からかい上手の苗字くん
※男主×焦凍くん※
※緑谷くん視点※席順捏造※
午前中の授業の終了を告げるチャイムがなって、それと同時に授業が切り上げられれば誰しもが待つ昼食の時間だった。教室のあちこちで様々な声が上がり、足音や椅子を引く音も響き渡る。
僕も例外に漏れず板書をまとめたノートや教科書を整えながら一息つくと、視界の端に上に伸びる腕が見えてそっちを見た。
僕の斜め前の席で、座ったまま伸びをしてついでに大きめのあくび。今の授業眠くなったもんなあなんて思って見続けたら不意にこっちを向いて目が合って。
細められた目、笑みを携えた口元がゆっくり動いて、
「えっち」
「は、え?!!?な、何を言ってんの苗字くん!?」
「緑谷があくびしてるとこ見つめてくるからさあー」
「ちちちがたまたま目に入って!!違うんだよ!!」
「ふーん?」
「か、からかわないでよぉ・・・!!」
僕の慌てように斜め前の席に座る人、苗字名前くんはケラケラと笑って椅子の背もたれに寄りかかる。全く、心臓に悪い人だ。火照った頬を覚ますようにオールマイトの下敷きで顔を扇いだ。
苗字名前くんは僕と同じA組の仲間。成績は優秀で個性もすごく強い。体育祭だって優勝候補だったのに、なんか理由があって途中棄権して3位。勿体ないなあと思いつつ、来年は優勝争いに参戦するだろうと呼び声も高い、だからか僕のクラスではスリートップなんて呼ばれてる。てか3人もトップならそれはトップでは無いのでは・・・?と思うのは横に置いておこう。
「な、なあ苗字!今日放課後ヒマ?」
「何上鳴、デートのお誘い?」
「デッ・・・!?い、いや、その、まあ苗字が、いいなら」
苗字くんの右隣の席の上鳴くんが教科書たちを机の上に放り出したまま、苗字くんの方に身を乗り出して話しかけた。上鳴くん的には多分放課後遊べたら遊ぼって意味合いで聞いたんだろうけど、苗字くんの返しに肩をビクッとしたあとに少しだけ頬を染めてきょろきょろと視線をさ迷わせながらぼそぼそと喋る。あの上鳴くんでさえこうだもんな・・・。
苗字くんはかっこいい。それはもうめちゃくちゃかっこいい。イケメンで美丈夫。身長も190くらいあるから、僕は頭一個分くらい違う。見た目からしてモテるのはもちろんのこと、苗字くんは中身もイケメンだった。基本的に紳士でレディーファースト。レディーどころかジェントルもファーストしてる。男子高校生らしくゲームしたりみんな盛り上がるところはもちろん一緒に盛り上がるし、どっちかって言うとかっちゃん派閥で馬鹿やってる。でも困るのが、さっきみたいにからかってくるところ。僕も上鳴くんもあんな風にガチイケメンに言われたらそりゃ固まってしまうし照れてしまう。女子にはあんな露骨にからかわないけど普通に接するだけでかっこよすぎるから一言会話して彼に落ちてく人は後を絶たない。まあこれ踏まえると当たり前というかなんというか彼には非公認のファンクラブがあって、その会員数は常にうなぎ登りしていた。
まあこんな感じで女子からのアプローチは後を絶たないし、というか男子からのアプローチも後を絶たない。彼の前に性別は不問だった。まあ僕もあんなイケメンに迫られたらいいえなんて言えな、いやいや何を考えているんだ僕は。こんなことを考えてたら苗字くんの恋人に何されるか溜まったもんじゃない。
「良くない。」
「とっ、」
「あ、焦凍。おかえり」
「名前は俺と遊ぶから暇じゃない」
「そっ、そうだよなー!ちょっと聞いてみただけだからんな睨むなって!」
噂をしたら先生に用事を頼まれていた轟くんが帰ってきて苗字くんの横に立って上鳴くんを睨んだ。これはさっきの会話聞いてたな・・・。そう、苗字くんの恋人は轟くんで、列記とした男子高校生。さっきも言った通り、苗字くんの前に性別は不問というのはこういうことだった。苗字くんと轟くんは僕で言うところのかっちゃんみたいな存在。いわゆる幼馴染というやつだ。このイケメンたちが幼馴染ってやばくない??そして恋人って所がさらにやばい。なんか1部の女子からは恍惚とした視線を送られてることがあるらしい。
「名前は浮気か」
「浮気?ありえないなー。俺が焦凍のことすげぇ好きなの知ってっしょ?」
「っ・・・」
「真っ赤。ボヤ起こさないでよ」
「お、俺も・・・、俺も、すげぇすき」
他所でやってくれないかな・・・。ここ教室のど真ん中なんだけど・・・。このバカップル、みんなに公認だからって堂々とイチャつくのやめて欲しい・・・。
この2人高校に入った時は既にもう恋人だったらしいけど、最初はその関係を隠してた。幼馴染だからってやけに轟くんベッタリくっついてるな・・・。と思ってたくらい。でも苗字くんに告白する人が減らないから、急に轟くんが二人の関係を暴露して今に至る。何となくみんな幼馴染以上っぽいな・・・とは思ってたからそんなに驚かなかった。ただ言うことがあるとすれば、あんなパーフェクトな恋人羨ましいなってところ。誰だって1度は隣に並んだり、今みたいにすげぇすきとか言われるの想像するよね。これはマイノリティじゃないです。
「名前飯いこう」
「おー、今日は何食べっかなぁ」
「そばだろ」
「それは焦凍の昼飯じゃん」
轟くんに促されて立ち上がった苗字くんの横に轟くんがピッタリくっつく。歩きづらいだろうに、それでも苗字くんは何にも言わないで轟くんを連れ添って廊下に足を進めた。轟くんがくっつく理由は大体8割が苗字くんを大好きだろうからだけど、残りの2割くらいは牽制だと思う。ある程度の人なら2人が付き合ってることは知ってるけど、知っててお近付きになろうとしてくる人も多いからだ。
「轟こえぇ」
「まあまあ」
「つーか俺女の子好きなの知ってんじゃん?」
「いやその女の子を好きな上鳴くんが苗字くんにドキッとしちゃう所が轟くん的には1番NGなんだと思う」
「うっ、言わんことはわからんでもねー・・・」
上鳴くんがよろよろと僕の席にきて突っ伏す。逆に上鳴くんみたいな人が轟くんにとってはいちばん厄介なんだと思うんだよね。女の人が好きなのにそれを覆さんばかりの魅力を当てて(本人はふざけてるだけ)落としちゃうみたいな。轟くんも苗字くんの悪ふざけをいつも真に受けて大変そう。悪ふざけがなかったら轟くんの周りももう少し穏やかなのかもしれない・・・。
「あっ、これはこれはA組のプリンス様じゃないか!!」
上鳴くんとはは・・・と苦笑してたところに廊下からやけに通る声が聞こえた。言わずもがな・・・という感じだけど身を乗り出して廊下を覗くとそこには物間くんたちB組の人達が苗字くんに絡んでら。いや絡んでんのは物間くんだけなんだけど。ちょっと野次馬精神がざわ・・・としたので上鳴くんを連れ立ってドアの近くまで移動する。廊下は苗字くんが出てきたからか苗字くんを見つめる人でちょっとだけ生徒が足を止めてた。苗字くんならモーセ出来そう。
「物間じゃん」
「プリンス様は子分でも連れて今から食事かい?ああ、金魚のフンかな」
物間くんえげつないな・・・。大方轟くんが羨ましくてあんなこといってんだろうけど恋人sageされて怒らない人いないでしょ。轟くんもムッとしてるし。というか轟くんが金魚のフンなら僕達はなに??フン以下だよどう考えても・・・。苗字くんは物間くんの言葉にその切れ長な目をぱちくりさせてから、隣に立ってる轟くんの腰を引いてその紅白の頭に顔を寄せた。
「そ、今から俺のプリンセスちゃんと昼飯」
うわ・・・。攻撃力・・・。周りの女子は黄色い悲鳴あげてぶっ倒れる人多数。多分あれはかっこよすぎるのにやられた人と苗字くんと轟くんのイチャつきに倒れた人のどっちもだろうな・・・。これはまたファンクラブ会員増えるな・・・。
物間くんは口を開けて真っ赤にして固まってるし、轟くんも真っ赤になってお漏ら火してる。危な。
轟くん的にプリンセスって呼ばれるのはいいんだ??まあ彼の前では誰もがプリンセスか・・・。
「なっなっ、」
「物間も素直じゃないね」
「は?!」
「俺と昼食べたいならそう言えばいいじゃん。」
「な、なな、何を・・・!!!」
「物間が可愛くオネダリしたら考えないことも」
「名前」
「・・・まあまあ冗談だよ怒らないで焦凍クン」
また苗字くんの悪ふざけが始まって物間くんワナワナしてる。でもあながち間違いでもなさそうに思えるな・・・。物間くんもしょっちゅう苗字くんに絡んでるから。轟くんにめちゃくちゃ威嚇されてもめげないところ尊敬するよ。当の轟くんは、轟くんの定義の中では浮気をしようとする苗字くんを赤い顔でキッと睨んだ。轟くんを赤面させられる人なんて後にも先にも苗字くんしかいないんだろうな・・・。
「わ、わけのわからないことを言わないで貰えるかな?!」
「えー?つれないね。しょっちゅう絡んでくるくらい俺の事好きなくせに」
「!!!」
「さ、焦凍行こ。そばあーんしてあげる」
「え、あ、いやそれは」
「嫌なの?」
「・・・嫌じゃ、ねぇけど・・・」
苗字くんのは発言に物間くん絶句して今度こそリンゴみたいに赤くなって完全硬直した。あれは図星だな・・・。可哀想に・・・。そんな物間くんを尻目に苗字くんは轟くんの腰を抱いたまま歩き出した。てか話の内容。そばはあーんしづらくない?あ、そこじゃない、そうですか・・・。轟くんも顔赤くしながらもごもご喋ってるけど何年連れ添ってもやっぱり慣れないんだね苗字くんのノリには。
怒ったり赤くなったり轟くんも大変だなあ。まあ、ちょーーっとだけ羨ましいとは思わなくも無いかもしれないけど。
Request by なつ様
なつ様、リクエストありがとうございました!
お待たせしてしまいすみません!
以前男主か女主か確認させてもらおうと思ったのですが、お返事を頂けなかったのでリクエスト内容から男主にしてしまいました・・・!書いていて楽しかったので反省はしていないです。この焦凍くんはちょっと大変そうですね。でも2人っきりの時はめちゃくちゃ甘やかされてます。
この小説を少しでも楽しんで頂けたら幸いです!
リクエストありがとうございました!