要するにそういうこと
※席順捏造※
「な、なあ苗字」
「あ、上鳴くんおはよう」
「おはよ!あのさ、昨日でた英語の宿題でわかんねぇとこあったんだけど、」
「英語?わたしのであってるかわかんないけど・・・」
昨日どれだけ頭を悩ませても出来なかった宿題を、朝登校してから左隣の席の苗字に聞くと快く宿題のページを開いてくれた。
苗字は大人しめの女の子で、芦戸とかとは正反対な性格をしてる。教室の中でも静かに過ごして、ちゃんと出来てるのにいつも自信なさげ。もっと自信持てばいいのにな。成績もクラス上位なのにあってるかわかんないって、あってるに決まってるだろ!
「なるほどな・・・!ありがとな苗字!これで当てられても大丈夫だ!」
「そ、そうかな?間違ってたらごめんね・・・」
「間違ってるわけねーって!あ、これお礼の飴!あと今日の実践訓練組まね?俺と苗字なら個性の相性いいし上手くいくだろ!」
「あ、えっと、」
苗字に教えてもらった宿題を確認してから、食べようと思って朝ポケットにいれた飴を苗字に手渡した。ついでに午後の実践訓練もペアを組まないか提案してみる。苗字と俺の個性は相性いいからきっと楽にできると思うんだよな。俺は女の子と組めるし、苗字は楽できてwin-winだろ!とずいずい前に出て返事を待つと苗字は頬を染めながらもごもご口を動かしてる。照れ屋さんなんだよな・・・!そんなところもかわい、
「おい」
「アッば、ばくご」
「こいつのこと甘やかすなっつったよなァ・・・?」
「い、いや!宿題教えてもらったお礼に飴あげただけだぜ?!」
「訓練も誘ってたよなァ?」
「ち、ちがうの爆豪くん、上鳴くんはわたしのために、」
「お前も楽しようとすんじゃねぇ!」
「ひぇっ、ご、ごめんなさい」
「俺と組め、扱き倒したる」
このまま一緒に組めそうだな・・・!と思ってたら苗字にヌッと影がさして聞き覚えしかないひっくーい声が振ってきた。顔をあげないでも分かってしまうこの重圧。冷や汗を流しながらギギギと顔を上げるとそこには案の定爆豪が仁王立ちしていた。
あまやかすだなんてそんな、お礼をあげただけじゃん・・・!!って思ったけど確かに訓練も誘っちゃったし下心も少しあったのは否めないので大声で否定できなかったら苗字の方からもごもごと爆豪に言ってくれてて、苗字・・・!!お前俺を庇って・・・!!と感涙してたら苗字が怒られてた。そして爆豪‘sブートキャンプに強制入隊か・・・。
「なんか悪ぃな苗字・・・」
「う、ううんいいの・・・きっとわたしが弱いから爆豪くんの気に触るんだと思うの・・・だから強くならなきゃだから・・・」
「いや、それはちげーと思うんだけど・・・」
「?」
爆豪隊長がズカズカと大股で教室から出ていったのでこっそりと苗字隊員に話しかけるとぺしょぺしょとしながら口を開くけど、その内容は多分かなり間違ってる。
爆豪はああやって周りに苗字を甘やかすなだのなんだの言うけど、その実一番甘やかしているのは爆豪だったりした。苗字本人は持ち前のネガティブ思考で気づいてないけど、苗字以外のみんなはとっくの昔に気づいてしまっていた。でもそれを爆豪に言うと死しか待ってないので内に秘めているというわけだ。
甘やかすと一言で言っても、その内容は多岐にわたる。
この前は耳郎が、
「うちさ、さすがにあれはどうかと思って」
「なに?」
「この前共有スペースで缶ジュースを先生から貰ったことあったじゃん。」
「おら差し入れだ」
「やったー!!!せんせーやるぅー!!」
「うち何にしようかな」
「名前ちゃんは何味がいいかしら」
「わ、わたし?えっと、えっと・・・、あ、あれ」
名前がジュース選んで、それを持ってソファーに座っていざ開けるってなった時に爆豪が来て、名前の手の中から缶を奪い取っちゃったわけ。
「ば、ばくごうくん・・・?」
「・・・」
「こ、これがよかった?ごめんね・・・」
名前はおろおろして爆豪に謝ってたけど、当の爆豪はスタスタキッチンに行っちゃって、名前は怒らせたってシュン・・・としてたんだけど。みんな爆豪が怒ってるわけないって知ってるからそんな事ないよって背中撫でて励ましてたらすぐにキッチンから爆豪が戻ってきてね
「おら」
「えっ、あ」
「缶のフチで口切ったら危ねーだろうが」
「あ、ありがとう・・・」
「え?」
「いや、ジュース開けるどころかコップに移して持ってきた」
「え?缶で口切るか??」
「切らないと思うけど・・・」
「そうだよな・・・」
え?甘やかすというか・・・え?親・・・?小さい子供の親・・・??さすがにえっ?ってならざるを得なかったね。周りもえっ・・・ってなってたらしいけど爆豪はフンってして部屋に戻ってったらしいし、苗字は「爆豪くんやさしいね」ってちょっと喜んでたんだと。いや・・・いや本人たちがそれでいいならいいのか??
という出来事があった。他にも共有スペースで苗字と何人かで宿題してたら爆豪がスタスタやって来て
「おい」
「は、はい!」
「ンなのもわかんねーのか」
「あっ、ごめ、ここがちょっと、」
「ここは公式、ここはただの計算ミス」
「えっ、あ、や、やってみる!」
苗字の隣にドカッて腰を下ろしたと思ったら宿題見てサッとアドバイスするし。え?俺達にはしないじゃんそんなの・・・。というか轟とか緑谷がたまにこうやって苗字にアドバイスすると甘やかすなってめちゃくちゃ怒るじゃん・・・。
贔屓だ・・・という目線を送ってたら殺意の籠った目線が帰ってきたので一瞬で寿命縮まった。
苗字が一生懸命問題解いてる間にまた立ち上がってどっか行くから、あれ?今日はもう終わりか・・・?と思ったらなんか持って帰ってきた。
「あっ、爆豪くん」
「あ?」
「みて、できたよ・・・!ありがとう!」
「おー」
「わっ、」
また苗字の隣に腰を下ろして、苗字が嬉しそうにノートを見せると頭をわしわし撫で始めちゃったりして。俺が解けた!って言った時は当たり前だカスって殺されそうになったのに?!差別・・・!!いや褒めて欲しいわけじゃねーけど。
「おら」
「え?」
「あまったからやる」
「え、いいの?わたしなんかに、」
「お前が食わねーなら捨てる」
「そ、それは勿体ないからだめだよ!じゃあ、貰っちゃうね」
何持って帰ってきたと思ったら、お皿に乗った手作りクッキーだった。あっ、さっき爆豪たしかにキッチンにいてなんかやってたしいい匂いしてた・・・これか・・・!!しかもあまったとか言うけどどう見てもあれ焼いたまんまの量だし!
「ちょ、ちょうど昨日ね、テレビでクッキーの特集やってたから食べたかったの」
「そりゃよかったなァ」
「ん、お、おいしい・・・!爆豪くんありがとう」
「ふん」
絶対クッキー特集やってる時の苗字を見てたじゃん・・・!!たしかに昨日梅雨ちゃんたちと食べたいねって言ってたの俺も聞いたわ・・・!!だからって手作りする?!翌日に?!甘やかしてると言うな尽くしてるというか・・・!!
「あ、上鳴くんたちも食べる?」
「えっ、いいの、じゃ・・・・・・・・・・・・いやおなかいっぱいだから大丈夫!!」
「そ、そう?」
「おう!苗字が食べろよな!」
沢山クッキーあるからか苗字が勧めてくれたけどその真横で鬼の形相してるマジモンの鬼がいるので遠慮させていただきますね・・・。
「よっ」
「お、上鳴、おつかれー」
「どうよ、爆豪’s ブートキャンプは」
「完璧なフォローだよ」
自分の番が終わってモニタースペースに戻ってきたら、ちょうど今やってる試合を見ている耳郎がいたから声をかけた。そうなんだよ、いま入れ違いでブートキャンプチームが入ってったんだよ。モニターを見上げると2人が映ってたけど、それはもう完璧なフォローでした。
アドバイスも去ることながら苗字がケガしないように立ち回ってるしかと言って苗字の出番を奪うことも無く最大限の力が発揮できるようにフォローしてる・・・。いやこれは俺と組むより確実に苗字は成長しますわ。
「転びそうになってお姫様抱っこする?普通」
「まず俺と組んだとして基本近くにいねーから・・・」
「ほんとそれ、いたとしてもしないよね。」
画面の中で苗字が勢い余って転びそうになった瞬間、すかさず爆豪が駆け寄ってきてサッとお姫様抱っこした。でも抱っこしてすぐ苗字のこと怒ってるからあらかたあぶねーだろ!ちゃんとみろ!的なこと言ってんだろうな・・・。
あれで周りに甘やかすなっていうの無理あるってか、
「周りに甘やかすなって言うくせにああだよな」
「え?爆豪は自分だけあーしたいんでしょ。名前のこと好きなんだし」
「えっ」
「え?」
Request by S様
S様、リクエストありがとうございました!
お待たせしてしまいすみません!
周りに甘やかすなって言いながらめちゃくちゃ甘やかしてるかっちゃんでした・・・!怒ったりするけとそれは愛ゆえですね!
この小説を少しでも楽しんで頂けたら幸いです!
リクエストありがとうございました!