俺もお前も頭がおかしい | ナノ

俺もお前も頭はおかしくない

最悪だ。もう最悪以外の言葉が見当たらない。最も悪いだよほんとに。マジで。
はあああー。と大きすぎるため息を付いてから胡座をかいた足の間を見つめた。ズボンをくつろげて下着から取り出した息子は、それは可哀想なくらいぐったりしている。マジでやる気ない。こっちはあんのに息子がやる気無さすぎ。
お気に入りのグラビアの雑誌も無修正の中出し動画も用意して片っ端から見たのに、息子はこれっぽっちも反応しなかった。おま、お前・・・。あんなにこの雑誌や動画のお世話になったろ・・・。恩を仇で返すなよ・・・。
ノートパソコンで開いていた動画を再生して凝視する。ぐちゃぐちゃに突いてるとことか抜いた時に精子が流れ出るとことかあんなに興奮して見てたのに、いまは興奮すらしない。ふーん・・・。という気持ち止まり。おい俺は今からこれを見て抜くぞと思ってたのにふーんじゃねーんだよふーんじゃ。
動画を閉じてからまたさらに深いため息をついた。見下げた息子が「元気出せよ」って言ってる気がしたけど元気出すのはお前だから。
あれもこれも、全部あの個性事故が悪い。副作用残してんじゃねーよ死ね







「苗字」
「あ?轟じゃん。何飯?」
「ああ。苗字は上鳴たちと一緒じゃねぇのか」
「アホと切島は呼び出し、瀬呂は別行動、爆豪はどっかいった」
「そうか。じゃあ俺と食うか?」
「なんでじゃあ?まあ別にいいけど」


今日はカレーの気分だなと1人食堂に向かっていたら後ろから声をかけられて、振り向くと轟が立っていた。飯?って聞いたけどこの時間にこっち向かってって飯以外ねぇだろ普通。俺は何を聞いてんだ。連日夜更かししてゲームしてた弊害が出てる。そろそろ寝た方がいいな。いつも爆豪たちとつるんでるからそいつらがいないのに気づいた轟は辺りを見渡してからこっちを見上げた。189あると大体が見上げてくるから不思議ではない。無駄に身長ばかり伸びてしまったけど横には伸びてないからいいか。
あいつらがいない経緯を説明すると昼食のお誘いがきたので、別に断る理由もないから二つ返事で了承する。


「轟は何食べんの?」
「温かくないそば」
「そば美味いよな」
「ああ。毎日食える」
「いやそこまでではないわ俺は」


たしかにそばは美味いけど毎日は食えねぇわ。せめて水曜日は種類変えて。それなら頑張れる気がする。
他愛もない話をしながら横を歩く紅白頭を少し見下ろした2色の髪が旋毛で交差してる。へーこんな感じなんだー2色だと。そろそろ金髪も飽きたし俺も2色にしてみようかななんて考えてたら視線に気づいたのか轟がこちらを見上げた。


「どうした」
「いや?イケメンだなと思って」
「そうか。俺はよくわかんねぇが、お前はイケメンだと思うぞ」
「イケメンに言われると嫌味に聞こえんな」
「そんなつもりねぇけど」


まあ轟は嫌味なんて言えるような人間じゃないからわかってはいるけど。神はどうしてこんなイケメンを生み出したんだ?配合間違ってんだろ。こんなに面が良いと女に困らないだろうな。スカした顔でガンガン腰振ってたりすんのかな。あー急にセックスしたくなってきた今日誰かあいてっかなー。巨乳のエッチな子


「轟お前ってさ」
「?な、」
「ッぶね、」
「あっ、すみませっ!」
「気をつけ、・・・あれ、」
「?っ苗字?!」


お前ってどんな子がタイプ?なんの体位が好き?俺は巨乳でエッチな女の子と対面座位かな、なんて昼間っからするような話じゃない事で口を開こうとした瞬間、こちらを見た轟の方にすごい勢いで走ってくる女子生徒が視界に写った。というか、あの女子生徒全く前見てないからこのままだとぶつかるなと咄嗟に轟の腕を引く。轟が腕の中に倒れ込んだことで間一髪正面衝突は避けられ、轟の肩と女子生徒が軽く接触したくらいで女子生徒は一瞬足を止めた。
前を向かないと危ないからと口を開こうとその女子生徒に顔を向けた時、眼鏡の奥にあった光る瞳を見た瞬間目の前が歪んで、俺の意識はぷっつり途絶えた。





「お、起きたか」
「・・・?」
「お前急に倒れたんだ。どこか痛むか」
「いや、そういえばそうだった・・・なんで倒れたんだ?寝不足気味かな」
「個性らしい」
「個性?」


不意に意識が浮上して緩慢に目を開けると、白い天井と覗き込む轟の顔。起きがけに見るイケメンは目に悪いな・・・。つーかここどこだ。ムクリと起き上がってから、なんで寝てんだとアホ丸出しの顔してたのか、轟は倒れたと教えてくれた。そういえば倒れたかもしれん。轟を引っ張って女の子の目を見た瞬間、なんか気持ち悪くなって、いや女の子を見て気持ち悪いとか最悪だろ君は綺麗だよと全く思い出せない女の子に適当なことを思って、倒れた原因はゲームのし過ぎの寝不足かなと言ったら個性らしい。個性?


「ああ、なんかその時に思っている事の認識をすり替える個性らしい。」
「認識?」


轟がいうには、認識をすり替える個性が発動したらしい。目を見ると発動するが、調子が悪くてコントロールが効かないから早く保健室にって走ってた時にぶつかりそうになって、見ないようにしてたのに俺とバッチリ目が合いかけるつもり無かったのに俺にかかったということだった。認識すり替え時に意識を失うという副反応がある。それ確実に俺かかってるわ。でもなんの認識すり替えたんだ


「何か変わったことあるか」
「いやわからん」
「とりあえずこうしてる分には問題なさそうだな。午後の授業出れそうか」
「大丈夫じゃねーかな・・・え?昼飯食いっぱぐれた?」


腹減ってたのに最悪だわ・・・と額に手を当ててガックリしていたら轟が手元をごそごそしたのでそれをなんだと見る。手首にかけられていたビニール袋から4つほどパンが出てきてベッドの上に並べられた。ちゃんと個包装してあるからね。


「え?」
「食堂は無理だと思って、寝てる間に購買行ってきた。食えるもんあるか」
「いや全部食えるけど・・・轟お前・・・良い奴だな・・・」
「腹減ってると集中出来ねぇしな。苗字には助けて貰ってるし」
「轟の恩返しかよ・・・。有難くいただくわ。お前は食ったん?」
「まだ」
「じゃあ一緒に食べようぜ」
「ああ」


轟良い奴すぎんじゃん。ガンギマってたあの頃のトゲトゲな焦凍クンはどこいったんだい?助けるってただ腕引いただけなのにな。まあ厚意には甘えよう。並べられたパンの中にカレーパンを発見してなおのこと轟の株が上がった。ところで、このそばを挟んだようなパンはどこで売ってんだ?美味いのか?





保健室の隅でパンを食べさせてもらって無事に満たされた腹で午後の授業も乗り越えた。上鳴たちと戯れながら結局なんの意識がすり変わったのか検討もつかんなと共有スペースのソファーに座りボケっと考える。まあそんな大したもんでも無かったんだろ。んで個性なんだからそのうち解けるだろうし。


「オイオイオイオイ!苗字!!最っ高なやつ手に入ったんだよォオ!!」
「あ?なんだ峰田はよ見せろや」
「見せるかわりに女の子の連絡先よこせ・・・。お前何人か仲良くしてる子いんだろォ・・・!」
「教えたところでてめぇは相手にされねーだろ」
「オイラの魅力に気づくかもしんねーだろ?!アッ」
「どれどれ?」


上鳴で携帯の充電してたら峰田が興奮しながら雑誌を持って行って走ってきて鼻息を荒くするので、こいつ共有スペースにエロ本持ってきやがったなと1発でわかった。いやグラビアか。品定めしてやらんことも無いと奪い取ろうとすると俺がご贔屓にしている女の子たちの連絡先をよこせと言う。いやお前は相手にされねーだろド変態を隠さねーんだから。ギャーッと喚く峰田を尻目に雑誌を奪い取ってペラペラと捲る。ふーん


「はい」
「え?」
「大したことねーな」
「は?!お前、お前おかしくなったのか?!」
「は?」
「この子苗字のイチオシだろ!!この子も!!こっちだってお前の好きな巨乳だぞ!!」
「・・・・・・・・・は?」


つまんねーのと雑誌を返すと、峰田は幽霊でも見たような顔をするから失礼だなこいつとこめかみが動くと、バサバサとページを捲って何人かを指す。は?イチオシ?と指された子をまじまじとみると、たしかにこの子好きだった気がする。胸も大きいし尻も・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「うおっ?!苗字・・・?」
「・・・」
「おい苗字?!」


顔面から血の気が引くとはこういうことを言うのか。人生で初めて知ったわ。いや知ってたかもあのクソほど腹壊した時顔から血の気引くよね。じゃなくて。ソファーからバッと立ち上がり早足でエレベーターに向かう。後ろで呼んでる峰田の声なんてもう聞こえなかった。
嫌な予感をひしひしと感じながら自室に向かい、お世話になっている雑誌を取り出してひたすら捲る。そしてまた血の気が引いて、パソコンに入ってる隠しフォルダの動画も再生してシークバーを何回も動かす。
そうして再生が終わってから硬直し、固まった体で何とかパソコンと雑誌を仕舞う。
深呼吸だ。深呼吸しろ名前。
すー、はー、と深呼吸してから、またバッと部屋を飛び出した。


「轟・・・!!轟いるか!!」
「お?おお、苗字どうした・・・。顔色が悪いぞ」
「個性いつ解ける?!」
「は?」
「今日かかった個性だよ!!あの認識がうんたらのやつ!!いつとけんだ?!」
「お、落ち着け。何がすり変わったのかわかったのか?」


5階の轟の部屋を高速ノックして出てきた轟の肩を鷲掴む。そうだわかったからこうして解除方法や解ける時間を聞きに来たんだ。どうどうと落ち着くように言われ、とりあえず中にと部屋に案内されてから置いてあった座布団に腰を下ろした。こんな落ち着いてる場合じゃないんだが。
同じように腰を下ろした轟を見る。こいつよく見ると可愛い顔してんな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「この世の終わりだ」
「そんなに大変なことなのか・・・。あの時何考えてたのか、差し支えなかったら教えてくれ」
「・・・巨乳でエッチな女の子と対面座位のセックスがしたいって思ってた」
「・・・・・・」
「もう1回言うか?」
「いや大丈夫だ」

そりゃ急にそんな事言われたら固まるわな。俺も固まると思う。

「なんでわかったんだ?すり変わってるって」
「さっき峰田が持ってきたグラビアに何も感じなかった。それで部屋に戻ってお世話になってる動画とか見てもダメだった」
「お世話?」
「・・・え?お前にもあんだろ?」
「なんの世話だ」
「マジかよ」


お世話動画ないとかこいつどうしてんの?ぽかんとお世話?とか抜かすんだが。は?こいつ1人で抜く時どうしてんだよ妄想力で補ってんのか?こいつの頭ん中もしかしてとんでもねぇの?見かけによらずエロいんだな・・・。


「お前妄想でいけるタイプか」
「妄想?」
「いや、1人で抜く時」
「・・・ああ、いや、何も考えてねぇよ」
「は?」
「生理現象だろ。適当に扱いて出してる」
「・・・・・・・・・・・・・・・」


轟の言葉にボーゼンとした。こいつ、え?性欲とかねーの・・・?こんなにイケメンでスカした顔してんのに童貞?まさかこいつの下位互換みたいな俺が遊びまくれんのにこいつは遊んでねーの?健全な男子高校生じゃねぇのか?!
わなわなしながら見つめていると?と頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げる轟が、あ、やっぱりかわいいな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「やっぱりこの世の終わりだ」
「そんなにか?すり変わったってことは、逆になったって考えりゃいいか?」
「わからん・・・逆にすると、貧乳の控えめな男の子と・・・寝バック?のセックスが・・・したい?したくない?」
「いや俺はわかんねぇけど」
「この世の終わりでしかねぇな・・・で、解除方法は?!聞いてんだろ?!」
「お、落ち着け、聞いてる」
「はよ言え!」


何?貧乳で控えめな男の子と寝バックって。死ねって言ってんの?死ぬね。
だっっっっれが男となんて出来るか死ね!!!でも今の俺の性癖はそうなってんの?!怖!!認識すり替えの個性怖!!!だから轟のことかわいいとか思ってんの?!俺頭おかしいわ!!!
轟の肩を掴んでガクガクと揺らしながら解除方法を教えろと血眼になって聞くとブレる頭で落ち着けという。お前なら落ち着けんのか?俺はちっとも落ち着けねぇわ。死活問題だろ。つーかこいつ肩意外とガッシリしてんのな。悪くねぇじゃん
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「はよ・・・言え・・・」
「その認識通りに動くか、時間が経てば自然と解けるらしい」
「だっれが認識通りにするかアホ!待つわ!!どのくらいだ?!」
「1ヶ月から1年らしい」
「よし殺しに行こう」
「女子に手をあげんのは良くねぇよ。」
「マジレスかよ」


轟から提示された個性解除方法は認識通りに動くか時間経過を待つしかないと。いや認識通りって、俺は男とセックスしなきゃいけないってことだろ?ありえねーから。死ぬからそんなの。男は守備範囲外だから。つーかこの学校にホモとかいんのかよ。いやホモがいても無理だから。んで1ヶ月って何?1年て??アホか死ね!!
なんでこんな時に相澤先生は長期の出張行ってんの?!ご都合主義すぎんだろ!!教鞭を取れや!!!


「まあ解けんのを待てばいいだろ」
「おま・・・簡単に言うけどな・・・」
「?そんな困ることじゃねぇよな」
「俺は困んだわ」


ガックリと肩を落とした俺を見てなんでそんなに困ってんだ?って顔するけど俺は健全な男子高校生だから困んだよ。女のエロい格好に反応しないってことは男に反応する可能性あるってことか?死にたいわ。
どうすんのこっから。1ヶ月以上セックスできないってこと?抜く時は何をオカズにしたらいいんだ?むしろ性欲ごと全くなくなるようすり変わってくれればよかった。
神はどうして俺にこんな仕打ちを・・・。
ここにいてもどうにもならないので大人しく部屋に帰ることにして緩慢に立ち上がる。それを見た轟が一緒に立ち上がって部屋のドアまで着いてきた。お見送りかよかわいいとこあんな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「困ったことがあったら言ってくれ、出来ることはするから」
「いや何もねぇと思うわ。気持ちだけ貰っとく」
「・・・まあそのうち何とかなんだろ。あんまり気を落とすなよ」
「ほんと何とかなって欲しいわ。突然来て悪かったな」


じゃ、と部屋の外に出て振り返り手を上げると轟も同じように手をあげた。
これからどうなるかわからんけど、どうにかなんだろ。
とりあえずホモにはならん


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