもわたしの歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれてることなんて気づいてるんだからな!バカ!紳士!そういうとこ好き!午前と午後の内見デート楽しんじゃうんだからね!!!









「ありがとうございました。また引渡しの日もどうぞよろしくお願いしますお願い致します」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」

某不動産の出入口でぺこりと挨拶をしてガーッと開く自動ドアを颯爽とくぐり抜けた。決まった、わたしと勝己くんの愛の巣────!!駅から徒歩10分圏内コンビニスーパー薬局隣接事務所からのアクセスも良!!しかも新築2LDKのアパートだぁぁぁあ!!!!才能マンの勝己くんは物件検索の時もその才能を遺憾無く発揮し(?)こんな感じの物件を何個かチョイス、不動産屋さんと見て周り部屋の内装ではしゃぐわたしを無視して不動産と議論をかわしていたのだ!!そしてわたしがどこも良かったねー!とほわほわしている間に勝己くんの中では物件が決まり、不動産屋に戻ってからわたしの意見を待たずして決定した!まあわたしチョイスされた物件どれも良い!ってなってたからなんでも良かったので!!勝己くんの名前でお家を借りて、わたしが同居人という形で住むんだけど、うふふ、そのうち結婚なんかしたら、夫婦になるのかなー!え?爆豪名前?やばなんか強そう。わたし爆豪って似合わなくね?大丈夫??まあ苗字勝己の方がなんかしっくり来ないからいっか。てか本当に結婚できるかな?プロポーズしてくれるって言ってたけど喧嘩もあるだろうし、一緒に暮らし始めたら性格の不一致が・・・生活感が・・・とかなんか問題でてきそう。う、想像したくない。でもありえちゃう。やめよ、急にテンション下がるわ・・・。情緒不安定かよ。

「お家決まってよかったねぇ」
「おー」
「卒業したらお引越し?その前に家電とかも見に行かないとね!あれ?引越しの後でいいのか?」
「親と相談だろ、働いてから返すにしても一旦借りるわけだし」
「勝己くんちゃんとしてるわ・・・普段くそババアとか言ってるのに」
「あ?」
「ナンデモアリマセン」

そんなことは考えるな!考えるな名前!これからのハッピーライフに影を落とそうとするんじゃない!大体今だって半分同棲みたいなもんだし寮生活だけど。いやご飯も別にそんなに作らないし部屋別だしクラスメイトもいるけどね!え?やっぱりこれは同棲じゃない?そうだねわたしも言っててそう思ったわ。
家電も1から全部揃えないと行けないけど半分ずつ出せるから半額の値段で買えるし一人暮らしよりいいのでは?勝己くんと毎日一緒だし同棲メリットしかない。デメリットは2人とも一緒にお腹壊した時にトイレがひとつしかないことくらいじゃない?え?そんな事ない?まあそんなことあったら近くのコンビニにどっちかが走るしかないね。うん。

「勝己くんママ、フッ軽だよね!元々今日契約するかもって言ったら連帯保証人欄書くのに近くにお出かけに来てくれるとか」
「アイツ買い物好きだからな」
「んでもってもう仲良くなってる親」
「お前の母親も来るとは思わんかったわ」
「わたしもです」

お家の契約の時に、まだわたしたち学生なので保証人欄の記入が必要じゃんね!親とみて回るのもありだったけど2人の家だし任せても大丈夫でしょって連帯保証人欄書きにだけ出てきてくれた勝己くんママに感謝。でもまさかわたしのお母さんまで来てるとは思わなかったわ。「名前ちゃーん!」って手を振ってきたから何事?!なんで?!ってなったけど2人で楽しく買い物したらしい。でも2人とも買いすぎだね?両手にショッパー持ってるけど帰ったらお父さんびっくりするのでは?でもお父さんは楽しそうで良かったねって頷くだけだなきっと。

元々同棲するにあたってやっぱりお互いの両親には許しを得なければならないじゃん??元々一人暮らしになる予定だったけどまさか恋人と暮らし始めるとは思わんじゃんね!なので勝己くんの誕生日の後にお互いのおうちに挨拶に行ったんだけど、その時勝己くんママ凄かったよ。
「本当にうちの勝己でいいの?!あんな口も悪いし色々とアレじゃない?!」って肩を揺すられたけどお母さん、その隣で勝己くんが青筋立ててるけど大丈夫ですか??結論から言って大丈夫だった。わたしが勝己くん大好きで優しくてとっても良くしてもらってますって話したら、ぽかんとした後にめちゃくちゃ優しい顔してくれた。勝己をよろしくねって言われたけどお世話になってんのはわたしのほうなんだよなあ。ペットなので・・・。いや、ペットじゃないって。
うちは勝己くん1回来たことあったから「あらあらまあまあやっぱりそうなったのねぇ」ってお母さんニコニコしたから恥ずかしかったし!やめろ!!そうなったってなんやねん!!そうなったけど!!勝己くんは礼儀正しく「名前さんとお付き合いさせて頂いています」なんて始めて同棲の許しを得るために頭を下げ、頭を下げた?!勝己くんが頭を下げたのか?!あの毎日主役の勝己くんが?!って隣で恐れ戦いてたらちょっと呆れた顔された。お父さんもお母さんも勝己くんなら大丈夫ねってすぐにOKしてくれたから良かった。そのままうちでご飯食べて寮に帰ったけど、帰り道にもう親公認ですな・・・ってじわじわ実感してニヤけを隠せなかったら、これまた呆れた顔の勝己くんにデコピンと称していいのかと言うくらい強すぎるデコピンを食らって仰け反ったあと、戻っておでこを抑えているわたしにちゅってしてきたから、ええ、勝己くんも満更でもないじゃん・・・。ってやっぱりニヤついて抱きついた。

「これで別れたら気まずいね」
「はァ?別れてーのかくそ犬は」
「まさか!!そんな訳ありませんがな!!!いやでも一緒に暮らし始めたら喧嘩とか増えちゃうかなとか思ったりなんだりしてるけど!」
「アホらし」
「アホじゃないもん!」

手を繋いで歩きながら勝己くんはァ?ってめちゃくちゃ怪訝な顔したけど別れたいわけないじゃん!!別れてやるかアホ!!でもやっぱり喧嘩とか増えるかもしれないじゃん!!同じ事務所だからすれ違い生活では無いかもしれないけど性格の不一致とかさ!!え?さっきも言った?気になってるから考えちゃうんだよ!!わたしから別れることはまず無いと思うけど、勝己くんが万が一わたしをぽいしたらと思うと、思うとだな・・・。

「・・・」
「・・・あれ、勝己くん?そっち駅じゃないよ?」
「買い忘れ」
「何?文房具?」

しゅーん、と出てない耳がへたり込む気がした。勝己くんに捨てられたらどうしよう・・・。おうちは勝己くんの契約だからわたしが出ていくんだよね??でも行く宛てなんてないし、1回実家に帰るしか・・・いや、捨てられたくないんだけどね・・・。色々頑張るしかない・・・!仕事が大変だからって言い訳に色々疎かにしてはいけないのだ!でも大丈夫かな?わたしマルチタスク少しできるようにはなったけどちゃんと出来るかな??うう、心配だ・・・。勝己くんが好きって気持ちだけじゃ、色々上手くいかないもんね・・・。
ぽてぽてと歩いていたら勝己くんが手を引いて向きを変えたからあれ?駅に帰んないの?と思ったら買い忘れらしい。文房具かなあ、それとも登山用品?まだ夕方だし、外出届けも帰る時間念の為1番遅くにしたからまだ大丈夫だよね。せっかく街に繰り出したわけだし、わたしも何か買い忘れないかな?いつも大丈夫かー!って帰ってからああ!!あれ買わなきゃいけなかった!!って思い出して突っ伏してるから気をつけないと・・・!!思い出せ、思い出すんだ名前・・・!部屋に必要なものは、しっかりあるのか・・・!!

「ッハ!歯磨き粉!!!」
「うっせぇ」









「歯磨き粉買えてよかったあ、なかったら勝己くんの奪うところだったよ」
「堂々と盗む宣言すんな」

無事に勝己くんの買い忘れのものとわたしの歯磨き粉を購入して、ついでにウィンドウショッピングなんかしたりしてたらあっという間に日が暮れた。夕飯も適当にファミレスに入ってわたしが喋り倒してそれに勝己くんが時々返事したり相槌うったり。あとゲームして無事にダイナマイト様に助けて貰って今日もランキング更新出来ましたありがとうございます!!帰りの電車の中でもよろしくお願いします!!一緒に暮らし始めたらより強くなれる気がする・・・!(他力本願)

「よし帰ろっか」
「おー」
「・・・ん?え?まって駅こっちだよ」
「・・・」
「勝己くん方向音痴になったの?大丈夫?」
「なってねーわ。黙ってついてこい」
「?はぁい」

さあ帰るぞおー!と目の前の駅に向かって歩いていたら駅の直前でまさかの勝己くん急カーブ。え?何?見えない壁とかある??正面から入れないタイプのダンジョンだったりする??それとも勝己くんのマップには駅描写されてない??方向音痴にでもなったんか・・・?と訝しげに見つめるとなってないって。それは良かった。そしていつかの何かを思い出すかのような黙ってついてこい発言。ええ、わたしは黙ってついて行きますよ!!飼い主にリード引っ張られてるんでね!!いやペットじゃないです恋人です恋人ぉ!

一体どこに行くのかと思ったら駅のすぐ横にあるゴンドラ乗り場だった。え?ゴンドラ??

「2人分お願いします」
「え?」
「かしこまりました。1200円になります」
「え?」
「ありがとうございます」
「ありがとうございました。次の便すぐに来ますのでお待ちくださいね」
「え?」
「はい」


「え?」

気がついたらゴンドラに乗ってた。何を言ってるかわからねーと思うが、俺も何をしてるのか分からなかった・・・。いやわかるんだけど。え?と言ってる間にゴンドラの乗車券を買っててえ?としてる間に次の便が来てえ?と声に出してる間にゴンドラに乗っていた。え?

「下見ろ」
「え?わ、綺麗だねー!」

何が起きて・・・?と思っていたけど窓に手をついてぼーっとしてたら下見ろって言われたので見たらぐんぐん高くなって駅が小さくなってって、街灯とかお店の光とかが綺麗だった。綺麗じゃん!!すごい!わたしゴンドラ初めて乗ったけど思ったより揺れない!!そして意外と広い!!これ冬に乗ったら街のイルミネーションとかめちゃ綺麗なんじゃない・・・??冬も乗ろう!!決めた!!冬も来ようね勝己くん!!キャッキャしながら隣に座ってる勝己くんを振り向いたら、肘掛に頬杖をついてこっち見てちょっと笑ってた。

そしてそう何分もしないうちに降車駅について降りると、そこは展望台みたいになってて親子連れやカップルでそれなりに賑わっていた。ちょっとしたカフェもあってデートとかには持ってこいの場所っぽい!え?勝己くん今日ここ来る予定だったの?わたし知らなかったけど!内見と契約だけだと思ってたわ!

「ねね、あっちカフェある!」
「抹茶ラテがうめーんだと」
「そうなの?じゃあ飲もうよ!」
「あとでな」
「?あとなの?」
「おら、」

なんで後・・・?と思いつつ手を引かれてカフェ・・・と名残惜しく見つめていると、展望台の端まで連れてこられた。丸太を模した柵があって、勝己くんに促されて近づくと、ゴンドラに乗っていた時に見た景色より格段にすごい夜景が広がっていて。ええ、ええ・・・!!!なにこれ!!

「ええ・・・!すごい・・・!!綺麗!めっちゃきれいー!!ね、勝己くん早くこっち来てよ!!」
「来てるわ」
「見てー!すごいい・・・!綺麗・・・!語彙力失う・・・」
「元々ねーだろ」
「確かに」

確かに語彙力元々なかったかもしれん。でもやっぱり人間綺麗なものとか感動するものの前には言葉を失うんだわ・・・!!それにしても綺麗な街だなあ・・・!!春からここに勝己くんと住むんだ・・・!めちゃくちゃ素敵じゃん・・・!ハッピーライフ・・・ハッピーホーム・・・!!勝己ホーム・・・!!

「っぶしゅ!」
「・・・」
「でへへ、くしゃみでちった。やっぱり少し高いところは寒いね」

はあーー綺麗だーーと見つめていたら鼻がムズっとしてくしゃみが飛び出してしまった!!可憐な女の子みたいに「っくちゅん!」とは出来なかった。ぶしゅって吹き出しちゃったわ。でも大丈夫名前ちゃんはティッシュとハンカチ持ち歩いてるからさ!!エチケットエチケット!ティッシュをショルダーバッグから出して鼻をちーん!ってかんだ後にまたカバンにしまってたら、不意に視界が白くなってなんぞや?!?!とびっくりしたら勝己くんの匂いが鼻いっぱいに広がった。ぐるりと口元まで巻かれたものをよく見るとそれはマフラーで、およ・・・と勝己くんを見上げたらマフラーつけてない。やっぱりこれは勝己くんが巻いていたマフラー!寒がりの勝己くんは秋でも既にマフラー巻いてたからね!!あれ?でもここさっきより寒いのに勝己くんマフラーとって大丈夫なんか??寒くないの??

「マフラーいいの?」
「巻いとけ。馬鹿でも風邪ひくからな」
「いやそうなんだけどね!でも勝己くん寒くな、むがっ」
「冷めてー鼻」

確かに馬鹿でも風邪ひいたもんね、うん。え?わたしが馬鹿ってこと??失礼な!!いいか、馬鹿は風邪ひかないっていうのはだな、風邪ひいてること自体気づいていないという意味でだな!!だから風邪をひく事を気づいているということはわたしは馬鹿じゃないってことでだな!!わかったか!馬鹿でも犬でもなくわたしは立派な狼なのだ!!あれ?なんか論点ズレてる??
マフラーの勝己くんの匂いをスーハー吸いながら勝己くんの寒さを心配してたら鼻を摘まれた!!おい!!匂い吸ってんだよ摘むな!!勝己くんの匂いは吸ってると安心できてハッピーになれる合法麻薬なんだぞ!!ちょっと甘い匂いがめろめろめにさせてくれるんだよ・・・!!

「おいくそ犬」
「ふが」
「くだんねーことばっか考えてんじゃねぇわ」
「ふが・・・?」

勝己くんの指先が鼻から離れてやっと鼻で息を吸える。吸い込んだ空気がマフラーの匂いも持ってきてわたしはハッピーになった。勝己くんのマフラー、プライスレス。
ところでくだらないことってなんだ?急に何??多分勝己くんが思うにわたしの頭の中大体くだらないことばっか考えてると思うけど、どれのこと??多分ホモのことではない。だって急すぎるじゃんね、べつにホモの話今してないし!!いや頭の片隅にはいつもあるんだけどね!美しいホモが!!
と、ホモは置いといて。くだらない事とは一体なんじゃ?今日考えてたことで勝己くんがくだらないと思うこと、思うこと、うーん。

「まだ暮らし始めてもいないのにンな馬鹿げたこと考えてんな」
「・・・あ、喧嘩とか?別れるとか?」
「アホらしくてあくびが出るわ」
「いや、でも」

暮らし始めてもいないのに馬鹿げたこと、と言われてあ、ってなった。さっきまでわたしが言ってたこととか考えてたことか。一緒に暮らしたら性格の不一致とか、生活感とか、なんかもろもろ・・・。もしかしたら喧嘩もめちゃくちゃ増えるかもしれないし、良くないことだって起きるかもしれない。あほらしいとか言われても、今が幸せだとどうしても考えちゃうじゃん。私たち喧嘩したことないとか口が裂けても言えないし、これから喧嘩しないなんてことだってありえない。それで蟠りを残してなんて、想像すればするほど有り得ることじゃん。
そんなことを考えちゃってショルダーバッグのストラップを握る指先に力が入る。マフラーに顔を半分埋めて、下唇をぎゅっと噛んだ。

「でも・・・」

わたしたちは春からヒーローになる。ヒーローは怪我も、下手したら死も隣合わせの仕事で。明日勝己くんが帰ってこないなんて未来だってあるかもしれない。勝己くんは肩とお腹に大きな怪我の痕がある。1年生の時に出来た傷だけど、あの時は勝己くんとタダのクラスメイトだったからそこまでの感情しかなかったけど。もしいま同じように怪我をしたらと思うと背筋が凍るし、どんな些細な怪我だって怖い。でもそんなことは言っていられないのは分かってる。わたしも勝己くんも、ヒーローになるから。でも、

「名前」
「、」
「ブサイク」
「な、」

嫌なことばっかり考えちゃって目頭が熱くなってうるうるし始めると名前を呼ばれて顔を上げた。そうしたらブサイクなんて言われて、は?ブサイク?!ブサイクって言ったのいま!!人があれこれ考えている時にブサイク?!いい度胸だ表へでろ!!!ここ表だ!!

「ぶ、ブサイクって」
「ブサイクにブサイクって言って何がわりーんだ」
「ひ、ひど!」
「馬鹿なこと考えっとすぐブサイクになる」
「え、」

ブサイクブサイク連呼すんなや!!!別の意味で泣きそうなんだけど?!え?わたしって勝己くんの恋人だったよね?!違った?!こんな素敵なとこ連れてきてブサイク?!やめて自信なくすよイケメン勝己くんの横に並べるとはミジンコほども思ってないけど勝己くんがごく稀に言ってくれるかわいいで生きてるみたいなもんだからやめてくれよ・・・。酷い・・・残酷・・・とまたうるっとするとストラップを握っていた右手を解かれて、勝己くんの手に包まれた。その指先がやけに優しくて、

「お前は別れてーのか」
「いや、だから別れたくないよ!でも、」
「よく聞け」
「、」

見上げる先の勝己くんは、寒いのか鼻の頭も耳も赤くなり始めていた。わたしにマフラーなんか貸しちゃうからそうなるんだ。寒がりなのに。
勝己くんの赤い瞳と視線が合う。勝己くんの瞳の中にいるわたしがどんな顔をしているかは、ここからはよく見えない。

「性格の不一致なんざあるのは当たり前だ。別の人間なんだからな。18年別で生きてきてそっからピッタリ合うわけねーだろーが」
「・・・」
「喧嘩だってお互い意見があんだからするに決まってんだろ」
「・・・でもしたらつらいじゃん、一緒に住んでるのに」
「さっさと仲直りしたらいーだろうが」
「・・・仲直りのちゅーで?」
「いくらでもしたるわ」

過去にした大きな喧嘩は1回だけだけど、些細な言い合いならそれなりにあった。本当に些細だから内容は省くけど、その度に仲直りのちゅーをして。わたしたちの仲直りはちゅーって決まってるのだ。番外編仲直りのちゅー回を参照してください。
勝己くんは私の右手を握ったまま、空いている手をポケットに入れた。寒いんかな。

「言ったからには、ちゃんとしてよ・・・」
「出来ねぇことは言わねーからな俺は」
「なんか壮大・・・」
「仲直りの話だけじゃねんだよ」
「、」

「この先何があってもお前とは絶対別れねぇ。どこに欲しくて手に入れたもんを手放す馬鹿がいんだよ、俺はな」
「俺はお前が思ってる以上にお前のこと好きなんだよアホ」


勝己くんの言葉ひとつひとつが、まるで宝石みたいにきらきらと落ちてくる。きらきらと落ちてきて、手のひらで溶けてわたしの中に染み渡って。


「大方怪我したらとか死んだらとかも考えたんだろーがよ、」
「・・・」
「ヒーローしてんだから怪我をしない保証はねぇ。その怪我が擦り傷ひとつでも入んならな。だが死ぬようなヘマは絶対しねぇ」
「・・・ん」
「お前を殺させたりだってしねぇ。俺たちは生きて、必ずお互いのところに帰ってくる。わかったか」
「・・・わかった」

やっぱり勝己くんにはなんだってお見通しなんだ。喧嘩とか別れるとかの話から、怪我したら死んじゃったらとかまで悪循環してたのも。
生きて、お互いのところに帰ってくる。喧嘩でもなんでもしてても、必ず。なんかスケールでっかくなっちゃって少し笑えてきそう。さっきまで喧嘩とかの話だったのに。潤んだ目のまま、口元が少し緩んだけど勝己くんのマフラーが隠してくれてるから大丈夫だ!それにしても勝己くんが久しぶりに好きって言ってくれてめちゃくちゃ嬉しいなあとそっちの意味でにこにこしそうになったら、握られていた手が解かれて勝己くんが両手で触ってきたからなんぞや?と思ったら、右手の薬指になんかあった。え?なんかある。

「・・・え?え?」
「やる」
「え?これ、え??ゆ、指輪?なんで?」
「今日誕生日だろうが」
「誕生日・・・だれの・・・え?今日何日?え・・・わたしの?!」
「散々人のは祝っといて自分の忘れるんか」
「なんか最近忙しくてすっかり・・・そっか、誕生日・・・」

なんかあるというか、指輪があるんですね。え?指輪だ・・・。めちゃくちゃぴったりだし。まじまじと見てたら今日誕生日って言われた。誰の?え?わたし・・・?わたしだ!!今日わたしの誕生日だ?!すっっっかりわすれてた!!!最近忙しくて(学校とかイベントとか)すっかり忘れてた・・・!そっか誕生日・・・。わたしも18になったのか・・・!てかお母さん今日会った時に娘の誕生日祝っても良くない??勝己くんといるとき携帯のトークとかあんまり見ないから鳴ってたけど放置してたんだけど、もしかしなくても誕生日おめでとうメッセージだったりしてるかもしれん。朝は勝己くんと早くに寮でて移動したからみんなと会ってないし。
誕生日・・・。誕生日プレゼントか・・・。とまたまじまじと指輪を見る。可愛いデザインで小さな宝石がちょこんとついていた。かわいい。これを買ってる勝己くんを想像したらグッときたんだが・・・!

「ありがとう・・・」
「こういうもんあった方がお前も安心すんだろ」
「、」
「名前」

呼ばれて顔を上げる。今日はよく名前を呼ばれるなあ。月夜にきらきらと輝く勝己くんの瞳は、指輪についている宝石によく似ていた。


「一生離さねぇから覚悟しとけ」

「・・・それ、プロポーズじゃん」
「プロポーズじゃねぇわ。言ったろ、プロんなったらしこたま泣くようなやつしたるわって」
「だからそれがもう、プロポーズだって、」
「ンなちゃちなプロポーズあってたまるか」
「ここでプロポーズする人達に失礼だよ・・・」

じんわりと視界が揺れて、頬をぽろぽろと何かが流れていく。たしかこの顔も勝己くんはブサイクだと、前に言ったっけ。
勝己くんの両手が頬を包んで、その親指が濡れた軌跡を拭った。近くで見る宝石は、何よりもきらきらと輝いていて。

「ありもしねぇこと考えてブサイクになんな」
「うん、」
「いつだって俺の好きな顔でいろ」
「、好きな顔って」
「言わんでもわかんだろ、ばか名前」

そうやって優しく笑うから、つられるようにわたしも笑った。たぶん、これが勝己くんの好きな顔。


これからきっと色んなことがあって、その度に凹んだり泣いたりするかもしれない。でも必ずおかえりとただいまをして。喧嘩したら仲直りのちゅーをして、抱きしめあって眠るんだ。そうやって、あなたの隣で生きていきたいって、心の底から思うのだ。
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