轟に蹴られて死ぬ

「世の中不公平だと思わねぇか」
「急に何・・・ああ、あれね・・・」

目の前にいる峰田が静かにキレながらぼそぼそ喋るので何かと思って峰田の視線の先を見たらあーなるほどなるほど本当ですっていう感想しか出てこない。

「名前一緒に昼飯食おう」
「焦凍。今日先生に頼まれ事してるから遅くなっちゃうと思うんだ。だから先に」
「待ってる。なんなら手伝う」
「ええ、でも悪いよ。さきにみんなと食べてて」
「やだ。悪くねぇよ。俺が一緒に食べたいから言ってんだ」
「そう?じゃあお願いしようかな」
「うん」


いや何あれ・・・。何あれって轟と苗字なんですけどもね。轟とかなんかキャラ違うじゃん。ああじゃなかったよな??少なくとも体育祭前まではあんな感じでは・・・・・・あったか?なんかもう思い出せねーや。
轟が甘えた声で、いや男の甘えた声なんてききたくもないんだけどね。話しかけてるのはクラスメイトの苗字名前だ。なんでも2人は幼なじみらしい。どっかのクッソ拗れてる幼なじみとは訳が違うな、うん。家が近かったこともあってか小さい頃から一緒にいて今まで仲がいいんだと。つーか仲がいいと言うか、いや仲良いんだけど、轟がどう考えてもベッタリっていうか・・・誰でもわかるけどあれ轟は幼なじみとか超えて苗字のこと大好きだろ。男女の幼なじみっていう控えめに言っても最高な設定なのに、両方とも美男美女とか何??エロゲもアニメも真っ青だわ。ほんと、世の中不公平すぎる。


「オイラも苗字と飯食べたり一緒に登下校したりしたい」
「そんなことしてみろ、明日の朝日は拝めねぇぞ」
「でも少し話すくらいいいだろ?!」
「その下心が轟にバレないと思ってんの・・・?」


うわあああ!!と机に突っ伏す峰田に苗字だけはやめとけと言うしかアドバイスできない。入学当初は、はあああー??可愛すぎる子いるじゃん!!飯!!連絡先交換!!彼氏いる?!って頭の中でフルスイングしてルンルンで話しかけた時の事を思い出して寒気がした。

「なっ!俺上鳴電気!名前なんてーの?」
「わたし苗字名前。これからよろしくね」
「ピッタリな名前だな!是非よろしくして欲しい!!良かったら今度飯に、あと連絡先も、」
「おい」
「ヒッ」
「あ、焦凍」

ぐわあああ声も可愛いし名前も可愛い!!非の打ち所がない!!!これは神様が俺にくれた宝物!!!一生大事にしま、と思った時に後ろからとんでもねぇ殺気と寒気が襲ってきて一瞬で俺は動けなくなった。ついでに声も出ない。は??学校の中に敵・・・?!と冷や汗ダラダラで振り向いたらビル丸ごと1棟凍らせた激強クラスメイトの轟が居た。え?俺も凍らされる・・・?目付きがヤバい・・・死ぬの・・・?

「飯と、連絡先が何だって?」
「な、なんでもありません・・・」
「あれ、そうなの?」
「はい・・・なんでもないです・・・」
「そうか、それならいい。名前帰ろう」
「え、あ、うん!待って焦凍!あ、上鳴くんこれからよろしくね」
「よろしく・・・」

安全な学校の中にいるのに何故かとてつもない身の危険を感じて当たり障りのないことを喋ることしか出来なくなった。二人で帰っていく姿を見送ってからあんなに可愛けりゃそりゃ彼氏もいるか・・・てかあんなに強くてかっこいい彼氏いたら他の男なんてミジンコ以下じゃんしかも彼氏多分束縛激しい系男子だ・・・。と思ってたら付き合ってなかった。幼なじみらしい。
え?幼なじみであの距離感なの??って頭がバグった記憶も懐かしい。

轟は最初こそ誰も寄せつけねぇぜって感じで苗字としか話してなかったのに、体育祭以降は雰囲気も軟化して話しやすくなったなーと思ったら苗字に対してもスパダリ彼氏ムーヴから甘えん坊赤ちゃんムーヴに変更してた。いや変更しすぎじゃね???苗字もよく対応出来んね???って思ってそれとなく聞いたら、「焦凍はもともとあんな感じだよ?」ってさも当たり前のように言われて、さいですか・・・。としか返せなかった。


「つーか苗字は彼氏欲しいとか思わねーのかな?!引く手数多だろ?!」
「告白しよう輩は告白の前に超えなきゃ行けない壁がデカすぎて誰もいけねーんだろ」
「いやそこは隙を見てさ!!オイラ小さいけどそこを活かしてだな」
「隙間の話?!・・・いや、苗字の男の基準絶対轟になってるからあれ以上じゃねーと振り向きもしねぇんじゃねぇの」


壁と言うか番犬というかなんというか。二人で教室を出ていく後ろ姿を見ていると廊下にでてすぐに轟が苗字の手を掴んで絡めて繋いでた。だから恋人じゃないんだよな???おかしいだろどう考えても・・・!!なんで苗字もなんも言わねーの?!
苗字は天然?なのかなんなのか判断付きにくいけどこと轟に関しては判定がガバガバすぎる。多分轟は小さい頃から好きで距離を詰めすぎていたみたいであれが普通だと思ってる節がある。いやふつーじゃねー!!緑谷とバクゴー見てみ?!手ぇ繋いで歩いてる?!歩いてねぇよな?!

「おいアホ面きめぇこと考えてんの丸わかりなんだよ」
「アッばくご・・・」







「とりあえず!オイラは苗字と今日一緒に帰るぞ・・・!!」
「とりあえずが急すぎて何かわかんなかったわ。昼間の話の続きか・・・。ってお前マジで言ってんの??自殺したかったのか・・・?」
「誰が志願者だよォ!!オイラは純粋に苗字と一緒に帰って距離を縮めてあわよくばあのふわふわおっぱいに抱かれてぇんだ!!」
「純粋・・・?」
「今日は轟が放課後用事が出来たのは把握済み・・・!!今日がチャンス!!上鳴は指くわえて見てろォ!オイラと苗字がキャッキャウフフする未来をなぁ!!」

そう意気込んで丁寧にヘアスタイル()を整えた峰田は鞄に荷物をしまっている苗字の所へかけていった。マジで行ったよ。でも轟が居ないならワンチャンあるのか・・・いやないか・・・。てか峰田がワンチャンあるならおれはツーチャンくらいあるのでは??え?峰田に失礼??なんのことだか

「苗字!」
「峰田くん、どうしたの?」
「今日、オイラと一緒に帰ろーぜ?」
「え?峰田くんと?」

峰田が苗字を下校に誘った瞬間教室がザワっとしてみんなゴクリと息を飲んだ。勇者・・・!!という眼差しと愚者・・・!という眼差しが入り交じってる。やっぱりみんな自殺志願者だと思ってる節あるじゃん。
苗字はきょとんとして峰田を見たあとうーん、と考えるポーズをした。は?あのポーズ素でやってんの??可愛すぎてハゲそうなんだけど・・・。

「うーん、でも今日は焦凍と近所の犬撫でに行く約束してるからなあ」

犬撫でる約束?!何それ?!轟そんな約束すんの?!マジでイメージ無さすぎて想像が止まらないんですけど?!

「犬なら何時でも撫でられるだろ?!オイラとはなかなか一緒に帰れねーぜ?!苗字の為に面白い話も用意してきた!暇にはさせねぇよ!」
「そうなの?」

凄いアプローチ・・・!!下心に気づかない苗字は普通に聞き返してるけどこっちからしたら下心しかなくて必死だな・・・としか思えねーよ。女子も気づいてるよ。気づいてないの苗字くらい・・・

「でも焦凍にいわないと」
「あっ、オイラから言っておくから、な!!さっ帰ろうぜ!!」

轟が来る前に方をつけなければならないから凄いグイグイ行ってる!!でも苗字にはあれくらい強引にいかないと話が進まねぇかもしれねぇしな・・・!!轟なんて待たれた日には死しかない。轟が来る前に退散しなきゃなんねぇしな・・・!

「おい」

苗字の背中を押して廊下に出ようとしている峰田をみんながおおお・・・!!峰田の粘り勝ちか・・・?!とドキドキしながら見ていたら急に絶対零度の声が地から這うように聞こえてきて峰田どころかみんな固まった。固まってないのは苗字くらいだ。

「あ、焦凍!もう終わったの?」
「ああ、待たせて悪かったな・・・。それで、峰田とどこか行くのか?」
「焦凍が遅くなるから帰ろうって」
「ふーん・・・?」

寒い・・・!!寒すぎる・・・!!何今のふーん?って!!!峰田も歯がガチガチしてるじゃん!!!お前轟と鉢合わせた時の作戦考えてなかったのか?!無謀にもほどがあるだろ!!苗字の背中に触れてる手もすげぇ高速で震えてる。そりゃ俺たちが寒いと思ってんのに視線を一身に食らってる峰田が無事なわけねーわ。

「でも早かったね」
「名前と犬撫でる約束してたからな」
「焦凍そんなに犬触りたかった?」
「うん」

絶対犬はオマケだ・・・!!!轟は犬撫でる苗字が見たいだけだきっと・・・!!つかつかと2人に歩み寄った轟は間近で峰田を文字通り見下ろした。ま、魔王・・・!!!!顔が控えめに言って魔王!!

「・・・お前も犬触りに来るか?」
「アッ・・・いや、お、オイラ用事思い出しちゃったなー・・・!」
「そうなの?忘れたらダメだよ峰田くん」
「そうだな!オイラとしたことがー!じゃ苗字また今度な・・・!」
「うん、バイバイ」
「峰田」
「アッハイ」

汗がシャワー浴びたみたいにジャワって染み出してきた峰田はすごい早口でその場を去ろうとしたけど轟に話しかけられて足が動かなくなってた。氷結は目に見えないレベルまで鍛え上げられたの・・・??

「次はない」
「ヒッ」
「名前待たせて悪かったな、帰ろう」
「うん、みんなバイバイ!」

言い方も見た目も敵なんだよな・・・。峰田が漏らしたかもしれねぇ疑惑の中苗字ににこやかに振り返った轟に苗字もにっこりしてこっちにバイバイしてくれた。うわ控えめに言って天使・・・アッいやなんとも思ってないですなんとも思ってないので轟は射殺さんばかりにこっちみないで!!!


Request by orange様
orange様、リクエストありがとうございました!
お待たせしてしまいすみません!
ベッタリな轟くんはセコムなのでこれを乗り越える人間は現れない・・・。ヒロインちゃんも轟くんが居て当たり前になってるのでいつか轟くんの気持ち届くといいね・・・!と思っています。

この小説を少しでも楽しんで頂けたら幸いです!
リクエストありがとうございました!

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