俺もお前も頭がおかしい | ナノ

お前は絶対頭がおかしい

やっっっっっっっらかした・・・。
やらかした。本当にやらかしたわ。いくら性欲を持て余して個性のせいで性的対象が男になってたとしてもあれはマジでやらかした。


「苗字」
「うおっ?!あっ、と、轟?!」
「?ああ。苗字は飯か。他の奴らは」
「えっ、と、アホと切島は呼び出し、瀬呂は別行動、爆豪はどっかいった・・・」
「そうか。じゃあ俺と食うか?」
「えっ?!あ、いや、いいけど・・・」


はぁぁぁあ、と心底デカい溜息をつきながら食堂までとぼとぼと歩いていたら真後ろから声をかけられて飛び上がった。他のことぐるぐる考えてるとダメだな、注意が散漫になって多少のことで驚く。すぐに振り返るとつい先程まで頭の中にいた轟が目の前に出てきていた。え?俺の頭の中からでてきた?いや実物か。頭の中の轟はピースピースって現実じゃ絶対しない真顔ピースしてるし。いやするかもしれんけど。
そしてなんかデジャヴを感じる会話を繰り広げてから2人で食堂に向かうことになって、隣を歩く轟をちらりと盗み見た。
こいつよく普通にしてられんな。あんなことあったら色々変わりそうだけど。態度とか。いや、轟が誘った(?)様なところもあったからそうでも無いのか?
先日のことに思いを馳せながらうーんと顎に手を当てる。






「んっ、」


速めた手の中で轟がびくりと震えるのを感じながら後を追うように吐き出す。夢中で合わせていた唇がそっと離れて、肩口に轟の頭がくたりと預けられた。体を襲う事後特有の気怠さが心地よくて、微かに触れる濡れた髪に頬をよせて目を閉じた。首にかかる吐息がくすぐったい。セックスをした後はこうやって女の子と微睡むのが好きで、・・・女の子と、まどろ、


「っおわっ!」
「おっ、」


ハッとして目を見開きぴったりくっついている轟の肩を掴んで急いで体を引き剥がした。「どうした?」みたいな顔して首傾げてるけど、いや、どうしたじゃないよね・・・・・・!?
俺は、一体、何をしていた??落ち着いて思い返そう。轟に誘われて(?)轟を見ながらシコって出して、その後轟がちんこを掴むから、何故か俺の痴態を見て興奮(?)した轟のちんこを掴んで、それで、は?合わせて一緒に持たせて?え?き、キスしてた・・・?!


「わ、」
「?」
「忘れろ・・・!!俺も忘れるから!悪かったマジで!!じゃ!!!」
「、苗字」


捲し立てるように言葉を放つと、俺の声に驚いた轟をそのままにカーテンをジャッ!と開いてその場を逃走した。轟が後ろで呼んでたのも気づいたけどそんなのとってもじゃないけど返事してられない。いやこの状態で話すことなどない・・・!何を話せと?!気持ちよかったねってか?いやこんな特殊すぎる状況でそんな朗らかに感想言えるかアホ!!
脱衣場で持ってきていた下着とジャージをわたわたと身につけながら轟が来る前に早く・・・!という一心で汚れたコスチュームをカバンにぐいぐいと詰め込む。

とんでもない、とんでもないことをした・・・!!いくら轟がいいって言ったって、轟は男で、俺も男で、いくら顔が綺麗だからって、あんな目で俺を見るから。

頭の中でさっきまでの光景がリフレインする。濡れた髪の隙間から見える熱に浮かされた瞳、薄く開いた唇の隙間から舌が見えて、誘われるように口付けた。思ったよりずっと柔らかくて、甘い気がして止められなくて。必死に応えてくれるのがかわいくて、かわ、か

はああああああああ?!?!かわいい?!なに?!マジで!!なんで轟がかわいいんだよ?!おかしい!!!あたまがおかしい!!轟は男!!無駄に美人なだけ!!ちんこがついてんの!!何もかも個性のせい!!個性のせい!!





ダメだ、1週間前のやらかした事件を思い出すとえも言われぬ気持ちになる。やめよう。まだ個性継続中のこの身ではアレを思い出しただけで勃つ可能性がある。ありえないという思いに反してこの体はおかしいのだ。
あんなことがあったから翌日からそれこそ目も合わせられない感じになってるけどたまーに視線を感じてそっちを見ると、見てるんですよ・・・。轟が・・・。
どういう感情で見てんの・・・?マジで。
別にめちゃくちゃ避けてるって訳ではない。話しかけられたら話すし、訓練でもペアになったら普通にしてるつもり。今だって昼飯誘われたから行くしね。変に断る理由もねえし。大丈夫あの話題は出ないからだって忘れてって言ったし。俺も忘れたいけど忘れられないくらいに強烈でどーしようもねぇ。どこかに頭打ちつけて記憶喪失になりたい。



「さすがに毎日は飽きねぇの?」
「飽きねぇな。水だって飽きねぇだろ」
「いや水と蕎麦は土俵が違ぇよどー考えても」
「そうか?」


食堂についてそれぞれ注文して席に着いたけど、やっぱり轟は蕎麦だった。あったかくないやつ。俺は今日は日替わりランチのハムカツの気分だったので日替わりランチを頼んだ。デザートにプリンついてる。
ハムカツにソースをぶちまけてザクザク食べながら目の前で蕎麦啜ってる轟に飽きないのか聞くけど飽きないらしい。でも水と蕎麦はどう考えても土俵が違ぇよ。
というか毎日1食は必ず蕎麦であんな体になるか?やっぱポテンシャル秘めてるからか。
あ、口の端につゆ飛んだ


「つゆついてる」
「・・・、」
「・・・・・・あ?!」


つゆ飛んだままだなって指伸ばして轟の口の端を拭ったら、なんかびっくりした顔された。何?なんか変なことし・・・てるわ!!!してる!!何してんの俺?!
バッと頭の後ろにやる勢いで手を引いたけどやってしまった事は消えなくてですね。いやほんと、女の子にやるならわかるけど相手は轟で男なんですけど・・・。個性怖・・・。これも個性のせいだよな?どう考えても。俺もうおちおち廊下気を抜いて歩けねぇんだけど。廊下どころか世界中そうだわ。いつなんどきやられるかわかったもんじゃねぇ。


「・・・プ、プリンやるよ」
「苗字は食わねぇのか」
「なんか色んな意味で腹いっぱいなんだ・・・」
「そうか、ありがとな」
「ん」


いたたまれなくてトレイの上にあるプリンをそっと轟の方にずらすと食わないのかと聞かれたが、今の俺は色んな意味で腹がいっぱいというか頭がいっぱいというか。この前のシャワー室の詫びも兼ねて。いやこんなんで済ませられるとは思ってねえけど。
プリンを受け取った轟はありがとうと言ってほんのり微笑むからタチが悪い。俺なんかに笑ったりすんな今の俺はおかしいんだから過剰に反応すんだよ。
ちらりと轟を視線だけで見ると蕎麦を食べ終わってプリンに手をつけ始める。掬われたプリンが轟の口に運ばれていって、その薄く思ったより柔らかい唇が開いてプリンがなかに、


「なあ」
「っ、な、なんだよ」
「今日話してぇことある」
「おお・・・なんだ」
「夕飯終わったら部屋に行っていいか」
「えっ、今じゃダメなのか」
「部屋の方がいい」


唇に夢中になってたら急に話しかけられてハッと我にかえった。いや、夢中てなんだよ。不本意ながら見てしまってただけだから。だって俺のプリンあげたわけだし見てたっていいだろ。暴論でもなんでもねぇよこれは。俺があげたプリンが吸い込まれてってるとこを見たんだよ。
話したいことって?ってなったら夕飯のあと部屋に・・・だと・・・?部屋じゃなきゃダメなことってなんだ、あれか、この前のあれか。もしかしてなにか請求されたりする?他言無用にするからそれなりの額を要求してくるか?誘ってきた(?)のはそのためだったりした・・・?いや、落ち着け。轟はそんなこと考えるやつじゃ無いはずだ。あんなに親身に(?)なってくれてたじゃねぇか。大丈夫だ。もしかしたらそういう話題じゃなくて真剣に悩みかもしれないし。


「・・・わかった」
「じゃあ帰りは一緒帰ろう」
「?おお」


一緒に帰る必要ある・・・?とは少し思ったけどまあいいか。今この体はおかしいことに轟で興奮するので、部屋に行って何も無いことだけを祈る。何かしらあって勃っても見ないふりしてくれよ頼むから。







「で、どうした」
「ああ、苗字個性かかってもう1ヶ月経つが解けたか」
「いや、残念ながら・・・」
「そうか」


溜まる性欲()を発散させるために訓練で「アーッハッハッハッハ!!」とペアの爆豪と無双してアホ共を地面に沈めてきたわけですが。最近苗字テンションおかしくね?ってアホに言われても地面とキスさせて黙らせた。そりゃ自慰もセックスも出来ないうえに性癖捻じ曲げられてんだテンションもおかしくなるわ。鬱憤はここで晴らすしかねーんだよ。まあ1回轟と抜き合いっこしちゃったけども。今見ても字面可笑しいわ、轟と抜き合いっこ。なんで・・・いや、事情を知ってんのは轟だけだからかもしれんが。誰にも言えねーわ今男に興奮するかもしれませんなんてな。爆豪の谷間()を見てふーん・・・エッチじゃん。とか思っちゃったからやっぱり男が・・・う、頭が・・・ッ

授業終わって帰るぞーってなった時に轟が「帰ろう」ってすぐそばに来たからおーって連れ立ったらアホがえっ?って顔して俺らを交互に見た。


「え?名前轟と帰んの?」
「なんか悪ぃかよ」
「いや、珍しーって」
「寮までだから誰と帰ったってかわらんだろ」
「そりゃ、そうだけどよ」


別に俺が誰と帰ったってよくね?いつも上鳴と帰ってるけど約束してるわけじゃねーし。ガキじゃねーんだから一人で帰るか切島と帰れ。行くぞって轟に声掛けたら少しだけ上鳴を見つめてから着いてきた。上鳴のことアホだなって見てた?俺もそう思うわ、そこが一緒にいて楽しいんだけど。

そうして2人で他愛のない話をしながら寮に帰って解散して頭は優等生の俺は部屋で出された宿題を片付け、夕飯に出てきて風呂に入り部屋に轟が訪ねてきたという訳です。
そうなんだよ、もう個性かかってから1ヶ月たったがまだ解けてない。宿題終わったあとにお世話になってる動画見てみたけどなんとも思わなかったからな。そこで解けてて勃ったら諸手を挙げて抜いたわけだけども。これは最低1ヶ月コースではないらしい。でも1ヶ月と1日とかあるかもしれないからか悲観しないで生きていきたい。


「苗字は今までどのくらいのペースで抜いてたんだ」
「俺?まあ3、4日に1回から1週間に1回かな・・・って何聞いてんだよ」
「聞かねぇとわかんねぇだろ」
「いやそうだけど聞く必要なくね?」
「ある」
「ない」


普通に聞かれたから普通に答えちゃったけど聞かれた内容がおかしいことに言ってから気づいたわ。なに?俺の自慰とセックス事情聞く必要ある??ないよな?と思ったらあるらしい。いやねぇだろ。顎に手を当てて考えるポーズしてるけどお前俺の下事情聞いて考えることねぇよな。普通の男子高校生と轟の抜く回数の比較?お前少なそうだもんな。


「え、あ、轟?」
「もう前抜いてから1週間経つ」
「あれは忘れろって言ったよな?!」
「忘れられるわけねぇだろ、あんなことして」
「悪かった悪かった悪かったから落ち着け?いやでもお前が何でもするって言ったからお前も悪いよな?」


轟が考えてる間に携帯にメッセージが来たから見ると色んな意味で仲良くしてる女の子から「ED治った?」と来ていた。いやデリカシー。俺がガチのEDだったらストレートに聞くのは心にくるものがあるからやめた方がいい。体調悪いとだけ返していると急に目の前が暗くなって何?と思って顔を上げたら轟の顔がドアップで、更に肩を押されて抵抗する間もない俺はころーんと床に転がされた。そして顔の横に轟の腕が来て目の前にやっぱり轟。え?もしかしなくても押し倒されてる?


「そうだ俺が苗字のためになにかしたかった」
「そんなに何かしてくれるほど俺はお前になんかしてた?!」
「してる」
「そうか・・・、いや、顔が近ぇ!落ち着けマジでホントに力強!!」
「だからまだお前のために何かしたい」


この前のことは忘れろって言ったのに忘れてないんだが!!いやそんなの当たり前だけどな、俺だって忘れられそうにないわあんな人生で初めてやっちまったこと。そして俺はそんなに轟のために何かやってたのか今まで。まっったく心当たり無さすぎて何も言えねぇ。でもだからといってあんな俺のちんこ握るか?握らない、いや、握るのか・・・?よく分からなくなって考えてたらぐぐぐと轟の顔がさらに近づいてきたので必死に肩を押すけどこいつパワーSだったわ。俺の方が身長も高いし体だってがっしりしてんのにそんな俺を押さえつける程のパワー、プライスレス。
いやプライスレスとか言ってる場合じゃない。もうあと少しでも力を抜いたらこれキスしちゃうきっと口くっつくわ。なんでこうなってるんだ?そして轟はなんでそんなにまだ俺のために何かしたいわけ?本当に意味がわからん頭おかしいわこいつ


「苗字」
「轟おちつけおちつけ気持ちだけ貰う気持ちだけ貰うから」
「俺じゃダメか」
「いや轟がダメってわけじゃないけど」

・・・・・・いやダメだろ!!男だこいつは!!俺の好きな女の子じゃねーんだ!

「俺したことねぇから、上手くできるかわかんねぇけど」
「なんの話、」
「頑張る、だから」
「いやだからなんの話、」

「しよう、セックス」


その単語に時間が止まった俺は呆気なく轟に唇を奪われたのだった。
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