俺もお前も頭がおかしい | ナノ

やっぱり俺もお前も頭がおかしい

この度めでたく性癖を捻じ曲げていた個性が解けました多分。轟と色々とあった翌日にすぐにグラビアをバッサーと開いて捲りまくったけど普通に見れた。そう今まで通り。前の時はふーんってなってなんにも感じなかったもんな。動画もうんうん!と見ることが出来ていて途中で閉じた後に、やったー!!と自室の椅子から立ち上がって万歳。俺はめでたく、あの忌々しい個性から解放されたのだ・・・!爽快。これで俺のハッピーイチャイチャヒーローの夢も守られた。本当にとんでもない個性だった。
もう轟にときめく(?)こともないだろうし轟の裸を見ても息子が誤作動を起こすことはないだろう。いやはや、轟にはその場に居合わせたと言うだけで多大な迷惑をかけた。いやでも、本人から何でもするって言ったからあながち迷惑でもないのか?うーん。でも轟の初めて奪いまくって本当に良かったんだろうか。襲われて(?)セックスした日も、なんかあっさりだったし。





「ぁっ、ん・・・」
「っ、は」


手を握ったまま膜越しに轟のなかにぶちまけて、そのまま寝そべっている背中に覆いかぶさった。久しぶりのセックスは色々と初めてなことばっかりだったがやっぱり気持ちいい。1人で抜くのもいいけど、肌と肌の触れ合いがいいと再認識した。すぐ真横にある轟の顔は火照ってとろとろとしてて、目が合うとうっすらと微笑むから顔を近づけてその唇に自分のを重ねる。何度も角度を変えて食むと気持ちがいい。こうやってセックスが終わったあとに甘えるようにキスをしてピロートークじゃないけどぐずぐずと過ごすのが好きだった。
小さくリップ音をならして唇を離し、ずるりと引き抜いて背中から隣に横たわる。早くゴム外さないと萎んで隙間から漏れ出るかもしれないけどもう少しこのまま浸っていたい。


「轟」
「ん、」
「眠いなら寝てもいい」
「・・・」


疲れたであろう轟はうとうとと目を細めて今にも夢の世界へ旅立ちそうな顔をしている。明日は学校は休みだし朝もゆっくりできるから急いで帰る必要もないだろう。轟が完全に眠ってしまう前に汚れている所を軽く拭かないと。俺は事後相手の体を綺麗にする男なので。


「帰る」
「え、」


さてタオルで体を拭くかとベッドに肘をついて起き上がろうとした時に、うとうとしていた轟がパッチリ目を開けて帰ると言った。え?帰るの?とぽかんとしていたらサッと起き上がりベッドボードに置いてあったティッシュを数枚取ると軽く尻を拭いて、ベッドの下に散らばった服をちゃっちゃと着込んでこちらを振り返って、


「個性、解けてるといいな」
「あ、うん・・・」
「今日のことは、忘れていいから」


じゃあおやすみ、と言ってドアを開けてでていく轟に、なんとかおやすみ、と返して閉まっていくドアを見つめる。放たれた言葉に言い覚えがあって、つい1週間前の逆だななんて思った。
てっきり、あのまま泊まっていくかと思っていた。俺はそれで別に良かったし、なんかもうセックスまでしちゃったら色々とどうにでもなると言うかどうにでもなれというか。セックスのあとにすっかりいつもみたいな気分になっていちゃいちゃしようと思ってたのは俺だけであって、轟は本当に個性を解くためにセックスだけをしに来たと。準備して体だけ捧げに来たとか何処どこの都合のいい男だ。
首に腕を回してあんなに熱烈に誘ってきたのに、終わってしまえばもういいと。いや、俺が女の子が好きなのは轟もわかってたから、個性が解けたかもしれない時に隣に男が寝てても嫌だろうと思って帰った可能性もある。それとも俺下手で期待はずれだったとか?いや初めてのセックスに期待も何もねーだろ。


「・・・」


つーか、なんでさっきから轟のことばっかり考えて振られたみたいな気持ちになってんだよ意味わかんねぇわ。ゴム外してさっさと寝よう。いいじゃん、男だったけど気持ちいい思いできて個性も解けたかもしれねぇし。若気の至りということで済ませよう。
ちゃちゃっとゴムの処理をしてパンツだけ履いてまたベッドに潜り込む。シーツに顔を埋めると、かすかに轟の匂いがした気がして。バシバシと枕を整えるように叩いて、匂いの無くなった枕に顔を埋めた。明日個性解けてるといいけど。


そして冒頭に戻り解けてましたハッピー!となっているわけだ。正直すぐにでもシコっても良かったけど土曜日の朝からやることじゃねーわ。まあ焦らず3日か4日後にしよー!と自室で高らかに1人宣言して時は流れ火曜日。


「・・・」


息子は、すこぶる元気がなかった。
はあ・・・?なんで・・・?
学校も終わって寮に戻ってきて飯食ってシャワー浴びてさあシコって寝ますか!とパソコンをつけてお気に入りの無修正エロ動画を開く。もう何故勃たないという悲しい気持ちにならずに性処理が出来るのがこんなにも爽快だなんて・・・。とヘッドホンをつけながら息子を取り出しいざ!と動画の再生ボタンを押した。
序盤こそ興奮していい感じだったのだが、何故か息子は中途半端な勃ち方をしてそこからフル勃起にはならず、挙句の果てには萎んだ。意味わからんのだが。はあ??
え?なんで??久しぶりの無修正動画にビックリしすぎたん?やっぱり軽くグラビアでジャブ決めた方が良かった??それとも気持ち的にはそんなにまだ溜まってなくてその気じゃなかったんか息子よ。いや息子も俺も俺なんだけど。
・・・まあ、まだ個性解けたばっかだから焦る必要はない。もしかしたら今日疲れすぎてるのかもしれないし。疲れマラすらも起きないほどね。いやどんだけ疲れてんだよって感じだけど。そしてそんな疲れた覚えもないわ。
とりあえず今日はシコるの諦めてさっさと寝よう。疲れとんないとね。また明日やろうそうしよ。
ぐったりしている息子を下着の中にしまって動画を閉じてからヘッドホンもとり閉じたノートパソコンの上に置く。一抹の不安を抱えながらも、大丈夫だと目を逸らしてベッドの中に入り込んだ。22時に寝るなんていい子すぎるけど明日に備えるのに無駄じゃない。パズルゲームをぽちぽちしながら、訪れる心地よい眠気に身を任せた。そして次の日。


「・・・」


いやなんで??どうしてそんなに中途半端に元気なくて「やれやれ・・・」みたいな感じなん??無修正動画は刺激がとか言うから(?)グラビアにしたじゃん?なのになんでお前はそうなんだ?全く反応しないことは無いけど如何せん中途半端すぎる。え?個性解けてない?半分くらい残ってたりする?ふっざけんなよそんな事あってたまるか。とりあえずめちゃくちゃ溜まっているという訳でもないのでサッと息子をしまいまた昨日のように布団に潜り込む。明日相澤先生に個性解いてもらおうしっかり。1ヶ月ちょいも出張いってたせいで俺はめちゃくちゃしんどかったし轟と新しい扉とか開いちゃったからな。いやお互い忘れるって話だからすぐ閉じたけど。いいやはよ寝て明日を今日にしよう。個性さえちゃんと解いてもらえればあとは何も問題ない。パズルゲームで催促されていたライフを送ってから、頭の上まで布団を被る。あ、電気消さなきゃ。





「はい」
「ありがとうございます」
「まあ今度から気をつけろ」
「いや俺が気をつけてても個性事故の方からやってきそうなんですけど」
「個性社会だからな」


朝イチで職員室に向かって相澤先生のところに行き個性といて貰えませんかと言うと、相澤先生はジャーン!と逆立たせてバサーと髪を下ろした。これゴーグルつけて個性発動してるか見られてるか隠してるらしいけど髪の毛でわかんね??坊主の方が良さそうだけどな・・・。いや、相澤先生の坊主想像したら笑えるからやめよう。怒られたくないし。個性事故に気をつけろと言われても個性事故の方からやってくる感否めないんだけど。「待ったー?」って。待ってねぇから帰れ。お前はお呼びでない。
失礼しましたーと職員室を出てドアを閉めてから踵を返しA組に向かう足は心做しか軽い。俺は今日確実に個性が解けた・・・ッ。これでシコれる!柔らかい女の子とセックスできる・・・!巨乳のえっちな女の子と対面座位ー!!


「名前どこいってたんだ?」
「野暮用で相澤先生んとこ」
「ふーん?あ、今日英語当たるから宿題教えてくんね?頼むー!」
「礼を用意すんのが先じゃね?オラ飛んでみろ」
「何故にカツアゲ風?!昼飯奢るからさ!」
「デラックスパフェも付くなら考えんでもない」
「うう、付けますから・・・」


教室に戻って自分の席によっこらしょーと腰掛けると上鳴が英語のテキスト持ってまだ来てない前の席に座り宿題の教えを乞うた。こいつ自分でやる気あんのか?最初から目当てにされてる気がしてあれ・・・という気持ちがなくもないが、昼飯タダになったしデラックスパフェも頼めるから良しとする。開かれたテキストの問題文を読みながら上鳴に問う形で説明をしていくとうんうん頷いて、時々あ!こういうこと?と正解の文を導くことが出来てるので、やっぱり俺の教え方が良い。
ほかの問題を解いてる間にちらりと左側に視線を移す。自分の席に座っている轟は、1限目の授業の準備をしていた。

轟とはセックスしてから4日経つけど、特に俺らの間に大きな変化はない。本当にいつも通りというか、シャワー室のアレも俺の部屋でしたセックスも何もかもありませんでしたみたいに過ごしている。
元々所属グループ(?)が違うから毎日話す訳でもないし、機会があれば口をきくという感じだ。仲は悪くない。いや悪かったらあんなことないだろうし。
セックスしたりキスしたりしたのって夢だった?ってくらい普通に過ごしてて若干アレ・・・?ってなるけどまあ忘れていいからって言われたくらいだから轟も忘れるようにしたんだろう。ただのクラスメイトがそんなふしだらな関係なんてあれだしな。しかも男同士。クラスの奴らが知ったら泡吹いて倒れそう。俺が女の子を好きなのはみんな知ってるしな。いや大体はそうだろうし。
じーっと見つめすぎていたのか、轟が不意にこちらをみてバッチリ目が合った。目が合ったことに驚いたのか切れ長な目を少しだけ丸くしてから2回瞬きをする。そうして何か用か?みたいな感じで首を傾げて、その2色の髪がさらりと揺れた。
その瞬間、ベッドに散らばった轟の髪が頭に浮かぶ。水分で潤んだ目がとろけて、腰を動かす度に切なく甘い声を上げて。あの唇って思ったより柔らかい、


「おい名前、聞いてっか?」
「あ?ああ、何」
「デラックスパフェはチョコ味で頼む?」
「そうチョコ、てかその話より宿題やれ」


不意に上鳴が声をかけてはっと我に返る。見つめ合う形になっていた轟から視線を逸らし上鳴に向き直ると宿題もなあなあにお昼のパフェついて話し始めた。おいパフェの話はいいから宿題やれ。「美味いだろーな!楽しみ!」と言う上鳴はもしかしなくとも俺のパフェをたべるつもりか?いくらお前の金でもパフェは宿題を教える謝礼にあたるんだから当たり前に食おうとすんな?
・・・つーか、俺はさっき何を考えていたんだか。轟とのセックスを思い出すなんてどうかしてるわ。もう個性解けたんだから女の子との思い出そうよ。そうだもう男で興奮するわけじゃねーし。爆豪のヒロスの谷間見てもふーん、えっちじゃん・・・。にはならんし。
そうと決まれば今日は色んな意味で仲のいい女の子と夜ちょっとだけ遊んじゃお





結論から言おうか。またEDって言われた。以上。
いやナンッッッッッデェ!!!!なんで?!いや勃たなかったからなんだけど。学校終わってからあらかじめ連絡してた子と仲良く待ち合わせしてつかの間の放課後デートしていそいそとホテルにIN、ベッドにもINした。久しぶりの女の子とのセックスに心はハッピーすぎて何回戦でもできる気がしてたのに、いざやるぞってなったらちゃんと勃たなかった。そりゃ前みたいに全く反応しない訳じゃなくて、少しは元気になったんだけど中に入る前に中折れだよ。は??なんで??個性解けたんじゃねぇの?!そして女の子に対してこんな失礼なことある?!でも相手も「やっぱED治ってないんだ」「いや、EDでは、いや、」「まあ無理しなくていいって。早く治るといいね・・・」って哀れみの目を向けてきました。息子もプライドもバキバキに折れてしまい、俺は燃え尽きた。真っ白にな・・・。
とぼとぼと寮に帰ってきて自室に戻り腹の底からため息を吐き出した。とりあえずグラビアと動画でもダメなのか確認しようと、落ち込んだまま1人抜くために準備を進めしている姿は哀愁じみていただろう


最悪だ。もう最悪以外の言葉が見当たらない。最も悪いだよほんとに。マジで。
はあああー。と大きすぎるため息を付いてから胡座をかいた足の間を見つめた。ズボンをくつろげて下着から取り出した息子は、それは可哀想なくらいぐったりしている。マジでやる気ない。こっちはあんのに息子がやる気無さすぎ。
お気に入りのグラビアの雑誌も無修正の中出し動画も用意して片っ端から見たのに、息子はこれっぽっちも反応しなかった。おま、お前・・・。あんなにこの雑誌や動画のお世話になったろ・・・。恩を仇で返すなよ・・・。
ノートパソコンで開いていた動画を再生して凝視する。ぐちゃぐちゃに突いてるとことか抜いた時に精子が流れ出るとことかあんなに興奮して見てたのに、いまは興奮すらしない。ふーん・・・。という気持ち止まり。おい俺はなんとしてでも抜くぞと思ってたのにふーんじゃねーんだよふーんじゃ。
動画を閉じてからまたさらに深いため息をついた。見下げた息子が「元気出せよ」って言ってる気がしたけど元気出すのはお前だから。
あれもこれも、全部あの個性事故が悪い。副作用残してんじゃねーよ死ね
本当に死ね!!個性!!!

どうしてしまったんだ俺の体は。息子は。個性が解けて元の巨乳でえっちな女の子が大好きに戻ったはずなのに。相澤先生に解いてもらったから絶対解けてるのに。まだ本調子じゃないのか?馴染んでない?男のときは急な変化に簡単に馴染んでたくせに元に戻るのはちょっと・・・。とかいうのか?
轟のときは簡単に勃ったくせに。「いい天気だな!」って。外も見えねぇ場所で天気のこと言うな。

轟・・・、マジでなんであんなに尽くしてくれてたんだ・・・。いやなんか塵積もっぽかったけどな。ちょっとの事が積み重なった感じ?俺は全く覚えないけど。でもそれでセックスまですんのは凄いわ。え?あいつ俺のこと好きなの?好きじゃなきゃ俺と、男とセックスなんて出来ねーだろ、しかも自分のケツ差し出してまで・・・。
そう考えてたらまたセックスしてる時の轟が頭の中に浮かんだ。肩まで赤くして、熱い吐息を吐いて、熱っぽく、舌っ足らずで俺を呼んで。
うん、かわいかったな・・・。
いや、かわいいってなんだかわいいって。もう個性は解けてんの、に・・・。

何考えてんだとぶんぶんと頭を振って、ハッとした。
ありえない。ありえないのだ。個性が解けた今、ありえないことが起きている。ゴクリと溢れ出る唾を飲み飲んでギギギとブリキのおもちゃのように視線をゆっくり下に移動させた。

勃ってる・・・。息子が、息子が勃っています・・・。それはもう元気に。さっきの中途半端とか嘘なくらい元気に。
いや、まじであり得ないんだけど・・・。個性解けたのに轟のこと思い出して勃つとかもう、救いようがないじゃん。女の子とセックスできずに、1人で満足にも抜けずにいるのに轟とのセックス思い出すと勃つとかもう終わりだよ。え?ほんとに刷り込み?俺の息子は個性が解けてからも轟にぞっこんなの??え?「俺だけじゃなくてお前だってかわいいとか思ってんだろ?」って?息子の分際でうるせぇ喋んなカス死ね
これってもう轟で抜けってこと?抜ける?轟で抜けるのか?でも轟で抜けたらいよいよ後戻り出来ない気がするけどいいのか?いや、でも抜けるとは限らないし。
とりあえずやってみよう。やらない後悔よりやる後悔だ。 (?)



またまた結論から言うけど、無事に(?)抜けました。
終わった・・・。俺終わったよ。抜いてからの賢者モードの虚しさが半端ない。もう後戻り出来ないというのがひしひしとわかってしまう。
俺は、あの個性事故でめでたく男に興奮するようになってしまったらしい。何がめでてぇんだ死ね。本当に終わった。でも好きな対象は女の子のはずだ。女の子はかわいいって思うしおっぱい最高って思うし守ってやりてぇって思う。
轟はどうだ。・・・まあかわいいと思う。健気なところとか。おっぱいはないから最高とかは思わないけど、正直顔はめちゃくちゃ美人で綺麗で、いいと思う。守ってやりてぇと思うかは寧ろツートップだから守られそうというか、背中合わせで戦えそうな感じ。あいつなら背中任せられるしな。
・・・それで、轟の評価してどうすんの?男が性的対象というか轟が性的対象なのか?爆豪や上鳴は別にどうとも思わないしな。
え?俺は轟が好きなの?好きにされてしまったのか?この数日で?そして体から入るとかクズの極みじゃん。
いや落ち着こう。好きってもっとこう、違うんじゃねぇの。よくわからんけど。本命とか作ったことないし。
ダメだ考えすぎても何も変わらない。というか個性解けたけど副反応的なアレかもしれないしな。とりあえず水でも飲みに行こう。水飲んで落ち着こう。


部屋を出てエレベーターに乗ってから1階を押す。
さて今後はどうして行くかというところ。もしかしたらやっぱり名残的なもので、そのうち普通に元に戻るかもしれない。それは全く問題ない。問題は性癖が捻じ曲がったままの場合。男が性的対象になってて、轟で抜けるのは1回セックスしたから。他の男を知らないから轟が気になるように思ってるだけで、案外そうでも無いかもしれない。ひっじょーに不本意だがホモの動画とかでも見て興奮できるならそれを証明出来る。いやそれで全く興奮せず嫌悪感すら覚えたらどうしようか。やはり、それは轟がということになるのか。
うーーんと痛む頭を抑えながらエレベーターを降りてキッチンに向かうと、丁度冷蔵庫の傍に先程から頭を悩ませている紅白頭と瀬呂がいた。
2人ともなんか飲んだり食べたりすんのかなとボーッと近づいて、気晴らしに会話にでも混ぜてもらうかと声をかけようとした所で、瀬呂の手が徐に轟の頭に伸びたのを目で追って、


「っうお、苗字?」
「・・・」
「・・・は?あ?」
「いや俺がは?なんだけど・・・とりあえず離してくんね?」


気がついたら瀬呂の腕を掴んでいた。瀬呂に声を掛けられてやっと自分が何してるか気づいて、なんとか悪ぃと言いながら手を離した。というか、今何やったんだ俺は。なんで瀬呂の手なんか掴んで。
じろじろ見てふーん?みたいな顔をする瀬呂はウザいし、轟は轟でなんかびっくりした顔して固まってる。居心地が悪い


「俺は轟の髪についてたごみとってあげようとしただけだからさ」
「いや、それを言われてもどうでもいいんだが」
「そう?じゃあそういうことにしとくわ」
「うぜぇ言い方すんなウザいから」
「はいはいごめんね」


じゃあ俺は寝るからーとやっぱり変にニヤつきながら去っていく瀬呂に腹が立ちながらその背中に中指を立てた。そのなんでも分かってますみたいな態度が癪に障るわいつも。俺だってお前の好きな女のタイプくらいは把握してんだわこのむっつりスケベが。
はあ、とため息をついて前に向き直ると相変わらず轟がきょとんとした顔をしてそこにいた。本当に髪にごみついてるし。そのごみを適当に取りながら、自分のさっきの行動の意味を考えてモヤっとした。


「苗字」
「んだよ」
「どうかしたのか、急に掴んだりして」
「・・・どーもしねーわ。どーもしねーけどちょっと話しあんだけど」


ここじゃなんだから、と冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してそのままエレベーターに向かって歩くと、轟も何も言わずについてくる。自分の部屋に連れていくのはなんかアレだったので轟の部屋に向かって、家主と共にその畳の匂いのする部屋に足を踏み入れた。いつ見てもリフォーム具合が凄すぎて本当に同じ寮なのかと疑ってしまう。いや同じ寮なんだけど。
轟がご丁寧に座布団を出してくれたのでそれに胡座をかいて片膝の上に頬杖をついた。


「個性解けた」
「お、そうか。良かったな」
「ああ、相澤先生にも見てもらったから間違いねぇわ」
「何よりだ」
「・・・ありがとな、色々」
「いいんだ、俺がしたくてしたから」


個性解けた云々もしっかり伝えていなかったし礼もしてないと思って伝えると、したくてしたからと微笑む。普段預かり知らぬ所で助けていたらしいが、やはりそこまでするか?という疑問しか浮かばない。可能性のひとつに好意があるかもしれないと思ったが、そういえばそういう素振りは1度も見たことがない。確率は低そうだ


「轟さ」
「ああ」
「俺のこと好きなの?」
「好きだ」
「緑谷は?」
「好きだぞ」
「そーだと思ったわ」
「?」


まどろっこしいことは好まないからストレートに聞いたらあっけらかんと返ってきた。でも俺の思っている好意ではなくて、やはりというか友達的なあれらしい。そりゃずりネタもなしに抜けるんだ、性欲の対象になる相手がいなくてもおかしくない。


「個性解けたけど、問題が残ってんだよ」
「そうなのか?」
「まだ女で抜けねーしセックスも出来ねぇ」
「どういうことだ?個性解けたんだろ」
「知らねーよ。んで、聞いてて気分悪ぃかもしんねーけど、お前とのセックスを思い出すと勃つんだわ、んで抜いた」
「そうか・・・」
「自分でした事は忘れろって言っときながら、お前に忘れろって言われたことは忘れてなくて都合良すぎるな」
「いや・・・、俺も、忘れてないから気にしなくていい」


何が悲しくてお前をずりネタにしましたなんて告白しなきゃならないのかと思うが、これを言わないと話にならないというか俺の今の状況が伝わらないから仕方ない。
俺はガッツリ忘れられなくて都合よすぎると思ったが、轟も忘れてないらしい。てっきり忘れていると思っていた。いや忘れたくても忘れられないかもしれないが、あまりに態度が変わらないから。若干斜め下を見ながら言うのは、少しでも思い出しているのだろうか。あの夜のこと。


「てっきり性的対象が男のままかと思ったけど、別に他のやつと例えばセックスするとか想像してもそれは気持ちわりぃだけだった」
「・・・」
「で、お前は」
「え?」
「お前は、誰とでもああいうこと出来んの」


ホモの動画は見てないけど、想像はできる。俺は爆豪とかとはセックスしたいなんて思わねぇし、想像するだけで気持ち悪い。そして極めつけにさっきの瀬呂との出来事だ。轟が他のやつと違うのは分かりきっていた。
でも轟はわからない。今回たまたま俺だっただけで、こいつは例えば緑谷とかとも出来るかもしれない。緑谷だって轟のことは色々助けたりしている。元来のヒーロー気質で。だから誰とでも出来るなら、この話は終わりだ。


「・・・考えてみたこともねぇけど」
「・・・」
「誰とでもは出来ねぇ。・・・苗字だから、できたと思う」
「どーゆー意味」
「わかんねぇ」
「緑谷とはキスできんの」
「できねぇ」
「俺とは」
「できる」
「そーゆーことだろ」
「?」


首を傾げる轟にやや呆れながら、それはそういうことだろうと思って、がらにもなく少しだけ浮かれた。俺もそういうことかもしれない。


「俺もお前としかできねぇよ」
「そうか」
「お前は俺を好きってことでいいの?恋愛的な意味でな」
「・・・よくわかんねぇ、考えたことねぇし。苗字は俺の事好きなのか?」
「わかんねぇ。わかんねぇけどお前が他のやつとなんかあんのは気に食わねぇかもしれん」
「そうなのか」
「いー感じに絆されて癪だわ」
「?悪ぃ」
「何が悪いかわかってねーなお前。轟は俺が他のやつとなんかあったらどうなん」
「・・・少し、モヤッとする」
「まあ、今はそれでいいわ」


お互い理解してないことばかりで話にならないようでなるような。まあでも始まってしまったのだから仕方ない。始まりこそ身体からという消して褒められたものでは無いけれど、そんな始まり方だっていくらでもある。
まだお互い大手を振って好きと言う程気持ちが育っていなくても、今はそれでもいいのかもしれない。
そのうちやっぱり違ったってなるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。それがわかるまでは、この曖昧な関係をせいぜい楽しむとしようか。まあ欲を言うなら普通に女の子とセックスしたいしいちゃつきたい。


「苗字」
「あ?」
「キスしたい」
「・・・お前でも浮かれたりすんだな」
「そうか?よくわかんねぇけど、お前とのキスは好きだ」
「俺としかしたことないくせに」
「でも他としたいとは思わねぇよ。それで、キスしてくれんのか」
「・・・お前それ絶対他でやんなよ」


でもこれでもいいとか思うくらいには、俺もお前も頭がおかしい

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